炎と戦うファイアーファイターらしい製品紹介ですね。8800mAhの大容量リチウムイオン充電池を搭載し、軽量でハイルーメン。最大照度は1200ルーメン、二段階調光が可能。ヘッドのチルトが可能なので、置いての使用も可能。しかも米国規格になりますが防爆認証も取得しております。化学プラントやガソリンタンクなど引火性物質がある空間で使用可能です。この内容から察するに製品名のVULVANからしてもファイアーバルカンLEDの後継モデルかと思われましたが、どうやらそうでは無さそうです。
この前後にチルトするヘッドの動きはライトボックスシリーズのE-SPOTと近いものがあります。VULCAN180はE-SPOTの後継になるそうです。つまり、これまでシールド鉛バッテリーを使用していた重たい充電池を軽量なリチウムイオン充電池に変更し、LEDをハイルーメンなものに載せ換えたものが今回のVULCAN180の正体です。ちなみに、ファイアーバルカンLEDは米国防爆、IEC防爆ともに継続品となります。
続いて外観の詳細をご紹介します。
従来の、充電池の入った四角い箱にライトユニットを付けました!という「ライトボックス」とは異なるデザイン性の高いルックス。ちょっと野暮ったいのがカッコよかったライトボックスシリーズにもデザイン性が取り入れられ、より機能的で精悍な外観となりました。その変わりようは、まるで工業デザイナーの奥山清行氏が手がけたヤンマーのトラクターのようです。
ライトユニットはライト本体から出っ張らず、ほぼツライチ。ライトユニットには3灯の白色系のパワーLEDが乗っています。いずれもスムースリフレクターを使用しています。耐衝撃性に優れたポリカーボネート製の風防レンズは個々に分かれているのではく、黒いカバーの裏に一枚になったものが装着されています。
テールの青いパーソナルマーカーのデザインも一新されました。なんだか車のテールランプのようです。
充電用の接点端子は底面ではなくテール部にあります。専用のチャージャーラックに挿して充電を行います。これまで底面部にチャージャーラックへのスライドガイドや接点端子がありましたが後方へと移設されております。その理由は以下の通りと思われます。
火災による煙は一度天井に上がり、次第に下方へと充満していきます。よって、床に近い部分は煙が少ない可能性があり、また要救助者がいる場合は床に倒れている可能性があります。
火災現場で消防士は、ライトを地面に押し付けるようにして低く構えます。そのため、実際の使用時はライトの底が床と擦れる可能性があり、チャージャーガイドや端子を傷める可能性がありました。
そのため、チャージャーガイドや接点端子を後方へ移し、靴底のような脱着可能なパーツに変更したものと思われます。タイヤのパターンのような模様が付いた黒い底部のパーツはドライバーで脱着が可能。まだリリースされたばかりの製品なので補修型番は出ていませんが、いずれ出てくることでしょう。
ライトユニットと本体を繋ぐ首部分は従来のE-SPOTよりも構造的に強化されています。また、チルトのノッチはしっかりしていて、自重で角度が変るようなことも無く、ネジ等で締める必要もありません。素早い展開と継続的な角度維持が可能です。これまで消防関係のライトは、特化した尖った性能を持ったものが多かったのですが、このライトは汎用的な使い方が可能です。置いて使えるので、例えば消防用具や車両の点検など日常の様々な業務に使えます。
グリップ部は滑り難いラバーグリップ。ゴワゴワの耐火グローブをしていてもしっかりと握れます。また、スイッチはトルグ式からプッシュ式に変更されました。ジャンパースイッチなどを差し替える必要はなく、ボタンひとつで調光可能です。
必ずHiモード1200ルーメンから点灯し、Low350ルーメンは続けて長押しすると作動します。スイッチボタンは大きく、押したときに音がします。確実に「押した」と認識できるのも特徴のひとつです。
ボディ素材には耐衝撃性と抜群の軽さを誇るスーパータフナイロン樹脂を使用。耐落下衝撃性能は2m。充分に頑丈かと思います。重量は約1123g と一般的なハンディの懐中電灯と比べて重く感じますが、従来のシールド鉛バッテリーを使用したE-SPOTは3580gあったのでその差は歴然です。軽量なファイアーバルカンLEDに比べプラス284gで済んでおり、ファイアーバルカンLEDユーザーであれば充分許容範囲かと思います。
バルカン180はオレンジボディの「ファイアー」とイエローボディの「インダストリー」があります。二点の違いは付属するショルダーベルトのみ。性能、防爆規格は全く同じです。ファイアーに付属するショルダーベルトは車のシートベルトタイプ。これは重装備の消防士が肩からライトを外すことなく素早くライトの着脱を出来るようにするためのものです。
バルカン180から新しいチャージャーラックが採用されています。従来品同様、壁や車内などに取り付けることを想定。先に紹介したとおり、チャージャーラックとボディの接点端子はテール部にあり、チャージャーから突き出た二本のプラグがボディの接点に触れることによって充電を開始します。ボディがチャージャーに最後までしっかりとはまらないと接点が触れません。ガッチャン!と音がするまで押し込みます。壁に垂直に設置すると自重によってやり易いですが、水平に置く場合は注意が必要です。
また、ケーブルの取り回しが自在に選べます。3方向から選べるので設置位置からの配線の取り回しに苦労が無く、小さな改善ですが実際に使用する方にとってはとても大きな改善点のひとつかと思います。ただ、若干プラグが挿し難い…。コツは斜めから押し込むこと。真っ直ぐ押し込もうとすると難しいです。プラグは壁面のコンセントから取れるAC用と12Vのシガープラグがセットになります。
充電しながらの点灯はできません。
3灯の光源から放たれた光は程なく1点にまとまります。余程至近距離で無い限り心配はありません。ただし、1灯あたりのリフレクターはさほど広く深いものではないので、照射距離という点では巨大なパラボラリフレクターを積んだファイアーバルカンLEDに劣ります。と言っても最大照射距離は548mあり、遠方照射能力に優れたモデルと比較しても劣るものではありません。同じ距離であればバルカン180の方が広く明るく照らせます。
明るい中心光とワイドな周辺光。どちらも過不足が無く非常に素直な配光です。スポット強めの1200ルーメンの配光は遠方への照射を可能にしており、充分に明るい周辺光は室内などの閉鎖された空間を広く照らせます。光源が3灯に分散しているので、1灯あたりに負荷が少なく効率的に発光し連続点灯が可能です。ランタイムもHiモードで約4時間は充分な明るさを維持して点灯します。Lowモードの350ルーメンにすれば約12時間のロングランタイムが可能です。頻繁な充電が困難な災害救助現場などでその強いスタミナを発揮します。
全体的にボディが機能的に洗練され、明るさ、ランタイム共にアップ。確実な製品の進歩が見られます。(アカリセンター価格:4万500円)
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(文・写真/アカリセンター・HATTA)
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