そんな中で、キャリアのスマホと同じように、端末と通信サービスをまとめて提供し、困ったときにお店に相談に行ける格安スマホがあります。TSUTAYAなどで販売されている、トーンモバイルの「TONE」というスマホです。
■月額1000円で500〜600kbpsのデータ通信が使い放題
TONEの最大の魅力は、月額1000円(税抜)で使えること。しかも、データ通信は無制限です。一般的に、MVNOの格安SIMは、1カ月に使えるデータ通信量によってプランが異なり、データ通信専用であれば3GBで月額900円(税抜)、音声通話付きなら3GBで月額1600円(税抜)あたりが相場です。
TONEはデータ専用ですが、格安の通話料で電話がかけられるIP電話アプリもプリセットされています。そのIP電話の通話料は、固定電話宛てが13円/3分(税抜)、携帯電話宛てが21円/1分(税抜)。そんなに電話をかけない人であれば、月額2000円でおつりがくるはずです。また、月額953円の追加で、090/080/070番号の電話を使うこともできます。
でも、安さには「理由」があります。TONEはLTEに対応しておらず、3G(ドコモのFOMA)回線を使います。しかも、通信速度は最大500〜600kbps程度に抑えられています。果たして、この速度で快適に使えるのか? 不便を感じることはないのか? 1カ月ほど使ってみた率直なレポートを書かせていただきたいと思います。
■ロースペックのわりには快適に操作できる
TONEのディスプレイは5.5インチ。つまり、iPhone 6s Plusと同じサイズです。iPhoneよりも画面占有率が高いので、少しだけコンパクトな印象。背面がラウンドフォルムなので、大きいわりには手に馴染みやすく感じました。
ただし、画面解像度は960×540ドットと、かなり低め。CPUは1.3GHzのクアッドコアで、RAMは1GB。お世辞にも「ハイスペック」とは言えず、「ミドルクラス」とも言い難いスペックです。すでに、スマホを使ったことがある人には物足りない仕様です。
実際に操作してみると、アプリの起動や切り替え、タッチ操作のレスポンスなどは、悪くもなく良くもなくという印象。「サクサク」「キビキビ」というほどではないけど、不便を感じることもなく、スペックのわりには快適に操作できると言っていいかもしれません。
不思議なことに、使っているうちに慣れるもんですね。TONEを使っていて、たまにiPhone 6sに触れると「iPhone、速すぎ」と思ったりしました(笑)。もちろん、速いほうがいいのですが……。
カメラは背面が800万画素で、前面が200万画素。これは必要十分といえるスペック。画面が大きいので、フレーミングがしやすく、設定画面もわかりやすくので、初めてスマホを使う人でも使いこなせそうです。
■初めての人でも使いこなせる独自の画面構成
TONEは、Android 4.2.2を搭載していますが、独自のカスタマイズを施した画面デザインや操作性を採用しています。一般的なAndroidスマホとは異なるので、筆者はかなり戸惑いました。ですが、逆に、初めてスマホを使う人にはいいかもしれません。
「カメラ」「メール」「調べる」などのアイコンをタップするだけで、お目当ての機能を呼び出せます。設定画面の項目や説明もわかりやすいので、マニュアルを読むことなく、使い方を習得できそうです。
なお、ホーム画面は4種類から選ぶことができ、「android標準ホーム」にしたり、さらにわかりやすい「シンプル」に変更することもできます。
■気になるモバイルでの通信速度は?
