吉田由美の眼☆クルマ好きにとっての“野外フェス”!真夏のスーパーGTは熱かった

■レース以外にも見どころ充実のスーパーGT

2018年のスーパーGTは、海外ラウンドを含めた全8戦で争われますが、中でも、関東や中部地方からほど近い富士スピードウェイでのレースは、ちょうどゴールデンウイークや夏休みの開催とあって、ものすごい人気。私が観戦した第5戦は、8月4日、5日に開催されましたが、猛烈に暑い日だったにも関わらず、日曜日の決勝には3万8300人が詰めかけました。

スーパーGTは、独自の規格とルールの下にスタートした、日本発祥のレースカテゴリー。ほかのレースとの大きな違いは、レクサス(トヨタ)、ホンダ、日産自動車という3社のワークスチームがしのぎを削るGT500クラスのマシンと、主にプライベートチームが個性豊かな車両で争うGT300クラスのマシンとが混走し、ひとつのレースの中でふたつのクラスがそれぞれ熾烈なバトルを繰り広げる点にあります。

GT500クラスを走るのは、3大メーカーが自社の威信を掛けて開発した車両。レクサス「LC」、ホンダ「NSX」、日産「GT-R」をベースとした計15台のマシンで争われます。

レクサス LC

ホンダ NSX

日産 GT-R

対するGT300クラスは、メルセデスAMG「GT」やポルシェ「911」、アウディ「R8」、BMW「M6」、ランボルギーニ「ウラカン」、ベントレー「コンチネンタルGT3」、ロータス「エヴォーラ」といった世界のスーパーカーと、トヨタ「86」や同「マークX」、レクサス「RC F」、日産「GT-R」、ホンダ「NSX」、スバル「BRZ」といったお馴染みの日本車が、激戦を繰り広げます。市販車に近いマシンで争われることもあって、GT300クラスは玄人ファンが多いといわれています。

スバル BRZ

ちなみに、GT500クラスのマシンにはエアコンが搭載されているほか、エンジンルームからの熱をカーボン製シャーシが遮断してくれるため、真夏のレースでもある程度快適に戦えるそうですが、GT300クラスのマシンにはエアコンがなく、しかも、スチール製のシャーシを通じてエンジンの熱が車内に入ってくるため、真夏のコクピットはとても過酷な環境になるのだとか。

そして、スーパーGTでは毎戦、レース総距離が変わるところもバトルを面白くしている要素といえるでしょう。今回の第5戦は、500マイル=800kmの戦い。富士スピードウェイは1周約4.5kmですが、GT500クラスは1周当たり約1分31秒で走行しながら、トータル177周のラップを重ねるという長い長いレースでした。

また、特定のチームが独り勝ちしないよう、前戦までの戦績によって上位チームのマシンにウエイトハンデが課される点も、スーパーGTのユニークな点。マシンが重くなると、ブレーキが厳しくなったり、コーナリング速度が落ちたりするため、レースの行方ががぜん分からなくなります。

さらにスーパーGTには、ブリヂストン、ヨコハマ、ダンロップ、ミシュランという、4つのタイヤメーカーが参入。それぞれタイヤの特性が異なるので、マシンとタイヤとのマッチングが勝負を分けるところも見どころです。

そうしたハードウェアの要素に加え、レーシングドライバーの技量はもちろん、チームの作戦、ピットストップのタイミングやピットイン時の作業タイムなど、ソフトウェアも勝敗を大きく左右します。つまりスーパーGTで勝つには、それらの総合力が大事なんですね。

というわけで、スーパーGTのレースは、純粋にバトルを満喫するだけでなく、好きなメーカーやクルマを追いかける、お気に入りのレーシングドライバーを応援する、あるいは、チームやタイヤメーカーごとの戦略の違いに着目するなど、さまざまな楽しみ方があるのです。また“サーキットの華”であるレースクイーンに会えるのを楽しみに来ている人も多いのかも。スーパーGTは参戦チームが多いこともあって、レースクイーンの人数が多く、レベルが高く、コスチュームも華やか。

中には、今回のレースでしか見られないコスチュームをまとった子たちもいたようですよ。

■室屋義秀さんのアクロバット飛行に観客は大喜び

スーパーGTは、レース自体だけでなく、その他のプログラムが充実しているのも特徴です。

例えば今回は、レッドブル・エアレースの世界選手権で活躍する日本人パイロット・室屋義秀さんと、レクサスの市販車が夢の共演。室屋さんがサーキット上空でアクロバット飛行を披露し、その下を3台のレクサスが走るという、まさに空と陸との“シンクロ”が披露されました。室屋さんは、360度回転を何回披露したのやら? ほかにも、飛行中にエンジンが止まってしまったかのように急降下を繰り返したり、ひらひらと蝶のように舞ったりと、サーキットにいる人たちを大いに興奮させてくれました。

ちなみに、富士スピードウェイの長いホームストレートには、シグナルなどを表示するゲートがあるのですが、室屋さんはその上を飛行していました。パフォーマンス後「室屋さんなら、あのゲートの下をくぐれるのでは?」と冗談半分でお聞きしたところ「くぐった方が簡単ですね」との回答が! 今回は、サーキット側から「安全のためにゲートはくぐらないでください」と事前にお達しがあったようですが、それにしても、くぐった方が簡単とは…。

そのほか、FIA F4やポルシェのワンメイクレース「ポルシェ カレラカップ ジャパン」など、サポートレースも充実。また予選後には、ちびっ子たちがピットに入ってマシンを間近に見られる“キッズウォーク”が行われたり、アウディのスペシャルモデル「eトロン ビジョン グランツーリスモ」の日本初公開&デモランが開催されたりと、多彩なイベントが行われました。

一方、グランドスタンド裏のメインステージでは、レクサス、ホンダ、日産自動車の開発担当者によるトークショーといった、マニアックな人向けのプログラムも用意。

またステージの回りには、人気車に触れられる自動車メーカーのブースや、レジェンドドライバーのトークショーが開催されるタイヤメーカーのブース、DJプレイを楽しめるレッドブルのブースなどがあり、1日中サーキットにいても決して飽きることがありません。

【次ページ】予選最速のGT-Rが失速! レースは何が起きるか分からない

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