■ディーゼル仕様の排気量を1.8リッターに拡大
今回の改良において最も注目すべきは、走りに直結するエンジンの改良や刷新です。従来モデルが搭載していたのは、排気量1.5リッターのクリーンディーゼルエンジン“スカイアクティブ-D 1.5”と、2リッターのガソリンエンジン“スカイアクティブ-G 2.0”。今回の改良では、ディーゼルエンジンの排気量を1.8リッターへ拡大し、ガソリンエンジンにも数々の新技術を採用することで、ドライバビリティの向上を図っています。
1.5リッターのスカイアクティブ-D 1.5も、伸びやかな加速や優れた環境性能に定評がありましたが、新開発の1.8リッターディーゼル“スカイアクティブ-D 1.8”では、実用燃費や環境性能の向上を目的に開発が行われました。排気量アップだけにとどまらず、超高応答マルチホールピエゾインジェクターや可変ジオメトリーシングルターボチャージャーなどを新採用。1.5リッターディーゼルが最高出力105馬力、最大トルク27.5kg-mだったのに対し、1.8リッターディーゼルは116馬力、27.5kg-mと、一見すると微増にとどまりますが、マツダの開発陣は数値の向上ではなく、Right Sizing(ライトサイジング)、つまり“排気量の適正化”による実用性向上を狙ったと語ります。
排気量アップによるメリットとしては、まずトルクの向上が挙げられます。これにより、応答性や力強さが増しており、より意のままに加速をコントロールでき、余計なアクセルペダル操作が減ることで、ストレスや疲れの軽減といった効果も期待できるそうです。
環境性能においても数値以上の効果があり、高負荷時におけるNOx排出量の低減、熱効率の向上による実燃費の改善も図られました。また、排気量アップと聞くと、エンジン重量の増加が気になりますが、ピストンやコンロッド、クランクシャフトの形状を最適化することで軽量化を図り、トータルでも1.5リッターディーゼルと同等レベルに収まっているそうです。
一方、2リッターガソリンのスカイアクティブ-Gには、ひとクラス上の「CX-5」でも採用されたエッジカットピストンや新ノズル付き拡散インジェクターなどを新たに採用。これらは全域にわたるトルクアップの実現、実用燃費の向上に貢献しているとのことです。
また、メカニズムの改良はエンジンだけにとどまりません。マツダがこれまで追求してきた“人馬一体”、意のままにクルマを操る楽しさ、という基本コンセプトを継承しつつ、足まわりも大幅な改良を受けています。具体的には、前輪のショックアブソーバーやスタビライザー、スプリングの改良に加えて、Gベクタリングコントロールや電動パワステの制御などを繊細にチューニング。車両の姿勢変化をさらに滑らかにすることで、より安心して思ったとおりに操れるセッティングとしています。
セッティングやチューニングと聞くと、ちょっとした仕様変更を想像しますが、さにあらず。ショックアブソーバーのピストン径を30mmから32mmに拡大することで、より滑らかに動くようにし、かつ応答性や減衰力の向上を実現。加えて、トップマウントの大型化と内部素材をラバーからウレタンとすることで、微小振動も低減させています。
そして、乗り心地や操縦安定性に大きな影響を与えるタイヤが進化を遂げたのも、注目に値するポイントです。タイヤは、トーヨータイヤ製の「プロクセス R52」を採用しますが、これはCX-3の足回りに合わせて独自開発したもので、サイドウォールを柔らかく、トレッド面の剛性をアップさせています。これにより、路面からの入力を吸収。滑らかな入力をサスペンションに伝え、ねじれを抑えつつ滑らかな応答を実現するセッティングとしています。
さて、乗り心地といえば、NVH(ノイズ・バイブレーション・ハーシュネス/騒音・振動・ハーシュネス)性能への取り組みも見どころ…、いや、静粛性だけに聞きどころかもしれません。マツダでは、以前から人間が音を感じるメカニズムについて研究を重ねており、音の大きさだけでなく、時間変化や到来方向をコントロールすることで、静粛性の質を高めることに取り組んできたといいます。内装材やルーフライナーの吸音力向上はいうに及ばず、アウタードアパネルやリアドアガラスの板厚アップなどを行っており、音圧の低減に加え、騒音を速やかに減衰させることで、静粛性を向上しています。
