「HMT」というブランド、元々はイギリス占領時代に設立されたインドの機械製造会社なのですが、この腕時計の出自が日本人にとってはとても興味深いんです。なんとこの手巻き腕時計のムーブメント、シチズンからの技術供与によって生まれたという異色の経歴を持っているのです。
比較するためにシチズンの手巻き腕時計の名機「ホーマー」(写真右)と並べて撮影してみましたが、裏蓋を開けると中身がとてもよく似ています。
ちなみに右側の「ホーマー」は、そのシンプルな構造ゆえに丈夫で高い信頼性を誇り、国鉄に制式採用されていた“国鉄ホーマー”と呼ばれるモデルです。
そんな名ムーブメントとほぼ同型を積んでいる、コチラの「HMT」腕時計。「ヤフオク!」内でも毎日のように数十件は出品されており、知る人ぞ知るチプメカといったところでしょうか。落札額の履歴を見ると、5000円以上で落札されているモノもチラホラありますが、あまり競合相手がいそうにないモノを上手く狙えば1000~2000円での落札も可能でしょう。
外見は、ステンレスケースの他に金メッキもあり、文字盤と針については、かなり多くの種類が存在します。ブラックやホワイトはもちろんのこと、イエローやブルー、レッドなどバラエティ豊か。
私が落札したコチラの個体は、グレーがかったパープルの文字盤と、薄い金属板のアプライド(プリントではなく別パーツを取り付けたモノ)でバー(棒状)インデックスが特徴のモデルです。1~12のアラビア数字が入ったインデックスよりも、バータイプの、地味というかシンプルなデザインが個人的には好みなのです。
基本仕様は3針ノンデイト(日付カレンダー無し)で、プラ風防。このプラ風防がまたイイんですよ。モコっとした厚みのあるシルエットで、レトロな雰囲気を醸し出しています。柔らかく傷が付きやすいのですが、その分、小キズが付いてもメンテナンスが容易で、研磨剤を使えばよほどの深いキズでない限りすぐにピカピカになります。
実際、コチラの個体は全体的にコンディションは良好でしたが、一カ所、8時付近のプラ風防に少し小キズ跡がありました。
歯磨き粉などでも代用可能ですが、私はこんな時、プラ風防研磨の友「サンエーパール」(28g/800円ほどでホームセンターなどで購入可能)を使用します。
サンエーパールを適当に塗って、柔らかい布でフキフキ…
すると、ご覧の通り、すっかりキレイになりました。
最近の腕時計はミネラルガラスやサファイアクリスタルを使用しているモノが多く、プラ風防はなかなか見かけなくなってきているんですが、こうやって自分の手で磨いて手間をかけるというのは風情がありますよね。やはりコレはコレでイイものです。
腕に巻いてみるとこんな感じ。シンプル&オーソドックスな見た目の腕時計なので、ジャケットなどを着る際には、とても似合うのではないでしょうか。
コチラの「HMT」腕時計、今のところ「ヤフオク!」での落札履歴や在庫数を見るかぎり豊富に出回っているので、買おうと思えばすんなりと手に入るのも魅力のひとつです。
カラフルな文字盤のモデルも結構あるので、オフの時の“はずしの1本”として使うのもイイかもしれません。まあこの価格ですので1本買うと、そのうちもう1本欲しくなるんですけどね。実は私、これが4本目です(笑)。
「シンプル」「安い」「手巻き」「レトロ」この辺りのキーワードがビビッとアンテナに引っかかった方にはオススメしたい「HMT」腕時計。興味の湧いた方はぜひともご検討ください。
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(文・写真/伏せ字)
腕時計好きの趣味が高じて、記事を執筆することに。一介の時計好きサラリーマン。好きな時計の傾向は、ダイバーズ、青焼き針、56系LM。
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