■インバーターの音以外、車内はほぼ無音
各種メディアでクルマに関する最新のニュースをチェックすると、どの媒体もEVの話題で持ちきりです。
自動車系のニュースサイトや専門誌での試乗インプレッションは、心穏やかに読むことができますが、経済誌などでは「EVこそ正義! 内燃機関は終了間近!!」という論調で語られることもしばしば。環境問題は確かに重要ですが、内燃機関との相対評価ばかりを目にすると、EVの生真面目さが際立ち「クルマ好きにとって魅力的な存在なの?」と思ってしまうのも事実。
クルマは道具ですが、古くから趣味の対象でもありました。果たして、日産自動車が誇る最新のEVは、古典的なクルマ好きである私を満足させてくれるのでしょうか?
前置きが長くなりました…。今回のルートは、日産自動車の本社がある横浜をスタート。東京都内を抜け、関越自動車で高崎まで。そこから再び一般道で軽井沢へと向かいます。
計算上の走行距離は約240kmといったところでしょうか。まず、クルマを受け取ってバッテリーの状態をチェックすると、残量は100%ですが、航続可能距離は280km弱という表示です。
リーフは新型へのモデルチェンジに際し、リチウムイオンバッテリーの容量を30kWhから40kWhへと大幅にアップさせており、カタログ上の航続距離もJC08モードで280kmから400kmへと向上しています。日本ではカタログ値の7掛け、というのが一般的な見方ですが、測定や表示方法がよりシビアなアメリカでは、カタログ値で151マイル(241.6km)、イギリスでは同168マイル(269.4km)と謳っています。
この辺りは、使用条件や測定方法の違いもありますが、メーターに表示された280kmという数値は、掛け値なしのリアルな航続距離といえるでしょう。そんな風に、つい真剣に航続可能距離を考えてしまうのも、EVならではかもしれませんが、一般的に、1日に200km以上走る機会はさほど多くはありませんから、通常の使用においては、実用上、問題になることはないでしょう。
さて、車内に収まって最初に感じたのは、シートの良さでしょうか。オプションの本革仕様でしたが、レザー特有の張りの強さも気にならず、十分なサイズに加え、クッションのストロークもあり、これなら長距離ドライブでも快適に過ごせそうです。
混んだ都内の一般道をひたひたと走り、関越自動車道へと向かいますが、外界の騒音もしっかりカットされた室内は快適そのもの。万が一の雪に備えてスタッドレスタイヤを履いていましたが、やや荒れた舗装でも不快なパターンノイズが室内に響くことはありません。心地良いエンジンサウンドも魅力ではありますが、かすかに聞こえるインバーターの音以外はほぼ無音、というのも、案外落ち着くものだな、と思いました。
横浜から都内を経て、60km少々を走破。関越自動車道に入った時点でのバッテリー残量は65%ほど、航続可能距離は約160kmです。試乗車は最上位グレードの「G」なので「高速道路同一車線自動運転技術」を謳う“プロパイロット”も標準で備わります。
ミニバンの「セレナ」を皮切りに、SUVの「エクストレイル」やリーフへと採用車種を拡大しているプロパイロットですが、当初はスムーズさがやや足りない印象がありました。前走車の追従機能は自然な感覚ですが、カーブでのステアリング操作時に、カクカクと舵角を切り増したり戻したりと少し段階的で、そのギャップが気になることがあったのです。この辺りは早々に改良されるだろうと思っていましたが、リーフでは実用的なレベルへと進化したようです。
ドライブ当日は、とても風の強い1日でした。関越自動車道を北上中も車線内を右に左に…とハンドルをとられ、時には向かい風で減速してしまうような過酷な状況。そして、風が落ち着いてきたところで、プロパイロットをオンにしてみます。時折、思い出したかのように風が強くなることがありましたが、この時、プロパイロットの進化を実感したのです。
速度を100km/hにセットしておくと、向かい風が吹いてきても前走車との間隔はほぼ変わることなく一定。前走車がいない状態で向かい風が吹いてくると、一瞬、減速してしまいますが、ギクシャクすることなくセットした速度へと復帰します。
ステアリング操作も同様で、横風にあおられた場合も“じわっ”とハンドルを微調整し、リーフを車線内にとどめます。速度もステアリングも、こうした修正動作は繊細さが必要ですし、“人力”でドライブする時は気を使うものですが、プロパイロットは信頼できるレベルへと近づいたようです。とはいえ、プロパイロットはあくまで運転支援。依存し過ぎるのは禁物ですし、風のある日などはあくまでサポート機能だと思って、運転操作にしっかり集中しましょう。
ちなみに、高速道路で感心させられたことをもうひとつ。新型リーフでは風切り音を不快に思うことがなく、車内で感じる騒音レベルは市街地走行とあまり変わりません。空気抵抗によるエネルギー損失は少なくありませんが、リーフは空力面の改良に積極的に取り組んでいるようで、その効果は航続距離が延びただけでなく、高速走行時の快適性にもしっかりと表れているようです。