■展示されたヘルメットはセナ本人が寄贈した超お宝グッズ
マクラーレンのセナは、エンジンをミッドシップに配置し、後輪駆動レイアウトを採用。先進の油圧サスペンション“レースアクティブ・シャシー・コントロールⅡ”も搭載しています。
シャーシ、ボディ、シートなどの素材にはカーボンファイバーをふんだんに使い、車両重量は1198㎏を達成。
ルックスにおける特徴は、なんといってもフロントとリアのアクティブエアロダイナミクスですが、特にリアのウイングはインパクト絶大で、これにより最大800kgのダウンフォースを稼ぎ出すのだとか。まさに、速さを追求するために生まれたクルマですね。
ちなみに価格は、イギリス本国で75万ポンド(約1億950万円)。日本向けの価格は1億100万円なので、日本で購入するのが一番安いとのことですが、全世界限定500台は、残念ながらすでに完売しています。
実は、日本での販売台数は「購入できなかった人もいるため」との配慮から、マクラーレンは非公表。でも独自取材によって、日本での販売台数は30数台ところまでは分かりました。オーナーの中には、マクラーレン初のロードカー「F1」からずっと、マクラーレンのコレクターとして各フラッグシップモデルはもちろん、主要モデルを複数コレクションされている方もいるのだとか!
こういったスーパーラグジュアリーカーの世界には、ヒエラルキーが存在します。特に販売台数が少なく、人気モデルであればあるほど希少性が高く、優良顧客の中から順に販売されるため、一見さんはなかなか購入できないのです。マクラーレンファンにとっても、セナファンにとっても(資金さえあれば)ノドから手が出るほど手に入れたいモデルだったと思いますが、マクラーレンにしてもフェラーリにしても、人気の限定モデルを手に入れるためには、少なくとも複数台を購入しなければならないようです…。
さて、お披露目会の後に開催されたパーティでは、今は亡き“アイルトン・セナを日本一知る男”のおひとり、マクラーレンの安川 実さんにお会いしました。安川さんは元レーシングドライバー、ロジャー安川さんのお父さまで、現在も年に数回、マクラーレンのF1チームに帯同している方。十数年前に、日本GPはもちろん、海外のグランプリ取材でも、個人的にとてもお世話になった方でもあります。
今回のパーティ会場には、セナのレーシングスーツをはじめ、アイルトン・セナの遺品が多数展示されていました。
その中のひとつであるヘルメットには、ピットクルーと交信するためのスピーカーとマイクロフォンが内蔵されていました。マクラーレンのF1チームは、1991年から日本のケンウッド製の無線システムを使っています。今回、展示されたヘルメットは、当時ケンウッドの無線担当責任者が、セナにとってマクラーレンでのラストレースとなった1993年の最終戦後に、セナ本人から寄贈されたという超お宝グッズです。
セナはどこのサーキットでも、無線のチェックを欠かさなかったそうです。コース上のいろいろな場所から無線で担当者と話すことで、聞こえにくい場所がないかをチェック。例え、決勝のバトルの真っ最中であっても、正確なやり取りができるよう準備していたといいます。「丁寧かつ詳細にレースエンジニアと交信し、チームワークを最大限に活用するレーシングドライバーは、セナが一番でしたね」と安川さんが教えてくれました。
セナは’94年の第3戦サンマリノGPの事故で、34歳の若さでこの世を去りました。’93年までの6シーズン、マクラーレン・ホンダのマシンをドライブし、3度のワールドチャンピオンを獲得。また、伝統のモナコGPでは、歴代最高の6勝をマークしています。
圧倒的な速さとシャイな性格で、日本はもちろん、世界中で愛されたセナ。彼の死からすでに24年が経ち、今では彼のことを知らない世代も増えていますが、今回、彼の名がマクラーレンのロードカーに冠されたことで、この先も彼のことは、永遠に忘れられることはないでしょう。マクラーレンにとってセナというドライバーは、それだけ特別な存在だったのでしょうね。
(文/吉田由美 写真/吉田由美、マクラーレン・オートモーティブ)
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