見なきゃ損!超豪華名古屋城本丸御殿を現代に完全再現できた理由とは

■木造建築で当時の技術の粋を完全再現!

徳川家康が名古屋城築城の命を出したのが1609年。そして1612年に天守閣が、1615年には本丸御殿が完成しました。往時の城郭を復元した城は日本にいくつもありますが、今回復元された名古屋城が他と大きく異なるのが、その再現度。

  • 名古屋城本丸御殿が焼失したのが近代にあたる戦争末期だったこと
  • 1929年国宝保存法の施行と、 翌1930年に名古屋城天守閣、 本丸御殿などが国宝第一号に指定されたこと
  • 国宝指定当時すでに確立されていた写真技術で撮影されたこと
  • 写真は火災でも焼失しないガラス乾板で撮影され、かつ約700枚もあったこと
  • 詳細な実測図があったこと

忠実に復元するための、これらの見本となるものがあったため、時代考証ではなく、本来の姿そのままに現代に写し取れました。いわば、リアルサイズのジオラマを、現代にも残る当時の工芸技術と本物の素材を使い再現したのです。それは、当時のままに木曽の檜の木を使った土台からという徹底ぶり。

▲ガラス版写真で撮った本丸御殿外観と天守閣(写真左)と再現したもの

▲当時日本にはいなかったため想像で描かれた虎の壁画が入った玄関一之間は、第一期より公開

現代に再現された城のほとんどがコンクリート造りなのに対し、名古屋城本丸御殿は木造建築。そして廊下はすべて本物の檜を使用。そのため、床にカメラなどの機材を置くことは傷になるため厳禁。当時と同じ技法で作られたつなぎ目の金具も触ってはいけません。このような禁止事項は、名古屋城本丸御殿に足を踏み入れる前に映像を用いて解説するなど、徹底されています。

ちなみに、実寸かつ同じ技法で完全に再現するために掛かった費用は150億円。時間だけでなく費用も掛かっています。そのうち、寄付は50億円で、5万円以上寄付した人の名前は芳名板にいれて年度別に入口に掲示されています。

▲入口の芳名板

寄付は1口1000円からできますが、就職や結婚、周年行事等を記念して5万円以上の「檜基金」に寄付する場合は、記念証を用意。「城に名を刻む」をいう権利、自分用やプレゼント用としていかがでしょうか。

 

■新たに公開されたのは上洛殿などの最高級クラスの部屋

名古屋城本丸御殿の復元公開は、3期に分けて段階的に行われました。今回公開された部分は玄関から最も遠く、格式が一番高い部分にあたります。

▲第一期で公開されたのが画像右の玄関から表書院にあたる部分まで。第二期が対面所などの図面中央部分。そして今回公開された上洛殿などは図面の赤い部分

3期部分の完成になぜここまで時間がかかったのか? それは、ほかの箇所とは別次元のまばゆいばかりの金色と極彩色に彩られた豪華な工芸レベルの装飾と、当時の最新技術をすべて取り込んだ細工を再現するためです。

室内の襖絵・天井板絵などは、当時のいわゆるアート集団であった狩野派によるもの。実は焼失する数か月前に名古屋城から退避していたため、1049枚もの実物が残っています。そのため、他に例を見ない復元模写という形での複製が可能でした。

なかでも、江戸幕府将軍が宿泊するために作られた「上洛殿」の贅を極めた様子は必見です。美術館や教科書などで見た襖絵や障壁画が、その空間に入ったときに醸し出す空気はどういったものなのか。圧倒的な存在感や、豪華ななかにも足し引きされ、ただまばゆいだけではない構成で作られていることを感じ取れるはずです。

▲上洛殿 上段之間

▲▼襖の引き戸や柱の釘隠しにも金の細工とともに、三つ葉葵の紋が入っている

 

■豪華絢爛の極み 欄間の美しさは建物に入ってこそ

現代でも伝統的な日本家屋を建築する際に、そして地方によっては家の格を表す部分として特にこだわる欄間も豪華なもののひとつ。部屋の格式に応じてその細工のレベルは上がっていき、上洛殿前の廊下と室内にある彫刻欄間は最高クラス。極彩色の彩色と金箔が施されています。この色彩も、近代まで当時の姿を残したまま保存されていて、かつ写真にも残されていたからこそ再現できたものです。

▲極彩色の欄間は入口側から見て反対が表面

▲上洛殿の廊下の窓側にある欄間は「花狭間格子欄間」。部屋の連続性を表すために用いられているとされている

▲上洛殿の一之間側から奥に上段之間を見ると、一段高くなっているのがわかる。ここにも極彩色の欄間が入れられている

ここまで、いくつもの忠実に再現した名古屋城本丸御殿を紹介してきましたが、実は完全ではない部分もあります。絵が描かれていたことが推察されるものの、それを証明するものが写真に残っていない部分は、あえて金箔のみになっているそう。どこがその部分なのかを探すのもまた一興です。

残念ながら天守閣は耐震強度の問題から現在は非公開となっています。今後、天守閣も木造での再現が予定されているため、本物を見られる城への道はまだこれからも続きます。

>> 名古屋城

 


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(取材・文/北本祐子)

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