■フランス車らしく走りは優しい!
クルマの成り立ちを見てみると、キャプチャーは、ルノー「クリオ(邦名:ルーテシア)」をベースにしていますが、カジャーは上位モデルたる「メガーヌ」由来のプラットフォームを使っています。ボディサイズは、全長4455mm、全幅1835mm、全高1610mm。日本車でいうと、日産「エクストレイル」を小ぶりにした感じ。日本国内でも使いやすいサイズですね。
ちなみに“ルノー×日産自動車”のアライアンスを活かし、エクストレイルのコンポーネンツを活用したSUVが、2016年からヨーロッパで販売されています。2世代目となるルノー「コレオス」がそれ。上級移行したコレオスと比べ“実用本位で惜しげなく使えるSUV”というのが、カジャーの立ち位置。うーん、このクルマで、アクティブなバカンスを楽しみたいものです!
日本で販売されるカジャーは、1.2リッターの直4ターボ(131馬力/20.9kg-m<いずれも欧州参考値>)を搭載する「カジャー インテンス」のみ。2リッターエンジン級のアウトプットを誇る直噴ターボは、基本、キャプチャーのそれと同じですが、最高出力は発生回転数を5000から5500回転に引き上げ、13馬力アップの131馬力を得ています(最大トルクは同じ)。
さらにトランスミッションは、6速AT(EDC=デュアルクラッチタイプ)のキャプチャーに対し、カジャーには7速ATがおごられます。同じデュアルクラッチタイプですが、ギヤの数が増えただけでなく、湿式の多板クラッチが採用され、変速のスムーズさもアップしています。
本国では、ディーゼル+4WD仕様も用意されるカジャーですが、MTのみの設定とあって、日本にはガソリンエンジン+FF(前輪駆動)だけの設定となります。でもまあ、厳しい雪国を除いて、冬場でも大抵のシチュエーションはFFで用が済みますからね。多くのユーザーにとっては“4WDよりもスタッドレスタイヤ”の方が大事です。
さて試乗車は、グリチタニウムにペイントされた個体。イメージカラーである赤のルージュフラムも素敵ですが、ダークメタリックのボディも、独特の“ぬめぬめ感”が強調されていて捨てがたい!
フロントのヘッドランプはもちろん、リアのコンビネーションランプにもLEDが使われ、フォグランプは前後とも標準装備(フロントは、コーナリングランプ機能付き)。ボディの四隅でグッと踏ん張るタイヤは19インチ。ホイールハウスには防音材が貼られ、室内の静粛性に配慮されます。
全長の割に幅広のトレッド、SUVとしては低めの車高と、スポーティなフォルムを採るカジャーですが、最低地上高はしっかり200mmを確保。アプローチアングルは18度と平均的ながら、デパーチャーアングルは28度と優れた数字になっています。いわゆる都市型SUVとは一線を画すスペック。こうなると前述をひるがえし、4WDモデルが欲しくなりますね…!?
もっとも、こうしたスペックはFFモデルでも有効。例えば、キャンプなどを楽しむために、大きな石が転がる不整地を行くようなシーンで、大いに頼りになります。下りは慎重に。上りはやや余裕を持って。そして、スタックに気をつけて!…アクティブな休日が思い浮かびますね。
ドアを開けて車内に入ると、インテリアはブラックを基調に、シルバーの挿し色。“フレンチSUV”という華やかな語感からすると、ちょっと無愛想かも。でも、カジャー インテンスにはレザー内装が標準装備されていて、さり気なく贅沢なんです。シートの座り心地はいいし、ステアリングホイールやシフトレバーには手触りのいいナパレザーが巻かれます。フロントシートにはシートヒーターが備わるほか、助手席の乗員用に、センターコンソールの根本にしっかりとした“インナーハンドル”が用意されます。上級SUVの証です。
メーター類は液晶ディスプレイに表示されるタイプで、好みによってデザインやカラーを変えられます。センターコンソールには7インチのマルチファンクションパネルが設けられ、指先でのタッチ操作が可能。スマートフォンと接続し、「Android Auto」や「Apple CarPlay」を使うことができます。
ステアリングホイールを握って走り始めると、カジャーの走りは意外に優しい。225/45R19というスポーティなサイズのタイヤを履いていますが、路面の凹凸を上手にいなし、不快な突き上げを感じさせません。
ひとたび高速道路に入れば、7速の多段ATの恩恵で、トップギヤの100km/h巡航では、エンジン回転数は2000回転程度。走りはスムーズで室内は静かですから、目的地でのアクティビティに備えてリラックスできます。
積極的に「アクティブヴァカンスを」と謳うだけあって、リアシートの居住性も高く、大人用として全く実用的。
シートバックは6:4の分割可倒式ですから、乗員と荷物の量に合わせて、キャビンとラゲッジスペースの空間をアレンジ可能です。2分割されたフロアボードを使い、荷室を手前と奥に分ける工夫もいいですね。手荷物やアクティビティのギアを分けて載せたり、それぞれを転がりにくくして積めたりできそうです。
最新モデルらしく、カジャーは2台のカメラ、12個のセンサー、そして、ミリ波レーダーによって周辺を監視、分析します。車線逸脱を警告するほか、死角にいる他車が入った場合には、ドアミラー内のインジケーターを点灯・点滅させてドライバーに知らせます。自動ブレーキも標準装備。運転支援システムとしては、ステアリング操作を自動で行ってくれる“イージーパーキングアシスト”や、シンプルな“クルーズコントロール&スピードリミッター”などが搭載されます。
もし、カジャー インテンスを購入したならば、もう毎日がバカンスかもしれませんね!…というのは、スイマセン、少々浮かれ過ぎました。いい直します。スタイリッシュな外観をまといながら、最も売れ筋のCセグメントSUVゆえの堅実な作りが、むしろアクティブな生活を予感させてくれる…。それが、新しいフレンチSUVの魅力です。
<SPECIFICATIONS>
☆インテンス
ボディサイズ:L4455×W1835×H1610mm
車重:1410kg
駆動方式:FF
エンジン:1197cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:7AT
最高出力:131馬力/5500回転(参考値)
最大トルク:20.9kg-m/2000回転(参考値)
価格:347万円
(文&写真/ダン・アオキ)
[関連記事]
【ルノー トゥインゴ GT試乗】F1のDNAが息づく!痛快な走りを楽しめるホットハッチの新星
【ルノー メガーヌ試乗】4輪操舵で新次元の走り!かつてないクルマの楽しさを味わえる
【ボルボ XC40試乗】1stロットはもう完売!ボルボの新しい扉を開く新世代SUV
- 1
- 2