■新2リッターエンジンの改良ポイントは23箇所にも及ぶ
2017年11月にロードスターとロードスターRFに施された商品改良メニューを並べてみると、リアコンソールボックス内の床面に遮音マットを追加したり、一部グレードのサンバイザーに表革巻きタイプを採用したりといった、質感アップを目的とする細かい改良に始まり、新ボディカラーの採用、布シートへのシートヒーター搭載(従来は革シートのみだった)、アダプティブLEDヘッドライトの装備、視認性アップのためのメーター表示の変更、そして、リアサスペンションやステアリングフィールの改良などなど、何気に盛りだくさん。「ロードスターもこれでしばらくは安泰だ」なんて思っていたほどだ。
もちろん、製品がどんどん進化していくのは大歓迎。特にクルマは、売りっぱなしではなく、デビュー後もしっかりと進化させていくべきだし、その手を緩めないマツダの姿勢には拍手を送りたい(とはいえ、この半年の間にロードスターを購入したユーザーには、同情を禁じ得ないけれど…)。
しかも、半年前にあれほど進化したから今回はおとなしいだろう、と思いきや、そんなわけでは決してなかったことにも驚く。今回の改良における“表向きの”注目ポイントは、RFに積まれる2リッターエンジンの大改良と、自動ブレーキの採用だ。
2リッターエンジンは、従来の158馬力から184馬力へとパワーアップ。だから動力性能が高まった…わけだが、注目すべきはそこではない。むしろフィーリング面の進化なのだ。何よりお伝えしたいのは、2リッターエンジンの高回転域での“伸び感”が、大幅に良くなったことである。
1個当たり27g軽くしたピストンや、41g軽くしたコンロッドなど、回転系部品の軽量化に始まり、ウエイトの見直しでバランスを改善したクランクシャフトの採用や、スロットルバルブの通路拡大(28%増)、吸排気ポート形状の変更、そして、カムプロフィールの変更など、今回、2リッターエンジンには大きく手が入れられた。雑音が消え、音質がピュアになった排気系まで含めると、エンジン関連の改良ポイントは、なんと23箇所にも及ぶ。
その結果、高回転域まで回した時のエンジンフィーリングが、格段に爽快になったのに加え、最大回転数は6800回転から7500回転へと、約1割も上昇。自然吸気エンジンを搭載するスポーツカーの勘どころは、なんといっても高回転域の気持ち良さにあるわけだが、新型はそれが格段にアップしていることを、決してオーバーな表現ではなく、走り始めて最初の加速で実感できたのだ。“加速の速さ”ではなく“爽快感”が断然違う。この加速フィールだけでも、新型を積極的に選ぶ理由になるはずだ。
それにしても、昨今は燃費面への配慮などから、高回転域は抑え気味にする、というのが、エンジン開発における常識だ。だが“気持ち良さ”を重視した結果、そんな常識さえも無視し、あえて高回転化の道を選択した開発陣の姿勢には“走る歓び”を第一に考えるマツダらしさを感じずにはいられない。
しかもこの新2リッターエンジン、高回転域まで回るようになった結果、新たな副産物も手にしている。今回、試乗の舞台となった峠道のようなコースでもそうだったし、サーキットなどでも時として「2速のまま走るか、それとも3速にシフトアップするか」と悩まされる場面がある。
そんな時でも、高回転の伸びが良くなり許容回転数がアップした結果、新しいロードスターRFは、2速のままで問題なく走れる領域が増えたのだ。ギヤ比や最終減速比は従来と変わっていないが、2速での上限速度は、6800回転時代が90km/h強だったものが、7500回転まで回るようになって約100km/hまで伸びた。この違いは、ドライブを楽しむ上で大きな差となる。どうしてもパワーアップといったスペックにばかり目が向きがちだが、実は最大回転数のアップこそが、新2リッターエンジンのポイントなのである。
ついでにいうと、高回転化を果たしながら、低中回転域は全く犠牲になっていないこともお伝えしておきたい。トルクはむしろ全域で太くなっていて「スポーツ走行では高回転域が気持ち良くなり、それでいて、日常の扱いやすさも向上している」という、まさに失うもののない進化といえる。もちろん、燃費も悪化していない。とはいえ、これだけ高回転域が気持ち良くなると、思わずエンジン回転を上げ気味に走ってしまいがちなので、実燃費は悪化するかもしれないが…。
ちなみに、ソフトトップ仕様に搭載される1.5リッターエンジンも、新2リッターエンジン同様の燃焼改善技術を採用したほか、レスポンスフィールの向上を図っている。結果、全回転域で従来型以上のトルクを獲得しつつ、より高い環境・燃費性能を実現。最高出力は1馬力アップの132馬力、最大トルクは0.2kg-mアップの15.5kg-mとなっている。