■普段乗りでの気持ち良さはロードスターに匹敵
正式発表されたカローラスポーツのパワーユニットは、1.8リッターエンジンにモーターを組み合わせた「プリウス」譲りのハイブリッドと、1.2リッターガソリンターボの2種類。(現在のところ)普通の自然吸気エンジンは用意されない。駆動方式はハイブリッドがFFのみで、ターボはFFと4WDから選択可能。なお、ガソリン車のトランスミッションは、CVTに加えて6速MTも追加予定となっている。
グレードは、ベーシックな「ハイブリッドG」とガソリンターボの「G」を中心に、タイヤを15インチにし、メッキやシルバーの装飾を簡略化して内外装をシンプルに仕立てたベーシックグレード「ハイブリッドG“X”」と「G“X”」、逆に、18インチタイヤ、スポーツシート、上級タイプのメーターなどを追加したアッパーグレードの「ハイブリッドG“Z”」と「G“Z”」をラインナップ。ガソリンターボFFモデルの価格帯は213万8500円〜241万9200円と、国内における同クラスのトップセラー、スバル「インプレッサスポーツ」の2リッターモデル(FF)とほぼ同じ。つまり、その辺りのモデルを、相当ライバル視していることが分かる。
個人的な主観だが、カローラスポーツのデザインはなかなかカッコいい。大胆に口を開いたフロントマスクにおけるトヨタの統一デザインテーマ“キーンルック”に無理やり感がなく、周囲の意匠が過激なヘッドランプ形状としっかり調和がとれている。デザイン担当者は「初期のデザインスケッチに実車をいかに近づけるかを重要視した」というが、その成果をしっかり感じられる。この感じだと、2019年にデビューするとウワサされる「カローラ」の次期セダンやワゴンのデザインにも期待できそうだ。
まず試乗したのは、1.2リッターターボを搭載するGのFF仕様。結論からいうと「トヨタ、どうしちゃったの!?」といいたくなるくらいの出来栄え。なんとも走りが爽快で、気持ちいいのである。
プロトタイプにサーキットで試乗した時も、素性の良さを感じていたけれど、公道で乗ってみたら、違った意味でのとびきりの良さが見えてきたのだ。その良さとは“等身大の心地良さ”。一般的に、優れたハンドリングというと、シャープな回頭性や旋回中の安定感、それから、コーナリング速度の高さなどをイメージしがちだが、実はそれらがすべてではない。日常的な速度域でも感じられる、スーッと自然にクルマが向きを変える感じ、自分の思いどおりに曲がるナチュラルなハンドリングフィール、しなやかな挙動…。そういった、交差点を普通の速度で曲がるだけで感じられる気持ち良さをカローラスポーツからは感じられて、とにかく爽快な印象なのだ。
この日常領域での心地良さ、以前にも感じたことがあったな…と思い返してみたら、マツダ「ロードスター」と走りと同じ感覚だった。速いとか馬力があるといった、非日常的な走行性能を求めるのではなく、毎日乗る際に感じられる楽しさ…。カローラスポーツ Gの走りには、そんな、ロードスターの走りと同じ匂いがする。だから冒頭のように、5ドアハッチバック界のロードスターと称したくなるのだ。
1.2リッターターボは、過激な速さこそないけれど、十分頼りになる速さを提供してくれる。最大トルクは18.9kgf・mと、1.8リッターの自然吸気エンジンと同じくらい。しかしターボ過給のおかげで、わずか1500回転から最大トルクを発生するので、街中の加速などでは、1.8リッターの自然吸気エンジンより力強く感じる。
続いて、18インチタイヤを履く上級仕様のハイブリッドG“Z”に試乗した。かつてのハイブリッド車のように、アクセルペダルを踏み込んだ際、エンジン回転が先に上がり、ワンテンポ遅れてから加速するといった感覚はかなり控えめ。そうしたフィーリングは、効率面の追求には貢献していたけれど、ドライバーにとっては違和感があった。その点トヨタは、カローラスポーツのハイブリッド仕様の味つけを、ドライバビリティに振ってきたことがうかがえる。
試乗車は、18インチタイヤを履くだけでなく“AVS”と呼ばれる、状況に応じてショックアブソーバーの硬さを変化させる電子制御サスペンションが装着されていた。どちらの作用かは分からない(もしくは両方の効果かもしれない)が、16インチの標準サスペンションを装着するG系のグレードに比べると、足回りを締め上げられた印象が強い。高い速度域や限界領域での安定感こそ増しているが、日常領域で味わえる爽快感は控えめな印象。どちらもしっかり作り込まれているので、あくまで好みの話になるが、個人的には、標準サスペンション+16インチタイヤの方が、魅力的に感じた。
とはいえ装備面から見ると、G“Z”系のスポーツシートは、性能面だけでなく見た目からしても魅力的だし、7インチの大きな液晶ディスプレイを組み合わせたメーターも欲しいところ。そして何より、18インチタイヤを履いたスタイリングはカッコいい。しかも、それでいてG系との価格差はわずか約16万円というのだから、G“Z”系の魅力はかなり高い。走りはG系がいいけれど、装備を考えるとG“Z”系…。もし買うとなったら、かなり悩むことになりそうだ。
ちなみに、トヨタが大々的にアピールする“コネクテッド”機能に関しては“DCM”と呼ばれる車載通信ユニットを全グレードに標準搭載するなど、カローラスポーツでもこれまでにない新たな試みが盛り込まれている。
これにより、緊急通報サービス、車両異常時における販売店やコールセンサー(車両情報が送られる)からのアドバイス、ドアロックの開閉などを離れた場所からスマホで確認できるサービスなどを、ナビの接続なしに利用できる。とはいえ、ユーザーとして利便性が高いオペレーターサービス(オペレーターがナビ設定やお店探し&予約などをしてくれる)、音声対話サービス、LINEマイカーアカウント(LINEのトークで目的地設定などが行える)などの機能は、純正ナビゲーションの装着が必要。せっかくのコネクテッドカーを有効活用したいなら、ディーラーオプションで用意される純正ナビの装着をお勧めする。
デザイン、走り、機能と、全方位的にトヨタの変化を感じられたカローラスポーツ。カッコ良くて、気持ち良く走れるCセグメントのハッチバックが欲しいなら、選んで間違いのない選択だ。
<SPECIFICATIONS>
☆G(2WD)
ボディサイズ:L4375×W1790×H1460mm
車重:1310kg
駆動方式:FF
エンジン:1196cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:116馬力/5200~5600回転
最大トルク:18.9kgf・m/1500~4000回転
価格:225万7200円
<SPECIFICATIONS>
☆ハイブリッドG“Z”
ボディサイズ:L4375×W1790×H1460mm
車重:1400kg
駆動方式:FF
エンジン:1797cc 直列4気筒 DOHC + モーター
トランスミッション:電気式無段変速機
エンジン最高出力:98馬力/5200回転
エンジン最大トルク:14.5kgf・m/3600回転
モーター最高出力:72馬力
モーター最大トルク:16.6kgf・m
価格:268万9200円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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