さらに奥に入ると参拝所がある。日本のお寺や神社とはまた作法が異なるので注意が必要。とはいえ、立て札に台湾式のお参りの仕方が書いてあるので、それに従うだけでいい。赤い絨毯に跪き、頭を3回下げる、これを3回繰り返す。さらにこれを順番通り四方に向かって行うことで、仰天宮でのお参りは完了だ。日本の神社同様に、おみくじなども楽しめる。
関帝廟は日本にも中華街などにあるが、台湾の行天宮はさらに規模が大きく、雰囲気も楽しめる。また、時間があると大きな道だけでなく1本裏の道を歩いてみると、地元の人が拝んでいる小さな廟に出会うことができる。
颯爽と歩くきれいなお姉さんが、さっと廟の中に入り、しっかりと拝んで出て行くところなどを見ると、関帝廟や孔子廟などが、台湾の人の生活に溶け込んでいるのがわかる。歴史の授業や漫画、小説などで出会った中国史の登場人物が、より身近に感じられるようになるはずだ。
中国史を知るために今回、もうひとつ訪れたい場所があった。それが「故宮博物館」だ。故宮博物館は台北駅からやや北にいった郊外にあり、これまで仕事で訪れたときは行くことができなかった。
しかし、昼から食べっぱなしで胃袋がいっぱいになった今、故宮博物館に行かない理由はない。MRT行天宮駅から地下鉄に乗り、MRT士林駅へ移動する。士林駅からはローカルバスに乗るか、タクシーという選択肢がある。行きは時間を節約するためにタクシーを利用した。士林駅から故宮博物館までタクシーで110元(440円)ほど。メーターではなく、メモで金額を提示されたので、ほぼ固定料金を取っているようだ。バスは時間がかかる上、ルート上に大学もあるため、バス車内も非常に混み合う。基本的にはタクシーがオススメだ。
故宮博物館の入場料は250元(1000円)。さらに日本語による解説が聞けるレシーバーは100元(400円)だ。故宮博物館は、イギリスの大英博物館と並ぶ世界最大級のコレクションを有しているという。今回は、2時間ほどしか時間がとれないこともあり、解説はなしでざっと回ることにした。
しかし、それにしても内部は広く、そして紀元前から始皇帝、三国時代、宋や唐など中国の各王朝が持っていた秘蔵のコレクションを実際に見て楽しむことができた。比較的急ぎ足で見ていたこともあり、途中で足も頭も疲れてしまって、休んだほどだ。
故宮博物館をざっとではあるが、一通り見て回ったら、さすがにお腹もすいてきた。帰国前に最後の食事を楽しもう。そもそも、夕方に故宮博物館に来たのには、最寄り駅である士林エリアに台北が誇る夜市のひとつ、「士林夜市」があるためなのだ。
■最後に台北一番の楽しみである夜市をはしごする!
故宮博物館を出たあと、バスでMRT士林駅に向かい、そこから士林夜市へと歩いた。実際には、MRT士林駅の隣のMRT捷運劍潭の方が夜市には近いため、時間や体力を優先するなら、タクシーなどで移動するか、MRTにひと駅乗った方がいいかもしれない。
夜市のエリアにさしかかると、人だかりが一気に増し、夜店とそれに並ぶ人々の行列が見えてくる。
屋台は飲食店が中心だが、一部には射的などの屋台もある。昔の士林夜市はもっと渾然一体としたアジアの雰囲気が強かったのだが、数年前に飲食店街が夜市の地下エリアにまとめられたため、昔ほどの猥雑感はなくなっている。しかし、その分、歩きやすくなっている。
士林夜市ではいくつかのフードを楽しんだ。まずは屋台で買った「胡椒餅」。かなり胡椒がきいた肉餡が入った、焼き肉まんのような食べ物で、ビールが進みそうな味。ひとつ50元(200円)だ。
続いて、食べたのが「大腸包小腸」。ホットドックのような食べ物で、ちょっと甘めの腸詰めをもち米入りのソーセージで包んでいる。もちもち食感と台湾ならではのスパイシーさ、そして腸詰めの甘さが一体化しているのが特徴。好みはありそうだが、個人的にはまた食べたいと思った。これも50元(約200円)
地上の屋台街をちょっと歩いて、MRT捷運劍潭駅に近づくと、地下の食堂街への入り口がある。ちょっと深めの地下食堂街に入ると、デパ地下のような空間に、昔ながらの台湾の屋台風飲食店が広がる。
