1941年より軍に納品していたモデル1に始まり、順次新しいモデルを追加してきたランドールのナイフ。現在はモデル28までラインナップされ、M11=モデル11のアラスカンスキナーは、アラスカのトミー・トンプソンがデザインしたモデルで1952年2月に発売されました。
ブレードはほんの少し先端が落ちたドロップポイント。スキナー(皮を剥ぐ人)という名前を持つとおり、切ったり皮を剥いだりするときに威力を発揮します。赤津さんはキャンプだけでなくハンティング歴も長く、大物の解体もこのナイフで行うそうです。
「とがった部分で刺して、弧を描いている部分で皮を剥ぎます。ハンティングのときには、刃がしなやかで医療用メスのような形をしたケーピングナイフも持っていって、細かな作業をするのに使います。西部開拓時代、ナイフはとても重要な道具で、アメリカ人は好きなナイフを職人に作らせていました。ランドールはその名残から今もハンドメイド。カスタムもできます。(この型ではありませんが)宇宙開発用ナイフも作られていて、宇宙飛行士が持っていったんですよ」(赤津さん)
■機能
炭素鋼のブレードは、ステンレスと比較すると錆が発生しやすいんですが、切れ味は最高。
「炭素鋼のナイフは研ぎやすく、研いでいるうちにだんだん短くなっていきます。一生の友だちという感じ」(赤津さん)
ブレードをハンドルに取り付けるための金属部分を「タング」と言います。上写真の右はタングをハンドルで挟み込んだ「フルタング」。タフで、木の硬さや太さ、ブレードの素材とサイズなど条件によりますが、バトニング(薪割り)をしても破損しづらいほど強度に優れています。ただ、どうしても重くなり、バランスが悪くなるという面も。
ランドールはタングの幅がハンドルより狭くなっている「ナロータング」。中の様子は見えませんが、細めのタングをハンドルの穴に差し込んでいます。鍛造ナイフではナロータングが主流です。
ハンドルにタングを差し込むだけでは、固定できません。ランドールはバットキャップ(ハンドルエンドにかぶせるもの)を装着してネジで締めて固定しています。
「レザーのハンドルなのですべりにくくていいんですが、使っていると縮んでしまうことも。そうなると、タングを留めるネジを締めて調整します」(赤津さん)
ハンドルはレザーワッシャー。DIYでは、ボルトがゆるまないようにワッシャーをかませますが、レザーワッシャーとはこのワッシャーのような形のレザー製円盤。タングに合わせて穴を空けたレザー製ワッシャーを重ねているんですね。だから、微妙な色の違いが味わいになっています。真ちゅうヒルト(指をガードする鍔のようなもの)、ジュラルミンのバットキャップもかっこいい。
「ヒルトは蝋付けされているので、水分がハンドル内部に入ることがありません。フルタングは錆びやすいけれど、ナロータングは錆びにくいという点があるんです」(赤津さん)