【三菱 デリカD:5試乗】SUV×ミニバンはコレ一択!夏レジャーのアシにガンガン使える

■デリカに懐かしの特別仕様車“JASPER”が復活!

デリカD:5の特別仕様車であるJASPERが、久しぶりに登場しました。JASPERと聞いて「お、懐かしい!」と思った方は、熱心な“デリカファン”なのでは? そう、3代目デリカの「デリカ スターワゴン」、4代目の「デリカ スペースギア」にも、同じネーミングの特別仕様車が用意されていました。

デリカD:5では初の設定となるJASPERには、数々の専用装備が与えられていますが、まず気づくのは、夏の山や森林をイメージしたという、ディープシーグリーンマイカ×アイガーグレーメタリックの専用ボディカラーでしょうか。色調こそかつてのJASPERとは異なりますが、このグリーン×グレーメタの組み合わせは、往年のデリカにおける定番色でしたから、思わずニヤリとするファンもいらっしゃることでしょう。ちなみに、JASPER専用ではありませんが、ほかに、アイガーグレーメタリック×ダイヤモンドブラックマイカ、ウォームホワイトパール×スリングシルバーメタリックも設定されています。

JASPERは、クリーンディーゼルエンジンを搭載するグレード「D-Powerパッケージ(8人乗り)」をベースとしており、148馬力を発生する排気量2.2リッターの直4ディーゼルターボエンジンや、6速ATといったメカニズムは共通。路面状況に応じ、ダッシュボードのダイヤル式セレクターで「2WD」、前後に適切な駆動力を配分する「4WDオート」、悪路などで強力なトラクションを得られる「4WDロック」の切り替えが可能な電子制御4WDも、ベースモデルから受け継ぎます。また、ASC(スタビリティコントロール機能)やASC(トラクションコントロール)といった電子デバイスも標準装備となっています。

エクステリアにおける専用装備は、山並みと鹿を描いたサイドストライプ&デカールや、メッキ仕上げのフォグランプベゼル、ドアミラー、アウターハンドル、そして、ダーククローム調塗装が施された18インチアルミホイールが挙げられます。

インテリアでは、シート生地が撥水加工を施した専用のスエード調人工皮革“グランリュクス”となるほか、運転席には電動パワーシートを採用。グローブボックスやパワーウインドウスイッチの周りには、ピアノブラックのパネルが装着されます。

といった具合に、JASPERは特別仕様車ではあるものの、標準状態での専用装備は控え目かもしれません。ただし「もっとオフロード感をアピールしたい!」という方には、「コンプリートパッケージ」と呼ばれるディーラーオプションが用意されており、ロゴ入りのカーゴフェンス、荷物を固定できるバンジーコード、ロゴ入りフロアマット、DELICAロゴ入りのバンパープロテクターデカール、そして、赤いマッドフラップの5点がセットになっています。特にマッドフラップは、ドロや小石による車体のキズつきを抑える効果を期待できるのはもちろん、オフロード4WDらしい力強さを演出することができます。

さて、気になる走りはというと、最新のミニバンやSUV的な乗り味とは少々異なる印象です。昨今は、ミニバンやSUVといえども、足回りはやや硬めのセッティングが好まれますし、ステアリングも思いのほかシャープな反応を見せるモデルが少なくありません。

では、デリカD:5はどうかというと、クロスカントリー4WDにも通じる“大らかさ”を感じます。それは決してネガティブな感触ではありませんし、筆者としてはそこに「デリカD:5らしさがある」と思っています。ちなみに、今回のテストドライブでは、東京都内からちょっとしたラフロードを含む田園地帯へと向かいましたが、高速道路でも林道でも「そうそう、コレだよね!」と、思わずニヤリとすることも少なくなかったのです。

2.2リッターのディーゼルターボエンジンを始動すると、室内に「コロコロ…」というディーゼル特有の音を伝えてきますが、意識するほどではありませんし、力強く軽快なビートが心地良くもあります。一方、そのサウンドや、スペック表にある36.7kg-mという最大トルクを思い出すと、強烈なスタートダッシュを期待してしまいますが、実はかなり穏やかなセッティングで、加速感は緩やか。とはいえ、2000回転から2500回転にかけては十分過ぎるほどのトルクがありますから、ここぞ! というダッシュが必要なシーンでは、右足を意識的に深く踏み込むことで、流れをリードすることも可能です。

ちなみに、高速道路で100km/h巡航時のエンジン回転数は、6速ギヤで1800回転ほど。室内の静粛性も十分に保たれています。また、サスペンションのストロークが大きく取られているにも関わらず、ミニバンにありがちな前後方向の不快な揺すられ感は抑えられており、淡々と遠くまで…といった長距離クルージングは得意科目。シートも、しっかりとクッションストロークが確保されていて快適ですし、高めのアイポジションで見晴らしがよく、安心感があります。

とはいえ、デリカD:5が本領を発揮するのは、やはり砂利道などのラフロードでしょう。道なき道を行く、という状況に遭遇する機会は滅多にありませんが、キャンプ場や河川敷などでは、未舗装路や大きめの轍(わだち)があるシーンも珍しくありません。乗用車やコンパクトSUVでは、進むのを躊躇してしまうような場面でも、電子制御4WDと210mmという最低地上高を確保したデリカD:5であれば、臆することなく前進できます。

そして何より、荒れた路面で「良くできているな…」と感心させられたのが“穏やかなセッティング”です。例えば、砂利道でちょっとした障害物を乗り越えたいという時、アクセルペダルの動きにエンジンが過敏に反応すると、小石を巻き上げたり、思わぬ空転を招いたりすることがあります。デリカD:5はそんなシチュエーションでも、エンジン音に耳を傾けつつ、じわりと回転を上げれば、確実に障害を乗り越えることができ、速度でいえば10~20km/hほどで進む際のコントロール性がとても良好なのです。

確かに、オフロード性能がクロスカントリー4WDに準じたレベルであっても、普段使いではなかなか真価を体験できる機会はないのでは? と思われるかもしれませんが、雨や雪といった日常的に遭遇する悪天候時であっても、この扱いやすさは大きな武器となるのは間違いありません。そう、デリカD:5の大らかさや穏やかさは、決して古臭いということではなく、悪条件下での扱いやすさを考慮した“あえて”のセッティングだと思うのです。

さて、そんなデリカD:5もデビューから11年。近年はミニバンといえども、運転支援システムを始めとする数々の電子デバイスを備えたモデルが続々とデビューしており、そうした装備面では他のリードを許しているのは事実かもしれません。とはいえデリカD:5は、歴代「パジェロ」やデリカで培ってきた4WD作りのノウハウがしっかりと注ぎ込まれた、オンリーワンの存在であるのも事実。モデル末期ではありますが、他のミニバンやSUVでは困難でも、デリカD:5ならたどり着ける場所、得られる経験がまだまだありそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆JASPER
ボディサイズ:L4790×W1795×H1870mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc 直列4気筒 ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:148馬力/3500回転
最大トルク:36.7kg-m/1500~2750回転
価格:357万480円

(文&写真/村田尚之)


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