【アウディA1 1.0 TFSI試乗】品の良さと活発な走りが◎の、オトナの小型ハッチ

フロントマスクが、スポーティ版の「S1」に通じるデザインとなった、ニューA1。従来の1.4リッター直列4気筒ターボのほか、新たに、1リッターモデルがラインナップに加わりました。

ニューカマーである1.0 TFSIのエンジンは、999ccの直列3気筒。フォルクスワーゲン「up!」に用いられるものをベースに、ターボで過給して最高出力95馬力を発生。その上、回転フィールの向上に寄与するバランスシャフトが与えられています。

up!に試乗した時、「最近の3気筒はこんなにも滑らかなのか!」と驚かされたのですから、さらに改良されたA1 1.0 TFSIのエンジンフィールは、推して知るべし。

といっても、退屈な、俗にいう“デッドリー・スムーズ”というフィーリングではありません。なんというか、“粒のそろったビート”を伴った回転フィールがあるんです。スロットルペダルを踏むたびに「精緻に組まれた機械が調子よく動いている感じ」があって、ドライバーはうれしくなります。

最大トルクは、フォルクスワーゲン「ポロ」の1.2リッター直列4気筒ターボエンジンと奇しくも同じ、16.3kg-m。わずか1500回転で最大トルクに達しますから、A1の出足は力強い。“小排気量”も“3気筒”も、気になることはありません。

トランスミッションには、デュアルクラッチ式の7速ATが使われます。オートモード時に感じられがちな、ギヤをチェンジするごとに船を漕ぐような空走感も無縁です。

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A1 1.0 TFSIは、アウディブランドのエントリーモデルなのですが、インテリアがキチンと“アウディクオリティ”に保たれているのも美点です。シックな黒とシルバーで統一されていて、浮ついたところがないのです。

もちろん、カーナビやオーディオを統合制御する“MMI(マルチメディアインターフェイス)”も装着可能。センターコンソールに設けられたダイヤルを回すだけで、サッと地図の表示範囲を大小できるので便利。目的地の設定も簡単です。また、メーターパネルの速度計と回転計の間に、進行方向を矢印でシンプルに表示するなど、このナビは機能面でも過不足なしといえます。

乗り心地も、車内の居心地も、ハンドリングも、全体的に“オトナ”な印象です。ステアリングホイールを握りながら感じたのですが、A1 1.0 TFSIは、初めてアウディを買う人、というよりも、むしろ、これまでさまざまなクルマに乗ってきたオトナが、新たな選択肢として選ぶのに合っている1台かもしれません。
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昨今のコンパクトSUV人気の背景には、大型の高級車を持て余したユーザーが、一般的なコンパクトカーに乗り変えた時にどうも“格落ち感”がぬぐえないことから、ジャンルを変えてSUVにシフトする、という事情があるといいます。

あえてそうしたトレンドに乗っかるのもいいですが、A1 1.0 TFSIのような、ハイクオリティな小型ハッチバックも素敵じゃないでしょうか? ちょっと知的だし、運転ラクだし。

機能や性能だけでなく、バランスの良さや雰囲気、質感に投資する…。そんな選び方ができるのも、クルマの不思議さであり、アウディA1 1.0 TFSIの面白さといえそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆1.0 TFSI
ボディサイズ:L3985×W1740×H1425mm
車重:1120kg
駆動方式:FF
エンジン:999cc 直列3気筒DOHC ターボ
トランスミッション:7速AT(デュアルクラッチ式)
最高出力:95馬力/5000〜5500回転
最大トルク:16.3kg-m/1500〜3500回転
価格:249万円

(文&写真/ダン・アオキ)

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