吉田由美の眼☆見た目は普通でも走るとすごい!VW「GTI」でサーキットを満喫

■メリハリある運転でGTIの真の実力が見えた

走りが熱い“ホットハッチ”の中でも、世界的に人気の高いモデルが、VWのGTIシリーズ。ホットハッチの元祖ともいうべき「ゴルフGTI」、2017年春に上陸した新型「ポロ」をベースとするポロGTI、限定モデルとして上陸したup!GTIと、今回、13年ぶりに3台のGTIがそろいました。

VWのGTIシリーズは、いかにもスポーツカー、といったルックスではなく、見た目は普通のハッチバック。もちろん“GTI風味”はプラスされていて、見た目以上に走ると熱い! 多くの人はどうやら、そのギャップの大きさに惹かれるようです。

専用のエンブレムや、エクステリアとインテリアに使われた赤い挿し色、そして、タータンチェック柄のシート生地というのが、GTIならではのトレードマーク。見る人が見ればひと目で分かるベースモデルとの識別ポイントですが、知らない人はその違いに気づかないほど、ルックスは控えめ。でもこれこそが、ヨーロッパ流の美学なのかも。特にドイツの自動車メーカーは、これ見よがし、というよりも、分かる人だけが分かればいい、といった、さり気ない高性能アピールがお好きな様子。

実はこれって、家族やパートナーと1台のクルマを共有する場合などには、とても大事なこと。例えば、女性はコンパクトでかわいらしいクルマに乗れる一方、クルマ好きの男性はスポーティな走りを楽しめるのです。その上、本格スポーツカーに比べて、価格はリーズナブルでずっと実用的。つまり、みんなにウィンウィンのクルマが、VWのGTIシリーズなのです。

ポロGTIはその名のとおり、新型ポロの高性能版。エンジンは2リッターの直噴ターボエンジン“TSI”を搭載しています。最高出力は200馬力、最大トルクは32.6kgf-mで、通常版ポロのサイズ感は好きだけど、走りがちょっと物足りないと感じていた人にとっては、まさに「待ってました!」の1台。6速のデュアルクラッチ式トランスミッション“DSG”を介してフロントタイヤを駆動し、最高速度は235㎞/hに達します。さらに、電子制御式ディファレンシャルロック“XDS”によって、ハイスピードで回るカーブでも高い走行安定性を実現します。

エクステリアでは、スポイラーを一体化し、フォグランプを標準装備した専用のフロントバンパーが特徴。ハニカム形状のラジエーターグリルにはGTIエンブレムが備わり、その下には特製の赤いラインが引かれます。インテリアでは、大胆な赤のポイント使いが印象的。シート中央部には、お馴染みのタータンチェック柄のシート生地があしらわれています。

シートのホールド感はタイトですが、これが座ってみるとぴったりフィット! 体に馴染む印象です。走り出すと、驚くほど速くはありませんが、乗り心地はやや硬めでしっかりした印象。富士スピードウェイのショートコースのように、コース幅が狭く、小さなカーブが連続するコースだと、走りの安定感が際立ちます。

一方のup!GTIは、VWで一番小さなモデル「up!」の高性能版。最高出力116馬力 、最大トルク20.4kgf-mを発生する1リッターの直列3気筒ターボエンジンには、今や貴重な存在となった6速MTのトランスミッションが組み合わされます。ボディサイドには、このモデルならではのストライプが入り、17インチのアルミホイール、スポーツサスペンション、赤く塗られたブレーキキャリパー、そして専用のエンブレムが、GTIであることをアピールします。

インテリアは、黒を基調色としたダッシュボードに赤のドット柄をあしらい、GTIならではのタータンチェック柄のシート生地を組み合わせます。ポロGTIと比べると、シートのサイドサポートが緩く感じますが、ショートコースでのハンドリングは、むしろこちらの方が適度にピシッと動く印象を受けました。

公道をドライブする時は、同乗者が不快に感じないようギクシャクしないスムーズな運転を心掛けている私ですが、今回はサーキットでのドライブということで、少しメリハリのある運転にトライ。そこで分かったのは、2台のGTIのブレーキが、とてもよく効くということ。また、ポロGTIとup!GTIはボディサイズがコンパクトなので、コース幅の狭いショートサーキットでも余裕を持ってドライブできました。

皆さん、サーキットを走る機会はあまりないと思いますが、走ってみると、それなりに楽しいものなんです。もちろん、速く走れるに越したことはありませんが、日常よりちょっとだけスピードを出し、コーナー手前で強めにブレーキを踏むといった操作だけでも、愛車のポテンシャルを実感できます。今回の2台は見た目こそ普通でしたが、「もっとパフォーマンスを引き出してみたい」、「速く走ってみたい」と思わせてくれる、高いポテンシャルを秘めたクルマでした。やはり、GTIのネーミングは伊達ではありませんね。

(文/吉田由美 写真/村田尚之)


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