■どれもこれもサファイアクリスタル風防だらけ
それらチプメカの商品説明を読むと、「Dial Window Material Type = Sapphire crystal」つまりは「サファイアクリスタル風防」の表記がよくあるのですが、果たして、この記載をドコまで信用してイイのだろうか…。言うに及ばずではありますが、サファイアクリスタル風防は通常のガラス(ミネラルガラス)風防に比べて硬くてキズが入りにくく、その分高価な素材です。
ですが、かなり激安な価格帯(5000〜7000円くらい)のチプメカにも「サファイアクリスタル風防」仕様の記載があって、「コレは本当にサファイアクリスタルが使われているのだろうか…?」と正直少し眉唾に感じていたのでした。
サファイアクリスタルとミネラルガラスでは、わずかにサファイアクリスタルの方が透明度が高いと言われていますが、見た目ではまず判別がつきません。
その判別方法としてよく知られているのが、触れた時の体感温度で判断するというもの。ミネラルガラスに比べ熱伝導率の高いサファイアクリスタルは、冷たくてヒヤッとしているので、その温度の違いで判別できるのです。できるのですが…、明確に違いがわかるほどの鋭い感覚を私は持ち合わせていないようで、どうにも確信を持てません。
なので、私個人としては「なんとなくサファイアクリスタルっぽい or 違うっぽい」くらいでしか判別できず、「コレはサファイアクリスタルではない!」と断定するレベルとはとても言えず…。
というような話を友人にしていたら、「イイ物があるよ」と貸してくれたのがコチラ。
この測定器、元々はダイヤモンドかイミテーションかを調べるためのモノらしいですが、サファイアクリスタルにも応用可能ということです。
ダイヤモンドやサファイアは先述のとおり高い熱伝導率を有しているので、その熱伝導率を測定することによって真贋を判別する仕組み、とのコト。そしてサファイアと同様の構造を持つ人造のサファイアクリスタルもまた然り、と。
そんなワケで早速、今まで「AliExpress」で購入した、サファイアクリスタル風防と記載されているチプメカに当てて測定してみました。
ひとつめは、以前に購入記事をレポート(>> シンプル&レトロなドーム風防の機械式9958円腕時計を買ってみた!)したコチラの腕時計から。
シンプルで普遍性を感じる好みのデザインですし、中身のムーブメントはSII(セイコーインスツル)の「NH35」。大変使い勝手のイイ腕時計としてオススメの記事を書いたのですが、Web上での商品説明によると、なんと風防はサファイアクリスタルとの記載。
このようなカーブした曲面でポコリと盛り上がったドーム型の風防は、プラ風防を想起させ、レトロ&オールド感のある渋めな腕時計に演出してくれますが、平らな状態から硬いサファイアクリスタルを研磨加工して曲面を作り出すドームサファイアは、非常に高コストと言われています。なので、「ドームサファイア使用でこの価格はありえない」との思いは当初からあり、以前の体験レポでも風防の素材に関しては特に触れませんでした。
この測定器でハッキリと明言できます、風防の素材が何なのかを…! というワケでドキドキの測定…
シーン…
やはりサファイアクリスタルではありませんでした…。うーん、予想どおりの結果とはいえ、オススメ記事を書いた身としては少々複雑な気持ちに…。
ふたつめはコチラの腕時計。一見クロノグラフに見える多針モデルですが、スモールセコンドは24時間計&曜日等のカレンダー用途で、チプメカ界隈ではよく見かける仕様のモノです。青い秒針に惹かれて購入しました。コチラはお値段7000円弱。
シーーン………
コチラも反応無しの not サファイア but ミネラル。1万円以下の価格帯ですとこんなモノなのでしょうか。やはりサファイアクリスタルは使われていませんでした。
つまりは商品説明の項目であんなにアピールしていたサファイアクリスタル風防は、嘘という結果に…。ある程度は覚悟していたのですが、実際にこうやってはっきりと結果を突きつけられると、やはりショック…!
日本国内では考えられないことですが、「AliExpress」ではこういった誇大(?)広告が跋扈しているようです。
実際問題として、本当はミネラルガラス製なのに「サファイアクリスタル風防」と書かれてもなかなか確かめようがありません。普通に使っていて数ヵ月後か数年後かにたまたまドコかにぶつけてしまい、簡単に風防にキズが入って「アレ? 本当にサファイアなの!?」と疑問に思っても、そのまま使い続ける人もいるでしょうし、引き出しの中にしまい込んで新しく他の腕時計を買う人もいるでしょう。
わざわざ、こんな風に測定器で調べて売り主に苦情言って返品&返金してもらう、というのも手間かかりますし、ある程度使用済みだと素直に返金に応じるコトもないでしょうし、それほどの労力を割くような高額品でもない、という事情もあって、要は発覚しにくい嘘なんですよね、コレって。
「バレないだろうから、とりあえず良く見せておこう」という魂胆なのでしょうか。
…と、ココで終わればひたすら注意喚起で終わりなのですが、もうひとつ続きます。
3つめの腕時計、コチラも以前に購入をレポート(>> 中国のECサイト「AliExpress」のスーパーセールで特価品チプメカ時計を買ってみた!)したチプメカ。この記事にはハッキリと「サファイアクリスタル風防が使われている」と書いてしまっているので、コイツがミネラルガラスの風防だと私としては、エライこっちゃ!です。ドキドキしながら測定器にかけると…
ピーー!
なんとコチラは本物のサファイアクリスタル風防。嘘つきにならずホッと一安心しました! と共に、うーん…何だかよくわからなくなってきました…。白と思えば黒、黒と思えば白…。まさに玉石混淆という言葉がふさわしい、チプメカ from AliExpressの現状…。
とりあえず私は「AliExpress」で腕時計を購入する際には「サファイアクリスタル」の表記はアテにしないことにしました。皆様も海外サイトでのご購入時には自称「サファイアクリスタル」には充分ご注意ください。
>> 連載[安価機械式「チプメカ」マニアの1万円以下腕時計購入記]
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(文・写真/伏せ字)
腕時計好きの趣味が高じて、記事を執筆することに。一介の時計好きサラリーマン。好きな時計の傾向は、ダイバーズ、青焼き針、56系LM。
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