このように、クルマの核となるメカニズム各部に手を加え、積極的に最新化するのはマツダらしいところですが、もうひとつ注目したいのが内外装。特にインテリアは、上質さがよりブラッシュアップされた印象です。
エクステリアは、フロントグリルやテールランプ、サイドガーニッシュのデザインを変更。ホイールは、デザイン変更に加えて切削加工部を拡大したことで、足回りがより引き締まって見えるようになりました。
そして、インテリアは電動パーキングブレーキの採用に伴い、フロアコンソールの形状が変更されたことに加え、インパネ中央のパッド部分を拡大し、センターアームレストなどが新たに採用されています。
さらに、インテリアは素材やカラーコーディネートも変更。従来モデルは若々しいイメージでしたが、都会的で洗練された配色や素材に変わっています。インパネパッドやドアインナーには、手触りのよいスエード調人工皮革“グランリュクス”を採用。カラーもグレーとすることで、落ち着いた雰囲気となりました。
また、上位グレードであるLパッケージでは、シート表皮をフルレザー製とし、グレーのパイピングでより上品な印象に仕上げています。一般的なパイピングは、縫製面より上に出ていますが、CX-3のそれは、表皮より低くなるよう縫製するなど、手の込んだ作りになっています。
オトナも納得の設えとなったCX-3ですが、こうした上質さを象徴するモデルが、特別仕様車の「エクスクルーシブ・モッズ」。エクステリアこそ、全面高輝度ダーク塗装のホイールが装着されていますが、外観をパッと見て気づく違いはその程度。
しかし、インテリアにはディープレッドのナッパレザーシート、ピュアホワイトのインパネパッドやドアインナーをあしらうなど、かなり凝った仕立てとなっています。実はこのナッパレザーは、最上級SUVの「CX-8」にも使われている素材で、縫製にも気を配ったものだと、インテリアの開発・デザイン担当者は語ります。
シート表皮にはパーフォレーションと呼ばれる小さな孔が開けられていますが、この孔があると縫製時に革が伸縮し、キレイな直線で縫うことが難しいのだそうです。そこで、表皮の裁断時には、孔のない部分を設けて縫製することで、美しく、手触りの良いシートに仕立てているのだとか。そのこだわりは正直いって、一般的なコンパクトカーの基準とは一線を画しています。ちなみにこのエクスクルーシブ・モッズは、ガソリン/ディーゼル両エンジンに設定されています(それぞれに2WDと4WDを用意)。
もちろん、ボディサイズを見れば、コンパクトなクロスオーバーSUVではありますが、CX-3が幅広い層から支持されているのは、表面的な部分だけでなく、オトナも納得できる丹念な作り込みにあるのではないかと思います。また、単なるエントリーモデルではなく、クラスに縛られないクオリティこそがCX-3の個性と見るならば、今回の商品改良は正当、かつ、その価値をさらに高める一手であるのは間違いないでしょう。
<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD/6AT)
ボディサイズ:L4275×W1765×H1550mm
車重:1370kg
駆動方式:4WD
エンジン:1756c 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kg-m/1600~2600回転
価格:306万2080円
<SPECIFICATIONS>
☆XD エクスクルーシブ・モッズ(2WD)
ボディサイズ:L4275×W1765×H1550mm
車重:1300kg
駆動方式:FF
エンジン:1756c 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6AT
最高出力:116馬力/4000回転
最大トルク:27.5kg-m/1600~2600回転
価格:286万8480円
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