【BMW X2試乗】見た目重視ならコチラ!スタイルと機能が調和したBMWの意欲作

■新たなチャレンジから生まれたX1のオルタナティブ

まずはちょっと、自動車メディア的な視点でX2を解説してみましょう。

X2は、BMWのコンパクトSUV「X1」の派生車種にして、よりスタイリッシュなデザインを与えられたモデル。先に登場した2代目のX1は、モデルチェンジによって先代の“シャコタカ”ワゴン風から一転、ググッと本格SUVのルックスを手に入れました。

また、FR(後輪駆動)からFF(前輪駆動)プラットフォームに車台を切り替えたことによって、より効率的な空間利用が可能に。具体的には、室内(特にリアシート)が広くなり、ラゲッジスペースの使い勝手が向上しています。新しいX1は、四角めのボディに家族を乗せたり、友達を呼んだりして、みんなでワイワイ出掛ける…。そんなイメージのSUVになったのです。

ただ、ユーザーというのはわがままなもの。「便利なだけでなく、もっとプレミアムブランドらしいスペシャル感が欲しい!」と感じる人も出てきます。ご存知のように、BMWは老舗ブランドらしく、この手の顧客ニーズに対して体系的に対応しています。セダン、ステーションワゴンといった伝統的かつ実用寄りのクルマにはモデル名に奇数番号を与え、クーペを筆頭に、デザイン重視、スペシャリティに振ったクルマには同じく偶数番号を付与して、クルマのラインナップを整えています。つまり、実用的なX1に対し、同じく4ドアながら、よりスタイルを重視したニューモデルがX2というわけです。

X2のホイールベースは、X1と同じ2670mm。全長4375mm、全幅1825mmと、X1より80mm短く、5mm幅広いボディを載せます。注目すべきは全高で、X1の1610mmから1535mmへと低められました。都市部に多い一般的な機械式駐車場に収まる高さになり、スタイルのみならず、実用面からもシティ派となりました。

背が低くなると心配になるのが、特にリアシートの居住性ですが、シートの着座位置をやや下げることで対応。X1に劣らぬ居住スペースを確保しています。実際に座ってみると、個人的には座面の低さよりも、シートクッションの前後長が短いのが気になりましたが、確かに空間的な余裕はあります。ヘッドクリアランスも十分。ドアを4枚残していることからも分かるように、X2は、極端にパーソナルユースに振ったクルマではありません。

ちなみに、X1をチェックした時に感銘を受けた2重底のトランクルームを、X2も採用しています。パッと見、ほどほどの荷室容量に見えますが、床下に深く広いスペースが確保されていて、使い勝手をアップしています。

都会派SACたるX2は、X1との差別化のためもあって、デザイン上も細かく工夫されています。基本的なプロポーションの変化に加え、細部ではBMWの個性である“キドニーグリル”の形状が、X2独自のやや下ぶくれの幅広デザインとなり、CピラーにはBMWのプロペラマークが貼られ、LEDランプを使ったリアのコンビネーションライトも専用仕様となります。それでも、偶数番号を与えられたBMWのスペシャルSUVと見ると、X2、アイデンティティ面ではちょっと弱いかな…。

そんな懸念を払拭するためか、日本向けには、ノーマル外観のX2に加えて、「Mスポーツ」ならぬ、「MスポーツX」仕様も輸入されることになりました。ボディの前後左右に特別なバンパー、空力パーツを装着して外観を派手めに飾り、オプションで20インチホイールも用意した、Xことエクストリーム・バージョンです(本国ではスポーティなMスポーツもラインナップされますが、こちらの輸入は今回はパスされました)。

試乗車として用意されたのは「X2 xDrive20i MスポーツX」。ピレリの「P ZERO」タイヤを巻いた20インチのアロイホイールを履いています。ドアを開けてドライバーズシートに座ると、そこには見慣れたBMWの世界が広がります。インパネ周りの造形は、基本的にX1を踏襲したもの。とはいえ、Xバージョンのそれは、フローズングレーがアクセントカラーとして使用され、全体にクールな印象になっています。黄色のステッチが施されたファブリック+アルカンタラのコンビネーションシートも贅沢でスポーティ。また、MスポーツXは、ステアリングホイールのカタチがスタンダードモデルより柔らかい印象です。

X2に搭載されるエンジンは、1.5リッター直3ターボ(140馬力/22.4kgf-m)と、試乗車に積まれた2リッター直4ターボ(192馬力/28.6kgf-m)の2種類。いずれもガソリンユニットで、アウトプットはX1と変わりません。トランスミッションは、前者にツインクラッチ式の7速DCT、後者には8速ATが組み合わされます。駆動方式は、1.5リッターモデルがFF、2リッターが4WDとなります。

価格は、1.5リッター3気筒のスタンダードモデルが436万円。MスポーツXが481万円。2リッター4気筒では、それぞれ474万円と515万円のプライスタグが付きます。X1と比較すると、16〜18万円ほどお高い設定です。

X2 xDrive20i MスポーツXのドライブフィールは、予想以上にスポーティなもの。ステアリングを切った時のレスポンスはシャープで、ドライバーの操作に「待ってました!」とばかりにクルマが反応します。MスポーツX仕様は、硬めのスプリングとダンパーをチョイスした“Mスポーツサスペンション”を標準装備。また、試乗車はオプションの20インチタイヤを装着していたこともあって、路面によっては細かい突き上げが気になる場面もありました。乗り心地を考慮するなら、もしかしたら17インチを履くスタンダードモデルの方がいいのかもしれません(当日、試乗車はありませんでした)。

20インチを履いた20i MスポーツXは、全体的に少しばかり過敏な性格。なので、BMW独自の“ドライビング・パフォーマンス・コントロール・スイッチ”を使って、ドライブモードを標準の「コンフォート」から、よりアグレッシブな「スポーツ」に設定した方が“スポーティSUV”と割り切れて、むしろ落ち着いてステアリングホイールを握っていられます。

一方、FFベースのプラットフォームを使ったニューモデルながら、クルマ全体のバランスは優れていて、少しばかりムチを入れてもハンドリングに破綻はありません。試乗車は、電制多板クラッチを用いた4輪駆動システムを採っていることもあって、FF車であることを匂わせる、ステアリングへの駆動力の干渉は感じませんでした。

新しいX2は、X1のオルタナティブ。人とはちょっと違うコンパクトSUVに乗りたくて、X2のデザインが気に入ったなら購入すればいい…と、シンプルに締めたいところですが、BMWはもう少し、野心的な役割をX2に与えたいようです。それは、BMWブランド若返りの起爆剤(!)。

「Unfollowー自ら道を切り拓く者へ」をテーマに、タレントの香取慎吾をイメージキャラクター…じゃなかった、ブランドフレンドに任命し、新しいプロモーションを試みています。さまざまな束縛を振り切って、荒野でX2と邂逅する…そんなプロモーションフィルムを、動画サイトでご覧になった方も多いのでは? これまでにないBMWの新しいチャレンジ。「X2に幸多かれ」と祈らずにはいられません。

<SPECIFICATION>
☆xDrive20i MスポーツX
ボディサイズ:L4375×W1825×H1535mm
車重:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:1998cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:192馬力/5000回転
最大トルク:28.6kgf-m/1350〜4600回転
価格:515万円

(文&写真/ダン・アオキ)


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