【スズキ ジムニー試乗】走り?デザイン?人気爆発の秘密はどこに:河口まなぶの眼

■さらに色濃くなったジムニーならではの世界観

20年ぶりに生まれ変わったことで、新型ジムニーの本格オフローダーとしての機能性や走破性の高さ、そして、オフロードでの使い勝手などは、当然のごとく、これまで以上のものへと進化を遂げた。

特に今回のフルモデルチェンジでは、ジムニーもついに電子デバイスを手に入れた。その一例が“ブレーキLSD”と呼ばれる新機能だ。ESP(車両制御安定装置)を活用することで、例えばオフロードで1輪が地面から離れて浮いた状態になっても、その1輪にブレーキをかけて空転を止め、残りの接地しているタイヤへ駆動力を伝えて脱出しやすいように配慮している。その結果、より簡単にオフロードを走破できる性能を手に入れたというわけだ。

通常の道路を走らせた際には、現代の自動車とは少し異なるフィーリングを伝えてくる。なぜならジムニーは、いわゆる乗用車が採用するモノコックボディ構造ではなく、トラックなどと同じく、ラダーフレーム上にボディを架装するという構造を持つ。それだけに、通常の道路を走らせた際には、乗用車とは少々感触が異なるのである。

高速域での安定性や乗り心地は、当然ながら乗用車の方が良い。とはいえ新型ジムニーは、伝統のフレーム構造を採用したクルマでありながら、現代のクルマと呼ぶにふさわしい乗り心地や快適性、そして安定性も備えている。つまり、20年ぶりのフルモデルチェンジが功を奏し、いい意味でいわゆる“乗用車に近い感覚”を手に入れたわけだ。もちろん、現代の乗用車と比べると、やはり独特の感覚は少し残っていて、カーブを曲がる際には車体が傾くし、ハンドル操作に対しても穏やかな反応を見せるなど、いかにもジムニーらしい部分は残っている。

新型ジムニーは、そのデザインでこれまでとは全く異なるユーザーを振り向かせたことに加えて、走りや中身においても、いい意味での“一般性”を手に入れたことで、今までとは違うユーザーを取り込めるプロダクトに進化した。そんな新型ジムニーで、筆者が高く評価しているのは、ジムニーならではの世界観が色濃いことだ。

現在の自動車は便利で快適になり、また、ハイブリッドカーや電気自動車が当たり前の存在になりつつある。そして同時に、自動車は進化して便利で快適で安全になったのと引き換えに、価格も徐々に高くなりつつある。

そうした中にあって、新型ジムニーは日本特有の軽自動車規格のクルマであり、比較的安価な部類に属しながら、ジムニーでしか実現できない固有の機能と、そこから生まれる世界観を有し、まさに他に代わるもののない1台になった。

最近の自動車の、天井知らずの進化には驚かされるばかりだが、そんな中にあってジムニーのような存在には、どこかホッとさせられるのも事実。こんな風に肩のチカラがいい具合に抜けた最新モデルというのは、探してもなかなか見つけることはできない。まさにこの辺りに、新型ジムニーが多くの人から注目され、話題となり、人気を集めたことの秘密があるのではないだろうか。

<SPECIFICATIONS>
☆ジムニー XC(5速MT)
ボディサイズ:L3395×W1475×H1725mm
車重:1030kg
駆動方式:4WD(パートタイム式)
エンジン:658cc 直列3気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:5速MT
最高出力:64馬力/6000回転
最大トルク:9.8kgf-m/3500回転
価格:174万4200円

(文/河口まなぶ 写真/村田尚之)


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