岡崎五朗の眼☆滑りやすい雪道で真価を実感。スバルの4駆は安心!だから楽しめる!!

■まるでクルマに血が通っているかのような反応

盛岡駅で東北新幹線を下り、バスで一路、安比高原へ。東北地方有数のスキーリゾートで我々を待っていたのは、SUBARUが2014年から実施し、2018年で5周年を迎えたイベント“ゲレンデタクシー”だった。

正直いって、実際に体験するまで、ゲレンデタクシーというのはホテルのエントランスからゲレンデ下のリフト乗り場まで、スキーヤーやスノーボーダーを運ぶだけのイベントだと勘違いしていた。でも実際は、まるでリフトみたいにSUBARUのクルマがゲレンデを上っていくではないか! ゲレンデを走る乗り物といえば、クローラーの付いた雪上車などが思い浮かぶが、まさか普通のスタッドレスタイヤを履くクルマが雪の斜面を上っていくなんてシーンは、想像もしていなかった。

タイヤがスリップしてしまうようなシーンでも、エンジンやAWD機構、VDC(ビークル・ダイナミクス・コントロール=横滑り防止装置)などを統合制御する“X-MODE”の恩恵もあり、XVは17度の斜度を持つ安比高原のゲレンデも、難なく上っていく。もしかしたら、最新のスタッドレスタイヤを履かせれば、前輪が空転して初めて後輪へも駆動力を配分する簡易的な“スタンバイ4駆”のクルマでもそれなりには上れるのかもしれない。でも、仮にコース途中でアクセルを緩めたり、再加速したりした時は、それをきっかけにスタックしてしまうリスクが高まる。その点、SUBARU独自の“シンメトリカルAWD”システムは、後輪にも常に駆動力を配分。その分、ゲレンデのような過酷なコースでも、途中で止まったり車体姿勢が乱れたりするリスクが小さい。ゲレンデタクシーはまさに、優れた走破力を発揮するSUBARUのAWDシステムあってこその企画といえるだろう。

ゲレンデタクシーを堪能した後は、安比高原を離れ、新青森駅を目指す。今回のルートは、総じて除雪の行き届いた道路が多かったが、十和田湖へと向かうワインディングロードや、奥入瀬渓流を抜けて八甲田山の姿を拝める辺りでは、雪国らしくそれなりの雪が降り積もっていた。通常であれば緊張を強いられる場面だが、最新のスタッドレスタイヤ、ブリヂストン「ブリザック VRX2」を履いたインプレッサとXVには、まるで何も起きそうにない。そう断言できるほどに、2台の挙動はとても安定していたのだ。

確かに、かなり滑りやすい路面でコーナーへとさしかかり、ハンドルを切っていくと、インプレッサとXVの前輪は滑り始め、車体はゆっくりとアウト側へ膨らんでいく。でも、滑る気配を感じ取り、ちょっとだけハンドルを切り足したりアクセルペダルを戻したりすると、アウトに膨らもうとしていた前輪は、スーッとキレイに内側へと戻っていく。ハンドルを切り足したりアクセルペダルを戻したりするアクションは、クルマがアウト側へ膨もうとする際、ドライバーが自然と行う操作だが、インプレッサとXVはいずれの操作でも狙っていたラインへと自然に戻るので、とても安心してドライブできるのだ。

そうして安心して走れるからこそ、ちょっとペースを上げ、走りを楽しもうという気にもさせてくれる。「クルマが予想外の動きをしない」という安心感があるからこそ、ドライバーは走りを楽しめるのである。

そんな2台での雪上ドライブが楽しいと感じたもうひとつの要因が、クルマ側が運転の邪魔をしないことだ。その一例がTRC(トラクションコントロール)のセッティング。滑りやすい雪道でのコーナリング中、コーナーの出口が見えた際にアクセルペダルを踏んでいくと、TRCが作動する。けれど、インプレッサとXVでは、その時に変な減速感がない。他メーカーには、まるでおしおきのようにトルクを絞り、強制的にスピードを殺してしまうTRCもあるけれど、今回の2台はトルクを絞りつつ“これ以上スロットルを開けるとタイヤが空転してしまう”寸前をキープしながら、ジワリと加速していく印象だ。

そうした自然な反応は、TRCだけに限らない。AWDはもちろん、VDCやABSといった、滑りやすい路面で挙動を制御するデバイスのすべてが、運転操作を邪魔しない味つけになっている。そこには、ドライバーの意思をくみ取り、自然なドライブフィールに仕上げるという、SUBARUのクルマづくりのポリシーが息づいているようだ。

「滑りやすい路面でクルマがアウト側へ流れたり、車体姿勢が乱れたりした場合、ドライバーは修正蛇を当てるはず」ーーそうした、クルマの挙動に対してドライバーがどのような反応をするかという“人間研究”を基盤に、テストで存分に走り込み、1台のクルマに仕立てた時に最高の結果が出るようセッティングする。だからSUBARU車に乗っていると、まるでクルマに血が通っているかのように感じられるのだ。

クルマに乗っていて恐いと感じるのは「この先、どんな挙動が出るか予想できない」ような場合だ。その点、インプレッサとXVは、雪や氷のように滑りやすい路面であっても、先々のクルマの挙動を予想でき、事前に何が起きそうかを予感させてくれる。そして、万一タイヤが滑っても、何かが起こってしまったとしても、その時の動きはとてもゆっくり。なので、運転していて恐くないし、安心してハンドルを握れるから運転も楽しめる。それは、助手席や後席に乗っている時も同様で、恐さを感じないから、どの席に座っていても、とてもリラックスしてドライブを楽しめるのだ。

クルマにとっての安心と楽しさ。それは、カタログを飾るスペックでは絶対に表せないものだ。今回の雪上ドライブでは、そんなスペックを超えたところにあるSUBARU車の真価の一端を感じとることができた。

<SPECIFICATIONS>
☆インプレッサ スポーツ 2.0i-S アイサイト
ボディサイズ:L4460×W1775×H1480mm
車両重量:1400kg
駆動方式:AWD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC 16バルブ
トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
最高出力:154馬力/6000回転
最大トルク:20.0kg-m/4000回転
価格:239万7600円

<SPECIFICATIONS>
☆XV 2.0i-S アイサイト
ボディサイズ:L4465×W1800×H1550mm
車両重量:1440kg
駆動方式:AWD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC 16バルブ
トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
最高出力:154馬力/6000回転
最大トルク:20.0kg-m/4000回転
価格:267万8400円

(文/岡崎五朗 写真/&GP編集部、SUBARU)


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