■まず専用器具「ジェズベ」を用意しよう
後藤「ジェズベ(またはイブリック)と呼ばれる器具を使用します。今回使用しているのは先代のマスターがトルコの骨とう品屋で購入してきたものですが、日本でもカリタなどの大手メーカーから販売されており、簡単に入手することができます」
■微粉状の極細挽きコーヒー豆を使用
後藤「微粉状の、かなり細かく挽いた豆を使用します。ご自宅にあるコーヒーミルによっては、ここまで細かく挽けない場合もあるので、すでに挽いてある専用の豆を使用するのが良いかも知れません。豆の種類はお好みで構わないのですが、個人的には酸味の強い豆は向いていないように思います」
道具とコーヒーの粉を準備したら、いよいよ淹れ方のレクチャーです。順を追って、美味しいトルココーヒーの淹れ方をチェックしていきましょう。
▼手順1「粉と砂糖をジェズベに入れる」
後藤「デミタスカップ1杯分なら、粉はティースプーン2杯(約6g)です。今回はデミタスカップ4杯分なので、約24gの粉を使用しています。甘くしたい場合は、このタイミングで砂糖を加えてください。量はもちろんお好みですが、デミタスカップのような小さい器で飲む場合、思ったより甘くなることが多いので、入れ過ぎに注意です。水を入れる前に、ここで軽くジェズベをゆすって、粉と砂糖を混ぜ合わせておいても良いですね」
▼手順2「水を入れる」
後藤「デミタスカップ4杯のコーヒーを淹れるなら、カップ4杯分の水をジェズベに入れてください」
▼手順3「火にかける」
後藤さん「弱火でじっくりです。弱火によって作られた細かい泡に、コーヒーの香りが包まれていると考えられているようです。また、沸騰するまでの時間を大事にする、という哲学のような思想も影響しています」
▼手順4「泡をカップに移す」
後藤さん「しばらく火にかけていると、フチの方から細かい泡が出てきますので、これをスプーンですくってカップに移します。複数のカップを使用する場合は、均等になるように分けてください。この泡に、コーヒーの風味が詰まっていると考えられているのです」
▼手順5「強火で沸騰させる」
後藤「泡をカップに移し終えたら弱火にして、沸騰直前で火から遠ざけます。落ち着いたら、また火にかける。これを2~3回繰り返します。最後に強火で1回沸騰させ出来上がりです。この時、噴きこぼれに気を付けてください。泡が上がり始めると上昇スピードはかなり速く、一瞬で噴きこぼれます。そばやうどんを茹でるときのスピード感に近いですね。泡が上がってきたら火を止める。落ち着いたら、また火にかける。これを2~3回繰り返したら出来上がりです」
▼手順6「カップに注ぐ」
後藤「コーヒーの中に直で粉が入っているので、勢いよく注ぐと粉が必要以上にカップに入ってしまいます。ある程度は入るものですが、入りすぎると粉っぽくなってしまいます。カップに注いだ後は粉が沈殿するのを待ち、上澄みをお楽しみください」
■おまけで占いも楽しめる
トルココーヒーは、飲み終えたのちの占いも有名。本格的に占おうと思ったら専門知識が必要とされるようですが、カップに残った粉のあとを見ることで簡単な占いもできます。興味がある方はチャレンジしてみると良いでしょう。
■小豆のような風味が斬新!?
いかがでしたでしょうか? 細かいコツはありますが、基本的には水に粉を入れて煮るだけなので、いかなる抽出方法よりもシンプルです。コーヒーとは、フィルターを通してろ過するものというイメージがありますが、このトルココーヒーは粉を分離することなく上澄みをそのまま飲むせいか、コーヒーの「豆」の感じがストレートに出ているように感じます。筆者は結構甘くして飲むことが多いのですが、若干おしるこの気配があります(個人的感想)。
ちなみに、今回ご紹介いただいた淹れ方は、Beans510の先代マスターである後藤さんのお父様が、トルコで学んできた内容がベースになっています。人によって細かい部分で違いはありますが、基本的な流れは変わらず、極端に味わいが変わることはないでしょう。
ペーパードリップのコーヒーとはかなり異なる味わいにはなりますが、決してクセが強いというわけではないので気軽にチャレンジしてみてください。マイルドな味わいで、コーヒーが苦手な方でも「これならイケる」となるかも知れません。
それでは、ステキなコーヒーライフを!
>> カリタ「銅製イブリック」
取材協力:コーヒー豆販売 自家焙煎専門店「珈琲の王国 Beans510」
(取材・文/太田史郎)
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