■テレスコ機構で一段と高まったドラポジの自由度
地味ではあるが、ステアリングを上下させられるチルト機構だけでなく、前後にも動かせるテレスコピック機構が採用された点も、高く評価したい。ロードスターはコクピットがタイトなだけに、例えば大柄な人が最適な運転姿勢をとろうとした場合、これまでは人が空間に体を合わせなければならないところがあった。それが今回、テレスコピック機構を新たに備えたことで、ドライビングポジションの自由度が、より高まったといえる。
また、走り以外の部分では、ついに自動ブレーキが採用されたことがトピック。走りを存分に味わえるスポーツカーこそ、最も先進の安全性能を備えるべき、と考える筆者からすると、これは高く評価したい部分。緊急時に作動してくれるこの装備を与えたことに、マツダの見識の高さを感じる。
そしてソフトトップ仕様には、今回「キャラメルトップ」と呼ばれる特別仕様車が新設定されたというトピックもある。ロードスターは歴代モデルにおいて、実に多彩な特別仕様車や限定車を送り出してきた経緯があり、現行のND型ロードスターでも、2018年春まで赤いソフトトップを備えた特別仕様車「レッドトップ」を用意していた。
今回、商品改良を機に設定されたキャラメルトップは、ブラウンのソフトトップを与え、さらにスポーツタン色の内装を組み合わせるなど、オトナの洒落たカラーコーディネイトを提案している。
ともすれば、走りの進化が主題と取られがちなロードスターの商品改良だが、実はそれと同等以上に大切なのが、オープンカーだからこその華やかさを引き出すこと。特にND型になってからは、マツダの“魂動デザイン”による純粋な造形の美しさを、カラーリングが引き立ててきた。そう考えると、今回のようなコーディネイトの提案はとても重要なことだし、こうした新しい提案こそが、ロードスターを単なる国産スポーツカーの枠に閉じ込めず、グローバルに通用する文化を感じさせる1台に育てていくと思うのだ。
特に、今回のキャラメルトップでは、ソウルレッドクリスタルのボディカラーと、ブラウンのソフトトップ、そして、スポーツタンのレザーシートという組み合わせが実に美しく、スポーツカーの楽しみのひとつである“眺める”歓びを、大いに満足させてくれるものになった。
ちなみに、キャラメルトップのコーディネイトを担当したデザイナーの狩野梓さんは、自身も初代ロードスターの「Vスペシャル」(ブリティッシュグリーンのボディ色×タンの内装色)にほれ込んで、愛車として手に入れたという経緯の持ち主。その意味もあって今回は「女性に振り向いてもらえることも意識して」のカラーリングを提案したそうだ。事実、キャラメルトップを女性がドライブしていたら、とても素敵だろうと思う。ちなみにこのキャラメルトップは、2018年クリスマスイブまでの期間限定受注になるそうだ。
2リッターエンジンの実に優れたフィーリングと、1.5リッターエンジンのさらなる進化、そして、特別仕様車キャラメルトップの設定と、ロードスターはさらに多彩な魅力を身につけた。今回は、ロードスターがもっと多様な方向へと根を広げ、スポーツカーを文化にすべく進化していることを実感させる商品改良だった。
<SPECIFICATIONS>
☆ロードスター RF VS(MT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1245mm
車両重量:1100kg
駆動方式:FR
エンジン:1997cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:184馬力/7000回転
最大トルク:20.9kgf-m/4000回転
価格:365万400円
<SPECIFICATIONS>
☆ロードスター キャラメルトップ(AT)
ボディサイズ:L3915×W1735×H1235mm
車両重量:1020kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT
最高出力:132馬力/7000回転
最大トルク:15.5kg-m/4500回転
価格:320万7600円
(文/河口まなぶ 写真/ダン・アオキ)
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