■軽自動車から高級スポーツクーペまで多種多様の日本車勢
スズキ「スイフト」シリーズ
スズキ「スイフト」でまず評価したい点。それは、バリエーションの豊富さだ。
例えばエンジンだけでも、自然吸気のベーシック仕様あり、マイルドハイブリッドあり、ストロングハイブリッドあり、ダウンサイジングターボあり、そして「スイフトスポーツ」用の高出力ターボありと、5種類が設定されている。そしてトランスミッションも、5速MT、6速MT、CVT、そして、シングルクラッチタイプの自動変速モード付き5速MTと実に多彩。つまり「スイフトが欲しい!」と思ったら、価値観の異なるひとりひとりにマッチする選択肢があるのである。
新型スイフトは、スズキ自慢の軽量化技術を導入し、走りにも一段と磨きを掛けてきた。走りにとって軽さは大きなメリットで、走る、曲がる、止まる、燃費もいい、といった具合に、全方位的に効いてくる。
そんなスズキの軽量化技術は、相当に攻めた内容だ。軽量化は、例えば鉄をアルミにしたり、アルミをマグネシウムにしたり、マグネシウムをカーボンにしたりといった具合に、コストを掛けて材料置換を行えば、比較的容易に行える。しかし、軽自動車やコンパクトカーを主力とするスズキでは、そうはいかない。鉄を主体に使いつつも設計を工夫することで、低コストかつ軽く仕上げる道を選ばざるを得なかった。しかもスズキの開発陣は、軽量化は使う材料を削減できる分、結果的にはコストダウンにもつながる、と考えている。まさにスズキらしいユニークな発想だ。
多くの日本人にとって、スズキは軽自動車メーカーという位置づけだが、グローバル、特にヨーロッパ市場で見ると、スズキは立派なコンパクトカーメーカーだ。そのため同社は、欧州市場でもしっかり台数を売るために、適当なモノをつくるわけにはいかなかったという歴史的背景がある。ヨーロッパの人々の厳しい目が認めたスイフトは、実際に乗ってみても、しっかりつくられたクルマであることを実感させてくれる。
トヨタ「カムリ」
新型「カムリ」最大の魅力は、日本車には久しくなかった“真っ当なセダン”であること。
これまで日本車のセダンといえば、なかなかパッとする選択肢がなかった。一方、インポートカーに目を向けると、メルセデス・ベンツは「Sクラス」、「Eクラス」、「Cクラス」、BMWは「7シリーズ」、「5シリーズ」、「3シリーズ」、そして、アウディは「A8」、「A6」、「A4」といった具合に、主要ブランドの主力車種は相変わらずセダンだ。なぜ彼らは、これほどまでに“セダン推し”なのか?
その答えは「セダンはクルマの本質だから」という回答に行き着く。セダンは、エンジンを収める箱、人を乗せる箱、荷物を入れる箱という、役割分担された3つのボックスで構成される。それぞれの箱が完全にセパレートされているからこそ、ボディ剛性を高めやすい、後輪からのロードノイズが乗員の耳に届きにくい、荷室に積んだ荷物の臭いが車内へ届きにくい、といった具合に、人を乗せる箱を快適に仕上げることができる。また、セダンはミニバンやSUVよりも重心が低い上、横風にあおられにくいことから、走行安定性が高いというメリットも。つまり、クルマを良くしようと考えていくと、最も理に適ったカタチはセダンなのだ。
そんなセダンをリ・ポジションし、本来の素晴らしい価値をユーザーに提供したい、との思いから誕生したのが、新型カムリ。実際にドライブしてみると、流行りのSUVなどでは得られない安定感や静かさから「やっぱりセダンはいいな」と実感する。
“ビューティフルモンスター”のキャッチフレーズを掲げて個性的なデザインを採用し、これまでセダンに見向きもしなかった多くの人にセダンのメリットを訴えたのも好印象。まさに“セダンの復権”を期待させる1台だ。
>>トヨタ「カムリ」(1/PR)
>>トヨタ「カムリ」(2)
レクサス「LC」
レクサス「LC」の魅力は、なんといっても、ラグジュアリー2ドアスポーツクーペというマーケットにおいて、他の何にも似ていない、オリジナリティあふれるルックスを提案してきたところ。
同カテゴリーのクルマは、メルセデス・ベンツの「CL」や「SL」、BMWの「6シリーズ」など、比較的コンサバティブなデザインが多い。それに対しLCは、リアフェンダーが大きく張り出した、ある意味スーパーカーのようなルックスを提案。しかもそれを「LS」というフラッグシップサルーンのデビューに先駆けて登場させた辺りに、「レクサスをエモーショナルなブランドへと飛躍させたい」という、トヨタの強いメッセージが伝わってくる。
