■FR車のような走り味。だから峠道が楽しい!
ステルヴィオのボディサイズは全長4690×全幅1905mmで、まずは400台がリリースされる「ファーストエディション」の価格は689万円。日本車だとレクサス「RX」、輸入車ではメルセデス・ベンツ「GLC」や「GLCクーペ」、ボルボ「XC60」、ポルシェ「マカン」、BMW「X3」、アウディ「Q5」、そして、ステルヴィオと同じくブランド初のSUVとなったジャガー「Fペイス」などがライバルになると、アルファロメオは説明する。
コンパクトSUVの多くが“新感覚”をアピールするのとは対照的に、このクラスのSUVの多くに共通するのは、スポーティ感の演出。それは、現時点で最後発のステルヴィオも同様で、プロポーションはノーズの長さを強調した伝統的なスポーティスタイル。ホイールベースを2820mmと長く採る一方、フロントのオーバーハングを短くして躍動感を生んでいる。
もちろん、エクステリアデザインにはアルファならではの雰囲気が満ちていて、見る者の期待を裏切らない。伝統の盾形グリルを組み合わせた大胆なフロントマスクから、鍛えた筋肉をイメージさせるリアフェンダーの張り出しまで、造形はどこを見てもアルファらしさに満ちあふれる。マカンやX3といった定番モデルではなく、新参者である“アルファのSUV”を買うとなると相応の理由づけ欲しくなるところだが、ステルビオのデザインはその期待に応えている。アルファロメオはSUVカテゴリーへ参入するに当たり、自分たちに期待されていることをしっかり理解して開発してきたのだろう。
アルファロメオに対し、スタイリングと並んでもうひとつ期待されることといえば、なんといっても走りだろう。今回は、ワインディングロードを中心にステルヴィオを試乗したが、走りの印象は実にアルファらしいものだった。飛び切りスポーティで、掛け値なしにスポーツカーのような走りを楽しませてくれたのだ。
走り出してすぐに感じたのは、軽快感。クルマの軽さだ。車両重量は1810kgだから決して軽い部類ではないが、カタログ上の数値が信じられないほどに、動きが軽快。ステアリングをスッと切ると、ドライバーの操作に対して機敏かつ忠実にステルヴィオは向きを変える。かといって、無理やり仕立てたかのような過敏さはなく、終始スムーズなのだから、さすがだ。
これは、前後の重量配分やロール軸の設定など、クルマの運動性能を左右する根本的な要素が優れていることの証だ。プラットフォームは、スポーツセダンの「ジュリア」にも使われる“GIORGIO(ジョルジオ)”と呼ばれるタイプで、エンジンを縦置きに配置とするFRベースの4WD。そのスポーツ性がステルヴィオにもしっかり受け継がれていて、SUV化に伴って着座位置(ジュリア比でプラス190mm)や重心高は上がっているが、ロール軸の位置はジュリアと同一。さらに前後の重量配分は50:50(車検証記載の軸重は前軸910kg:後軸900kg)で、さらにロール角は同クラスで最も少ない、といったスペックを見るだけでも、かなり走りを意識したクルマであることが分かる。
実際、運転していてもその効果はしっかりと感じられ、アイポイントやドライビングポジションこそSUV的だが、峠道に入ると、ハンドリングの印象はまるでスポーツカー。どこまでも曲がり続けたくなるような気持ち良さだ。
もうひとつ強調したいのは、ステルヴィオの走りには、リアタイヤで大地を蹴る感覚が盛り込まれていたこと。ステルヴィオは4輪駆動だが、走行状況に応じてアクティブに前後トルクを可変させるシステムを採用。タイヤのスリップがなければリアタイヤへ100%のトルクを送る、FR(後輪駆動)を基本とするものだ。
実際、峠道において、コーナリングの後半にジワリとアクセルペダルを踏んでいくと、後輪が気持ちよく大地を蹴り、ニュートラルなハンドリング特性を披露する。SUVでありながら、このFR(正確にはFRベースのオンデマンド式4WD)ならではの感覚を味わえるのは、アルファならではである。ちなみに腕さえあれば、さらにそこからアクセルを踏み込んでテールスライドへと持ち込めるし、状況に応じて最大60%のトルクを前輪へと送るから、挙動も安定する。まさに、FR車の楽しさを備えたSUVなのだ。
もちろん、エンジンのフィーリングも気持ちがいい。ファーストエディションには、280馬力を発生する2リッターのターボエンジンを搭載。“アルファDNA”と呼ばれるドライブモードセレクターを一番おとなしい「a(アドバンスドエフィシェンシー)」に設定しても、アクセル操作に対するスロットル開度を抑え気味にする印象は全く感じられず活発に走るし、最も元気な「d(ダイナミック)」にすれば、タコメーターの針が吸い寄せられるように跳ね上がるから、ついつい気持ちが高ぶってアクセルを深く踏み込んでしまう。アルファロメオはSUVであっても、やはり走りの楽しさが詰まっているのだ。
ちなみにステルヴィオとは、イタリア北部のアルプス山中にある、48ものヘアピンカーブが続くステルヴィオ峠から名づけられたネーミング。その峠道を激しく楽しめるクルマという意味を込めての命名だが、ステルヴィオはSUVでありながら、その名に見合う爽快な走りを身に着けていた。
とはいえ、走りがいかに楽しいとしても、それは単に、ドライバーが魅力的に感じるだけの話。SUVとして見れば、決して優れたクルマとはいえないだろう。その点ステルヴィオは、いい意味で期待を裏切ってくれた。まず、前後シートともにしっかりとしたヘッドクリアランスが確保されているとともに、リアシートのヒザ回りのスペースも、十分に広くて居住性が高い。その上、乗り心地が良いから、運転席以外のシートに座っても、移動が快適なのだ。
さらに、ラゲッジスペースの容量は525Lと十分なサイズ。リアシートの背もたれは40:20:40の3分割で倒れ、倒した際に荷室床面に段差が生じない点もユーザー思いだ。
惜しいのは、カーナビゲーションが組み込まれていないことくらいだろうか。8.8インチの横長ディスプレイは標準装備されるが、ナビは手持ちのスマホを接続し、Apple CarplayもしくはAndroid Autoを活用することになる。この当たりは、その分のコストは走りに費やす、という、アルファならではの割り切りなのかもしれない。
SUVに何を求めるか? その答えは人それぞれだろう。もし、走りの気持ち良さや爽快感、そして、高揚感を得たいなら、ステルヴィオは間違いなくおすすめできる1台だ。現時点では、ファーストエディションだけの設定だが、2018年の第4四半期には、2リッターエンジンを積む「ベースグレード」と、それをベースとした「ラグジュアリーパッケージ」、「スポーツパッケージ」が加わる予定。さらに、510馬力を発生する2.9リッターV6エンジンを積むハイパフォーマンスモデル「クアドリフォリオ」の上陸も予定されている。いずれにしろ、走りでSUVを選ぶなら、ステルヴィオは真っ先に試してもらいたい1台だ。
<SPECIFICATIONS>
☆ファーストエディション
ボディサイズ:L4690×W1905×H1680mm
車重:1810kg
駆動方式:AWD
エンジン:1995cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8AT
最高出力:280馬力/5250回転
最大トルク:40.8kg-m/2250回転
価格:689万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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