■約400km走って燃費は14.0km/L強と優秀
以前もレポートしましたが、CX-3のディーゼルモデルは、力強さはもちろん、静粛性や扱いやすさなど、走りの質感が総じて高く、"コンパクトだけど上質"というキャラクターを構築する大きな原動力となっていました。
となると、ガソリンエンジンはいささか分が悪いと申しますか、テストドライブ前には「CX-3ならではの魅力や個性が損なわれてしまうのでは?…」という不安が脳裏をよぎりました。しかしそれは、全くの取り越し苦労だったのです。
さて、デビューから3年を迎えたCX-3ですが、ボディサイズはディーゼル、ガソリンともに全長4275mm、全幅1765mm、全高1550mmと、最近デビューしたクロスオーバーSUVの中でもコンパクトな部類に入ります。
駆動方式は、4WDとFFが用意されていますが、トランスミッションはディーゼル車が6速のMTとATを用意するのに対し、ガソリン車は6速ATのみの設定。ちなみに車重は、ディーゼル車が1270〜1360kg、追加設定されたガソリン車はそこから30〜40kgほど軽量で、1240〜1320kgとなっています。
搭載されるエンジンは、ディーゼルが1.5リッター直4ターボで、最高出力は105馬力、最大トルクは27.5kg-m。対するガソリンは2リッターの直列4気筒DOHCで、最高出力は148馬力、最大トルクは19.6kg-mというスペックです。
もちろんガソリン車にも、前方の歩行者や先行車をカメラで検知、ブレーキを自動制御することで衝突回避をサポートする“アドバンスト・スマート・シティ・ブレーキ・サポート”、つまり、自動ブレーキの採用はもちろん、AT誤発進抑制制御や車線逸脱警報システムなども搭載。全グレードに、国が推奨する自動車安全コンセプト“セーフティ・サポートカーS”のワイドに該当する先進安全装備が標準されています。また、スムーズで効率的な車両挙動を実現する“G-ベクタリングコントロール”ほか、ドライビングをサポートするメカニズムの数々も搭載されています。
加えて、気になる価格は、ディーゼル車に対して約30万円ほど安く、210万6000円(20S・FF)〜276万4000円(20S Lパッケージ・4WD)という設定です。これまでCX-3といえば、装備レベルはミドルクラス級に充実しているものの、価格設定はやや高めという印象でしたから、グッと身近な存在となったガソリン車の登場を、歓迎する人も多いのではないでしょうか。
そうなると、やはり気になるのが「肝心な走りはどうなの?」ということでしょう。
エンジンを始動させて真っ先に気づくのは、静粛性、といいたいところですが、室内に侵入してくる音量そのものは、ディーゼルとイーブンというところ。アイドリングから2000回転程度までの低回転域では、ともに十分な静粛性を実現していて、同乗者はよほど意識しない限り、その違いに気づかないのでは? と思います。
確かに動き出してしまうと、ディーゼルはトルク感で勝りますし、サウンドもビートを刻むといいますか、独特の粒感が心地良く、クロスオーバーSUVらしい力強さを感じます。一方のガソリンエンジンといえば、より軽快で滑らかな印象。特に、中速域での反応の良さや伸びやかな加速感は、スポーティな走りを望む人にとってはピタリとくる感触かもしれません。高回転まで回して楽しむといったタイプではありませんが、2000〜4000回転辺りの“美味しい”ゾーンを使って、街中やワインディングを滑るように走るのは、なかなか爽快でした。
ちなみに、高速道路を100km/hで巡航している時のエンジン回転数は、6速で2000回転ほど。キックダウンを伴うような坂道が続かないルートであれば、長距離移動も難なくこなします。そして、気になる燃費はというと、テストドライブに連れ出した「20S プロアクティブ・FF」の場合、新たに採用されたWLTCの市街地モードで11.6km/L、高速道路モードで17.4km/Lという値ですが、高速道路6:市街地4程度の割合で400kmほどを走った結果は、14.0km/L強と十分期待に応えてくれるものでした。
また、関東エリアでの試乗と前後して、北海道の雪道を走る機会を得ましたが、関心させられたのは扱いやすさと快適性でした。
右足の細かい動きに合わせ、ジワリと反応するエンジンはコントロールしやすく、繊細なアクセル操作が求められる右左折や車庫入れもスムーズにこなせます。パワーの急激な立ち上がりでスポーティさを演出するのではなく、低速・低回転域から全域で自然かつリニアというのは、近年のマツダエンジンの美点ですが、悪条件の下ではその扱いやすさがさらに際立ちます。
加えて、コンパクトなハッチバックモデルの場合、雪道などの悪路では、ラゲッジスペースの周辺から少なからず不快なノイズが侵入してくるものですが、CX-3はこうした音の中でも、特に気になるガタガタ音の反響が抑えられています。些細なことではありますが、カドのある音や振動が続くと、ストレスや不安を感じるものですが、この辺りのしっかりとしたつくり込みは、同クラスのライバルを一歩リードしているといえるでしょう。
これまでCX-3といえば、ディーゼルエンジンがその個性のひとつとして大きくクローズアップされてきました。今回のガソリンエンジン車の登場で、全体のキャラクターが薄くなったかといわれれば、そんなことはありません。むしろ、コンパクトクロスオーバーというくくりに縛られない、凜々しく端正なエクステリアや、シンプルで品のいいインテリアといったCX-3の魅力はそのままに、自分のドライビングスタイルやライフスタイルなどにピタリとフィットする1台を選べるようになったことは、大きな武器となるでしょう。とはいえオーナー予備軍にとっては、うれしくも悩ましい問題が増えてしまったかもしれませんね…。
<SPECIFICATIONS>
☆20S プロアクティブ(2WD)
ボディサイズ:L4725×W1765×H1550mm
車重:1240kg
駆動方式:FF
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:148馬力/6000回転
最大トルク:19.6kg-m/2800回転
価格:228万4200円
(文&写真/村田尚之)
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