これまでレクサスといえば、静かで燃費がよく、高品質というイメージが強かった。でも、よくよく考えると、それらはトヨタ車と同じベクトルに過ぎず、実際の商品も“トヨタの高級版”でしかなかった。そこで、レクサス担当の上層部と技術陣は、新しい魅力を訴求しなければ、と危機感を抱いたのだろう。多大なコストを投入し、イチからプラットフォームを開発。そして、新しいハイブリッドシステムをつくり、最高のモノをつくるという道を選んだ。その結果、誕生したレクサスの新しいイメージリーダーLCは、今後、同ブランドが急速にエモーショナルなイメージを強めていくことを予感させるものとなった。
走りにおいても、これまでのレクサスのレベルからは確実に一歩踏み出したことを実感させる。V8エンジン、V6ハイブリッドともにパワーは十分で、しかも、それをきちんと受け止めるシャーシをつくり込んできた。中でも、フロントサスペンション上方の取り付け部に、見るからに強固なアルミダイキャストを使うなど、剛性に対する強いこだわりが伝わってくる。また、燃費だけでなく、パフォーマンスも追求した“マルチステージハイブリッド”も、新しいハイブリッドの可能性を感じさせた。
ホンダ「N-BOX/N-BOXカスタム」
ホンダ「N-BOX」は、今や軽自動車のトップセラーであるばかりか、全カテゴリーを通じて“日本で一番売れているクルマ”となった。
とはいえ先代は、実力の高さで売れたのかといわれたら、決してそうではなかったように思う。実際に乗ってみると、ライバルと比べて乗り心地が悪く、走行中の騒音も大きかった。ただ、ホンダのブランドイメージや広さ感といった武器は強力で、好調なセールスを記録して日本一にまで上り詰めたのだ。
でも、ホンダは、それで良しとはしなかった。もっといいクルマにしなければいけないと考え、新型ではプラットフォームとエンジンを一新。ベストセラーカーである強みを活かし、コストをふんだんに掛けたモデルチェンジを行った。
結果、先代モデルのネガはほぼ払拭された。ターボ仕様も自然吸気モデルも、すごく静かで乗り心地が良く、クルマとしての上質感が確実にアップ。なおかつ、車内の広さというN-BOXならではの魅力は、一切スポイルすることなく継承している。
先代モデルのオーナーが試乗したら、すぐに「これはいいな!」と感じる出来栄え。実は、これはとても重要なことで、装備が良くなった、とか、カタチがちょっと変わった、というレベルのモデルチェンジだと、ユーザーはなかなか買い替えようというモチベーションが湧かない。その点、新型N-BOXは、見た目こそあまり変化はないが、乗ってみると、まるで違うクルマになっていることを実感できる。
とにかく、車内が広い軽自動車が欲しい、という人にとっては、相当魅力的に感じられる1台。下手なリッターカーを買うくらいなら、新型N-BOXの方がはるかに幸せになれるはずだ。
マツダ「CX-5」
マツダの新しい「CX-5」は「もしも自分が国産SUVに乗るならコレを選ぶだろうな」と思わせる、高い魅力と完成度を備えている。
モデルチェンジ自体はキープコンセプトだし「初代に比べて何が変わったの?」といわれたら、そんなには変わっていない。けれど、微妙な違い、確実な進化が、結果的には大きな違いにつながっている。例えばデザイン。先代モデルもさほど悪くなかったが、新型は素直に「カッコいい」と思わせる。フロントマスクやテールランプといったディテールの造形で勝負するのではなく、ボディパネルの面の構成を練り込み、インテリアの洗練度も高めてきた。結果、安っぽい印象がなくなり、センスの良さを感じさせる出来栄えとなった。
ドライブしてみても魅力は色あせない。先代はロードノイズが耳障りに感じられることが多かったし、路面の舗装状況によっては乗り心地が悪いと感じられるケースもあった。その点、新型はそういったネガを丁寧につぶし、逆にいい部分は引き上げてきた。しっかりとしたドライビングポジションをとれる上、“G-ベクタリング コントロール”の効果もあるのだろう、アクセルを踏んだ時、ブレーキを踏んだ時、ハンドルを切った時のクルマの動きがシームレスで繋がりがいいので、ロングドライブでも疲れない。細かい改良を積み重ねてトータル性能がアップした結果、プロやクルマ通でも魅力を感じられる存在となった。
これだけの完成度であれば、輸入車を検討中の人もきっと「いいね!」と思うはず。特に、マツダが現在、リニューアルを進めている新しいオシャレなディーラーで買うとしたら、オーナーとして十分な満足度を得られるはずだ。