■新型Gクラスは不変を装いつつ、実は中身は劇的に進化
従来型Gクラスは、過去に一度、ボディサイズが大きくなりました。その時は「最後のGクラス」ということで、駆け込み購入した方も多かったようです。実際には、サイズが少し大きくなっただけで見た目はそのまま。Gクラスファンはホッと胸をなで下ろしたのでした。
今回の新型登場に際しても「最後のGクラスになるかも」ということで、従来型の最終限定モデル「G350 d ヘリテージエディション」を駆け込み購入した方が多いようです。そのため、Gクラス人気の高い日本市場だけ、新型と従来型とをしばらく併売するとのこと。メルセデス・ベンツ日本の上野金太郎社長によれば「Gクラスを愛してくださるお客さまが、デザインの好みやサイズ、ライフスタイルで選べるようにしました」とのこと。まさにこれこそ“おもてなし”といえるでしょう。
さて注目の新型ですが、デザインはみんな大好きなカクカクのデザインはそのまま。そのため、新型を街で見掛けても、新型だと気づかない人がいるかもしれません。
でも、一見、同じように見えて、実はほとんどのパーツが新設計されているのです。Gクラスの特徴ともいうべきヘッドライトやボンネット両端にあるウインカー、ドアハンドル、そして、室内のスイッチ類といったところは、もしかしたら変わらないように見えるのではないでしょうか?
とはいえ、ヘッドライトは外からは分かりませんが、ライトの奥に片側48個のLEDをしのばせ、格段に明るく照らします。また、発表会のプレゼンでは明らかにされませんでしたが、実はボンネットの両端にあるウインカーも新設計。歩行者保護の観点からいうと、ここにウインカーを配置するのは難しいのですが、Gクラスのデザインを継承するために、衝撃を受けたらボンネット内に沈むよう、設定し直されているそうです。さすがは安全意識の高いメルセデス・ベンツですね。
また、従来型はすべてのガラスが平面でしたが、新型ではリアガラス以外、フロントもサイドも、ガラスの中央を頂点に、それぞれ4mm盛り上がった球状になっているとのこと。これは、エアロダイナミクスの向上に効果があるそうです。
ちなみにドアハンドルは、Gクラスを横から見たときのアイコンになっていることもあって、そのまんま。室内のスイッチと助手席前のアシストグリップも同様です。そして、ドアは軽量化を図りつつ、3.5mmの厚さを確保することで、あえて閉まるときの「ガシャーン」という音も同じにしたのだとか。つまり新型Gクラスは、見た目は不変を装いつつ、実は劇的な進化を遂げているのです。
とはいえ、ボディサイズは全長4817mmへとプラス53mm拡大。全幅も1931mmと64mm大きくなりました(ともにG550)。でも、超高張力スチールや新しいアルミ素材を多用することで、車重は170kgのダイエットに成功。ねじり剛性も約55%向上しています。
G550のエンジンは、最高出力422馬力、最大トルク62.2kg-mを発生する4リッターのV8直噴ツインターボエンジンで、新型の“9Gトロニック”トランスミッションを組み合わせます。
走りは“ダイナミックセレクト”によって5つのモードが選べますが、新型Gクラスでは独自の「Gモード」が新設定され、デフロック状態かローレンジを選択すると、ショックアブソーバー、ステアリング、アクセルの特性が悪路に適したモードに変わります。
また、新設計のラダーフレームや、メルセデスAMGと共同開発した新型サスペンションなどにより、新型Gクラスはこれまで以上にタフになっているのだとか。さらに、新設計のラダーフレームにより、これまでより10cm以上も深い、水深70cmまでの走行を可能にしています。
インテリアで印象深いのは、12.3インチと大型の液晶ディスプレイをレイアウトしていること。随所に質感の高いパーツを取り入れることで、高級感も高まっています。
安全装備は、最新技術が盛り込まれた“インテリジェントドライブ”が搭載されていますが、大きくなったGクラスをサポートするために、360度カメラや、縦列駐車や車庫入れをアシストする“アクティブパーキング”を標準装備。そのほか“メルセデス・ミー・コネクト”によって24時間緊急通報に対応する安心安全サービスや、24時間のコンシェルジュサービスなどを1年間無償で受けられる、おもてなしサービスも充実しています。
ちなみに発表会の会場では、新型Gクラスの驚異の実力を垣間見ることができました。最大傾斜角度45度の“マウンテンクライム”を上れるのは、メルセデス・ベンツのSUVの中でも、新型/従来型のGクラスだけ。さらに、アーチ型のブリッジや、片輪で最大45度の傾斜でも走行できるモーグル&バンクでは、新型の性能向上ぶりを実感できました。
外から見ていると、車体にかかる衝撃がすごそうですが、実際に乗ってみると、新型Gクラス自慢のサスペンションのおかげで、意外にもやんわり。このようにタフガイで優しく、インテリジェンスだけど嫌味がない点こそ、Gクラスの魅力なのですね。
新しいGクラスに触れてみて感じたのは、新しさと古さとが同居する欧州ならではの文化。歴史ある建造物の外観は残しつつ、室内や中身を大幅にリノベーションした建物が多い現地の街並みは、まさに文化のひとつだと思うのです。これまた売れそうな気配満点の新型Gクラス…というか正直いって、私は欲しいです!(簡単には買えないけれど…)
(文/吉田由美 写真/吉田由美、メルセデス・ベンツ日本)
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