【マツダ CX-5試乗】わずか1年で大幅改良!新エンジンはよりスムーズでパワフルに

■作動していることに気づかない気筒休止機構

CX-5に用意される3タイプのエンジンのうち、変化が大きかったのは2.5リッターのガソリンエンジンと2.2リッターのディーゼルターボ。いずれも進化の伸び代が大きいから、従来型オーナーはきっと悔しがっていることと思う。けれどクルマも、PCやスマホと同様、機能がアップデートしていくべき商品。その点マツダ車の場合、積極的にバージョンアップしていく傾向が強い。その姿勢は素晴らしいが、ユーザーにとっては、ある意味、買い時を見極めるのが難しいブランドともいえる。

まず、新しい2.5リッターガソリンエンジンのトピックは、マツダ初の“気筒休止”機能を搭載してきたこと。これは、一定速度での巡航など、エンジンにかかる負担が小さい時に、4つあるシリンダーのうち、ふたつの燃焼を停止させる機構で、実質的に2気筒エンジンとして働くので、燃料消費を減らせるという仕組みである。カタログに記載されるJC08モード燃費の値に変化はないが、全域でのトルクアップ効果もあって、実際の使用シーンでは燃費向上を期待できるはずだ。

気筒休止機構で気になるのは、4気筒と2気筒とを切り替える際、ギクシャクしないのか? ということ。というわけで、その点を念入りに、意地悪なほどじっくりチェックしてみたが、結果は、自分が鈍感になったのかと思ってしまうくらい、切り替えポイントが全く分からず。働きに関して文句のつけどころはないが、それがあまりにもスムーズ過ぎて、逆に本当に作動しているのか疑いたくなるほどだった。

とはいえ、せっかく素晴らしい機構がついているにも関わらず、オーナーにその状況が伝わらないのは残念だ。だから例えば、メーター内に気筒休止機構の状態を示すインジケーターなどが加われば、気筒休止の優秀さをアピールできると思うし、オーナーも誇らしく感じられると思う。

動力性能面では、2.5リッターのガソリンエンジン搭載車は車重が1550kgを超えるものの、加速力は十分以上。もちろん、気筒休止機構によるデメリットも見当たらない。

一方、2リッターガソリンエンジンの改良内容は、耐ノッキング性能の向上や、低抵抗の新形状ピストンの採用など、2.5リッターのそれと比べると小規模。2.5リッターと同様に、全域に渡ってトルクアップしているが、こちらは従来モデルのオーナーも安心できる範囲に留まっている。

■ディーゼルは「CX-8」と同仕様にアップグレード

ガソリンエンジンの進化も見逃せないが、よりマツダらしさを感じられるのは、やはりディーゼルエンジンの方だ。そして何を隠そう、今回の年次改良で最も変更を受けたのは、このディーゼルエンジンなのである。

新しいディーゼルエンジンは、急速多段燃焼や新形状ピストンなどを採用した上に、可変ジオメトリーターボも新搭載。可変ジオメトリーターボは、従来のターボよりも高性能で、高出力・高トルクが自慢だ。クルマに詳しい人はお気づきだろうが、今回の変更で、ディーゼルエンジンはCX-8と同じ仕様へとアップグレードされたわけだ。

結果、最高出力は175馬力から190馬力へ、最大トルクは42.8kgf-mから45.9kgf-mへと向上。CX-8より約200kg軽いCX-5に同スペックのエンジンが搭載されたのだから、走りのパンチ力は絶大で、アクセル操作に対する反応は、ちょっとやそっとじゃ収まらないほどの元気の良さ。その上、高回転域の伸びも向上していて、爽快感も高まっているのだからいうことなしだ。

そもそもディーゼルエンジンは、アクセルペダルを踏み込んだ際の力強さが持ち味。その点、新型は、アクセルを踏んだ時のグググッとくる感じが、従来型と比べてしっかり体感できるほどパワフルで気持ちがいい。ストレートにいうと、年次改良車のオーナーだけにしか味わえない、独自の走りの世界を待っている。

■オーナーとして恐れているのは「いつ愛車が旧モデルになるか?」

もちろん今回の年次改良は、パワートレーンだけに留まらない。ナビゲーションの測位性能が上がったほか、クルーズコントロールの設定速度の上限が115㎞/hから180km/hへと引き上げられた。また、車速感応式オートロックシステムが新採用されたほか、最上級グレードの「Lパッケージ」では、パワーウインドウスイッチに照明が備わるとともに、自動反転機構を持つワンタッチ&タイマー式に進化。さらにオプションではあるが“360°ビューモニター”が付けられるようになったのもうれしいポイントだ。

このように、多様なポイントが進化したCX-5だが、その価格設定にはちょっと驚いた。例えばディーゼルエンジン搭載の最上級グレード「XD Lパッケージ(FF)」の場合、従来モデルのプライスタグは329万9400円。一方の新型は、エンジンや装備がレベルアップしたにも関わらず329万9400円。なんと同価格なのだ。性能や装備だけでなく、買い得感もアップしているのが新型CX-5なのである。

はっきりいって、買わない理由が見つからない新型CX-5。そう断言できるのにはワケがある。何を隠そう僕自身が、この最新CX-5のオーナーになったからだ。

僕が選んだのは、ディーゼルエンジンを積むXD LパッケージのFF車である。美しいスタイルに魅力的なディーゼルエンジンを積み、5万円弱の地図データさえ手に入れれば過不足ない性能のナビゲーション機能が使えるディスプレイや、上質なレザーシート&電動シート、そして、電動テールゲートまでついて約330万円というプライスは、どう考えてもリーズナブル。ちょうどクルマの買い替えタイミングに差し掛かり、SUVの購入を考えていた自分にとって、新しいCX-5はまさにジャストな選択肢だったのである。

実際に手に入れて実感しているのは、エンジンの滑らかさと静かさ。いわれなければディーゼル車とは気が付かないほど、エンジンのフィーリングには荒々しさがなく、しっとりしていて、実際に毎日の足に使っても「ディーゼルだから」とガッカリさせられることはない。そして音も静か。アクセルを踏み込んだ際、ごくまれに発生するディーゼルエンジンらしい音を除けば、アイドリング時も含めて、ディーゼルらしい騒音が聞こえてこないのはやはりスゴイと思う。エンジン音が耳障りなアイドリング時も、ディーゼルだと意識するのは、車外にいて地面からエンジンの反響音を耳にした時くらい。実に見事だ。ハイコスパかつ、ディーゼルエンジンの仕上がりの良さも含め、買ってよかったと心から感じている。

そんな新型CX-5に満足している僕が、恐れているのはただひとつ。今後の年次改良で、さらに良いクルマになってしまわないか、ということ。商品力がアップするのはウエルカムとはいえ、愛車が旧モデルになってしまうと、やはりどこか寂しい気持ちになりそうだから…。

<SPECIFICATIONS>
☆25S プロアクティブ(赤)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車両重量:1620kg
駆動方式:4WD
エンジン:2488cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:188馬力/6000回転
最大トルク:25.5kgf-m/4000回転
価格:291万6000円

<SPECIFICATIONS>
☆XD Lパッケージ(4WD/白)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車両重量:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2188cc 直列4気筒 DOHC ディーゼルターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:190馬力/4500回転
最大トルク:45.9kgf-m/2000回転
価格:352万6200円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)


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