食堂街では海鮮から、肉類、麺類など様々なメニューが楽しめる。ここに来るだけで、台湾のB級グルメの大半を味わうことができそうだ。ここでは台北名物の「牡蠣のオムレツ」をいただいた。小ぶりの牡蠣4つ、5つを野菜や卵で閉じて、甘いソースをかけたメニューは、シンプルながら日本ではあまり出会えない味付けと食感。ビールもご飯もどちらも合いそう味だ。
士林夜市でフードを楽しんだところで、時刻は20時前。帰りのフライトが24時30分なので、23時30分にはチェックインが必要。余裕を見て22時前には桃園国際空港行きのバスに乗っておきたい。そうなると、残りの時間はわずか2時間だ。
そこで、絶対に行きたいと思っていた店に行くため、MRT捷運劍潭駅へ移動し、MRTに乗って、MRT雙連駅へ移動する。そこれから徒歩3分ほど。見えてくるのが、最高においしいマンゴ-かき氷が食べられる「冰讃(ピンザン)」だ。
このとき、実はまだどきどきしていた。実はこの店、マンゴーの季節が終わると閉店してしまうのだ。店が開いているということはマンゴーかき氷が食べられるということ。毎年10月の中旬には閉じてしまうらしい。
注文したのはもちろんマンゴーと練乳がかかった「芒果雪花冰」100元(約400円)。マンゴーのフレッシュな食感と、きめ細かく削られたかき氷、そして練乳の優しい甘さ。このクォリティのマンゴーかき氷が約400円で食べられるなら、これから台湾に滞在するときは雙連駅そばを選びたいとさえ、思ってしまうレベルなのだ。
かき氷で締めて満足しながら、台北駅へ向かう。MRT雙連駅のそばには、寧夏夜市があるため、そこを歩きながら最後の台湾の夜市の雰囲気を味わうといいだろう。
財布とお腹に相談すると、もう一軒ぐらい大丈夫だったので、寧夏夜市で最後に〆のご飯を食べることに。最後に魯肉飯はちょっと重いので、最近の好みである鶏肉飯が食べられる店に入った。濃厚な味わいの魯肉飯と比べて、鶏肉飯は優しい味。そして最後に冬瓜のスープも注文した。実は台湾はスープが旨いのだ。
これらを食べたあと、MRT中山駅から地下鉄に乗り、台北駅へ移動。そしてバスターミナルから、桃園国際空港行きに乗る。バスターミナルが非常に混んでいたため、乗れるか!? とちょっと焦ったのだが、混んでいたのは台南行きなど別の路線で、空港行きは待つこともなく、すぐに乗ることができた(150元)。
そしてバスに揺られて1時間。約12時間ぶりに桃園国際空港に戻ってきた。22時過ぎにはチェックインカウンターは長い行列ができていた。その行列に並びチェックインを済ませ、すぐに出国。残念ながら、23時頃には出国エリアの飲食店、お土産物店はほぼ閉店。特に時間をつぶせる施設などもなく、出国ゲートにたどり着いた。行きのフライトの1時間程度の仮眠を除くとすでに20時間以上起きている。さらに歩数計は2万歩を超えていた。
24時過ぎに帰りの搭乗がスタート。飛行機に乗り込んだら、ほとんど記憶をなくしていた。気づいた頃には、羽田到着直前だった。フライトは約3時間半。時差があるため、日本には朝の4時半頃に到着した。自宅を出発して25時間だ。
Peachの弾丸ツアーは、まさしく弾丸だった。1日で飲食店を6軒、屋台を2軒はしごした。マンゴーかき氷も2杯も食べてしまった。これほどまでに濃厚な台湾を味わったのはさすがに初めてだ。
しかし、これに懲りたかといえばそうではない。頭の中では次の1日弾丸プランが次々と浮かんでくる。朝からずっと故宮博物館にこもるのもいい。そのときは日本語説明をひとつずつゆっくりと聞こう。また、台北を離れて、九フンに行くのもいい。某アニメのモデルというのは残念ながら本当ではないらしいが、それでも雰囲気は楽しめそうだ。
今回かかったのはエア代が1万2000円。予約手数料は往復で880円(モバイルサイト・クレジット払いの場合)、空港使用料が4570円。羽田空港の駐車場代が2400円。空港までの高速代が930円×往復。そして現地での移動、食事などの総額が約1万円で、総額約3万円の旅だった。0泊2日で3万円。これは十分に楽しめる。
Peachの弾丸ツアーは12月18日まで利用できる(販売期間は12月15日まで)。できればあと1、2回、台湾を楽しみたい。
(取材・文/コヤマタカヒロ)
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