今年の東京モーターショー2015では、新たな3輪の乗り物が披露されることが発表されました。プジョーやシトロエン、BMW、アプリリア、インディアンなど数多くのブランドの正規ディーラーを展開し、キャンピングカーの架装でも有名なホワイトハウス。
現在、オフロードビークルのポラリスの輸入・販売も手掛けており、ポラリスが生んだ3輪ビークル、“スリングショット”の輸入・販売も開始するというのです。年明けの本格デリバリーに先立ち東京モーターショーでスリングショットが公開されます。
■操作はクルマと一緒みたいだけど……乗り味がまったく想像つかない!
高橋まん(まん):さて、三才さん。これが“スリングショット”ですよ。どうですか? 初対面の印象は。
三才はるな(サンザイ):デカイ!! 3輪のスポーツモデルと聞いていたから小型でバイクに近いものを想像していたのでビックリ……。「タイヤのついた乗り物なら何でも好き♡」なんて自己紹介しちゃったけれど、正直ちょっと引いてます……。果たして私でも運転できるんですかね。
まん:さっきスペックを見たら、全幅は1971mm! フェラーリ488GTB(全幅1952mm)より幅広いの。それでいて後ろが1輪でギュッと締まっているから……エイみたいですよ。モーガンが同じように前2輪、後ろ1輪の3輪ビークルを出しているけれど(モーガン3ホイーラー)、インパクトはそれ以上だね。
サンザイ:ていうか、どうみてもレーシングカーですよ、これ。試乗会に参加しているのもパリ・ダカを走っているドライバーやライダーですよ。私たち、完全に浮いてます……。
まん:……大丈夫。きっとなんとかなるよ、たぶん。
■パワーウエイトレシオはなんと4.5kg/ps!
スリングショットの迫力に完全に負けてしまいましたが、2人の試乗リポートをお届けする前に、車両の概要をお伝えしましょう。
ポラリスインダストリーズはオフロードビークルやスノーモービルなどを手掛けるアメリカのメーカーで、オフロードビークルはすでに日本でも輸入・販売されています。スリングショットはアメリカで2014年7月にデビューしました。
搭載エンジンはGM製2.4L直4DOHC。6200回転で最高出力173hpを発揮します。最大トルクは225N・mです。トランスミッションは5MTのみの設定となります。これだけ聞くと「見た目の割に大したことない?」と感じるかもしれませんね。
でも注目すべきは乾燥重量752.9~763.3kgという車体の軽さ。これによりパワーウエイトレシオは4.5kg/psに達します。ちなみに同程度のモデルを探すと、前期型ポルシェ997カレラ(4.43kg/ps)やアルファロメオ4C(4.58kg/ps)、日本車だと最終型NSXタイプR(4.53kg/ps)などが見つかりました。
ご覧のようにボディはフルオープン。ボディサイドにドアはなく、ベースグレードはフロントシールドすらありません。ヒップポイント高はたったの30cm、ボンネット高は91cmしかないので、乗る前から体感速度が強烈で路面が間近を流れていくのが想像できます。駆動方式はFRですが、動力はプロペラシャフトではなく、バイクのようにベルトで後輪に伝えられます。このベルトはカーボン製でメンテナンスフリーだとか。
グレードはベースグレードと上級グレードとなるSLの2展開。ベースグレードのボディカラーはチタニウムメタリック。SLはボディカラーがレッドパールになるほか、フロントシールド、バックカメラ、Bluetooth対応オーディオなどが備わります。
解説が長くなってしまいましたが、いよいよスリングショットを走らせます。なお今回の試乗はミニサーキットで行われたものの、最高速度が40km/h、時間もタイトで高橋(まん)が2周、三才(サンザイ)が1周しか走れない中でのレポートになることをご了承ください。それでもいろいろと面白い体験ができましたよ!
■FRなのに他で体験したことのないフィーリング
サンザイ:いよいよ私たちが乗る番ですよ! まずはまんさん、お願いします!!