筆者も、そしてみなさんも最も気になるのは通信速度でしょう。TONEが安く利用できる理由は、まさにそこにあり、通信速度は500〜600kbpsに制限されます。
3G接続時にブラウザを使うと、やはり画像の読み出しには時間がかかります。「&GP」のようなトップページに画像が多いサイトの場合、テキストはすぐに表示されるのですが、画像は数秒後からジワジワと、といった感じ。ただし、筆者がよく読む某まとめサイトなど、テキストが主体のサイトは、さほどストレスなく閲覧できます。
なお、「地図」アプリは、スムーズに現在地の地図が表示され、かなり快適に使える印象を受けました。
ファイルサイズにもよりますが、アプリのダウンロードは厳しい印象。じ〜っと待つことになるので、Wi-Fi接続時に行うべきです。動画閲覧もモバイルでは厳しいです。
ですが、外出時に大容量通信を行うことって意外と少ないんですよね。自宅や職場ではWi-Fiに接続しているので、外出時に速度不足で不便を感じることは、あまりなかったというのが本音です。
速度測定アプリを使って、実行速度も測ってみました。その結果、意外にも1Mbpsを超える速度を記録することが多かったです。こうしたアプリでの測定値は、必ずしも正確なものではないとは思いますが、LTE対応のスマホでも2〜3Mbps程度しか出ないこともあるので、意外と頑張っているという印象を受けました。
■使う人によっては便利そうな独自機能が充実
TONEには、撮影した写真や、パソコンから取り込んだ音楽やドキュメントなどを一括管理できる「TONE one」というアプリがプリインストールされています。カメラで撮った写真は、自動的にこのTONE oneに入る仕組みです。スマホとパソコンをケーブルにつなげることなく、データのやり取りができ、操作も簡単です。
TONEを使っている最中に、ソフトウェアのアップデートがあり、TONE oneに保存した写真のプリントを注文できる機能も追加されました。このプリントサービスはまだ試していませんが、アップデートによってサービスが拡張されるのは、端末とサービスがパッケージで提供されているTONEならではといえるでしょう。
筆者は独身なので試してみる機会はなかったのですが、子どもが安全に使える機能も備えています。勝手に有料アプリをインストールしないように利用を制限したり、子どもの居場所を確認したりできます。
また、独自の「エアノック」という機能があり、画面に表示された扉のイラストをコンコンとノックするようにタップするだけで、相手の端末が振動して反応するというものです。子どもからコンコンとノックが返ってきたら「大丈夫だよ」という合図になる仕掛け。
ノックする回数によって「いま電話をかけてもいい?」「いまはダメ」といった合図を決めると、便利に使えそうな印象を受けました。
トーンモバイルは、TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブと、従来からMVNO事業を展開していたフリービットの提携で生まれた会社です。利用料に応じてTポイントがたまったり、TSUTAYAのクーポンがもらえたりといった特典も得られます。
■初めてのスマホや、ガラケーと併用する2台目として最適
月額1000円ながら、日常使いには、さほど不便を感じなさそうなTONE。おそらく初めてスマホを使う人であれば十分に満足できるはずです。すでにスマホを使っている人でも、スマホ利用料をとことん節約したいのであれば検討する価値はあるでしょう。なんてったって1000円ですからね。使い勝手に多少不満があっても、その経済性は見逃せません。
筆者もそうですが、新しい機能に目がないガジェット好きには、安いとは言え、物足りなく感じるでしょう。多少利用料が高くなったとしても、LTE対応で、できればフルHDディスプレイを搭載した新モデルの登場を期待したいところです。
個人的にTONEに最も適していると思ったのが、「ガラケーを手放せないがスマホも使ってみたい」というライトユーザー層。通話用としてガラケーを使って、LINEをしたり、地図を見たりする2台目端末としてTONEを使ってみるのはいいかもしれません。月額1000円なので、両親にプレゼントするとしても、さほど負担にはなりませんよね。
【TONE】
CPU:クアッドコア 1.3GHz
ROM/RAM:4GB/1GB
ディスプレイ:5.5インチ(960×540ドット)
カメラ:背面800万画素、前面200万画素
外部メモリ:microSD(最大32GB)
バッテリー容量:2500mAh
Wi-Fi:IEEE 802.11b/g/n
サイズ;W77.5×H151×D9.5mm
質量:189g
価格:2万4000円(税抜)
(文/村元正剛)
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