まん:今、かる~く逃げたでしょう。サンザイさんも後でちゃんと乗ってよ。でも外から見たときは車幅に圧倒されたけれど、シートポジションが中央に寄っているから車両感覚を掴みやすいね。
サンザイ:後ろを振り返るとすぐボディエンドで切り立ったフィンが見えるだけ。座っているのがリアタイヤの外側ですからね。やっぱり不思議です。
まん:じゃあ走りますよ。パワーウエイトレシオの数字だけ聞くとガチガチのスポーツモデルかと思ったけれど、クラッチなんかも意外に重たくないや。クルージングを楽しみたいとき、高速に乗るまでの街中も楽に運転できそうです。
サンザイ:今、40km/hくらいですか? やっぱり体感速度がかなり高いですね。
まん:これはベースグレードでシールドがないタイプ。僕はバイクに乗らないから風の感覚がすごく新鮮ですよ。実は普段はオープンカーに乗っているけれど、まったく別物。
サンザイ:スリングショットは法規上ヘルメットを被らなくても走行できますが、万が一の事故だけでなく、風よけや前を走行するクルマからの飛来物などから身を守るためにもヘルメットを被ってほしいですね。
まん:これ、駆動方式はFRでしょう。でもフィーリングは4輪のそれとずいぶん違うんだよね。後ろからぐいぐい押してくれるのはいかにもFRなんだけど、ボディの中心線上にある1点から押されているのがシートに伝わってくるの。この感覚、新しいですよ。コーナリング中はその感覚がより際立ってくる感じ。
サンザイ:私が驚いたのはコーナリング中のロール。このサーキットはミニサーキットでタイトコーナーが続くのに、ボディがほとんどロールしないんですよ。でも硬い足で支えているという感覚ではないの。うまく動きをいなしているのかな。
まん:一度ピットに入るので、交代しよう。
サンザイ:……まんさん、大事件です。シートを一番前まで出してもペダルに足を載せるのがやっとです。クラッチ踏みこめません。ブレーキ、踏めませんっ!!!
まん:えっ……。アメリカ人には大きい人が多いからって、日本人が運転できないっていうのは聞いたことないよ。
サンザイ:でも届かないんだもん(泣)。実はさっきオフロードビークルを試乗させてもらったときもペダルが遠くて背中に浮き輪を挟んで運転したんです……。ううう、浮き輪借りてきます。
まん:サンザイさんの身長は155cmだっけ。そのあたりの身長だとポラリスの設計基準から外れちゃうのかな。
サンザイ:借りてきました! よし、クラッチもブレーキもちゃんと踏めます。じゃあちょっと1人で行ってきますね。
まん:行っちゃいましたよ。楽しいことを目の前にすると自分を抑えられないタイプですね、きっと。(しばらく待っています)帰ってきました。どうでしたか?
サンザイ:おもしろいっっっっ!!!! 見た目から操作がシビアに違いないと思っていたけれど、言葉は悪いですが“普通”に動かせるので純粋に運転を楽しめますね。これって大事ですよ。幅が広いからスタートするまでは緊張したけれど、走り出したら女性でもラク。しかも軽いからアクセルを軽く踏んだだけでドンと出ていくし。凄い!
まん:3輪という特殊性、ラゲッジなどがないから実用的ではないけれど、スポーツカー好きの女性から受けそう?
サンザイ:目立ちたい人は注目するでしょうね。でもヘルメットを被るとファンデーションが落ちるから悩むところですね。私のように体型的に運転が難しい場合もあるだろうし。逆に男性が1人で思い切り走っていると最高に気持ちいいと思います。
というわけでハプニングもありましたが、短い試乗時間でも特殊な乗り味を普通の運転で楽しめることが分かりました。スリングショットは東京モーターショー2015でお披露目された後、年内に普通自動車としてのホモロゲーションを完了させる予定だとか。
価格は発売開始日が決まり次第アナウンスされるそうです。ちなみに本国での販売価格は2万1199ドルから。日本でもこの走りを気軽に楽しめる価格になることを祈りましょう!
<SPECIFICATIONS>
スリングショット(ベースグレード)
ボディサイズ:L3800×W1971×H1381mm
ホイールベース:2667mm
乾燥重量:752.9kg
駆動方式:FR
エンジン:2.4L 直列4気筒DOHC 直噴ターボ
トランスミッション:5速MT
最高出力:173hp/6200rpm
タイヤサイズ:205/50R17(フロント)、265/35R18(リア)
価格:未定
協力/アライヘルメット(http://www.arai.co.jp/)
(文/高橋 満)
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