■ポートレート撮影の楽しさが倍増!
続いてカメラを検証しました。既報の通り、iPhone XS/XS Maxの背面カメラはデュアル仕様で、1200万画素(広角、f/1.8)&1200万画素(望遠、f/2.4)となっています。ここまでのスペックは従来のiPhone Xと同じ。
しかしXS/XS Maxでは、ピクセルサイズが1.2μmから1.4μmへと大きくなり、より多くの光を取り込めるようになっています。また、改良されたニューラルエンジンとISPの連携により、動きのある被写体でも広いダイナミックレンジで撮影できる「スマートHDR」機能に対応したことも大きな変化です。
さらに、「ポートレート」モードで撮影した写真は、撮影後に標準の写真アプリの編集メニューから背景のぼかし具合を調整可能となったことがトピックです。スマートHDRはこのポートレートと併用できるため、より広いシーンで人物撮影を楽しむことが可能となりました。
例えば、逆光で被写体に動きがあるようなシーンでは、ポートレートモードを活用できます。被写体のディティールが消えていないので、さらに編集加えるとより映えます。
「深度コントロール」と「ポートレートライティング」を適用し、明るさや色味を手動で編集すると以下のように整います。
夕日を背にした状態でも、しっかりと人物が際立っているのがわかりますね。少し腕の動きがブレてしまったのがちょっと悔しいですが、カメラ素人が撮影したと思えば上出来です。
また、スマートHDRが適用されない場合でも、暗い場所では色味の再現に大きさな差がありました。光量が足りない環境でも、ディティールが以前より鮮明に写り、しかも色味が鮮やかになるのです。
上の画像がiPhone XSで撮影した暗所でのポートレート写真。下のiPhone Xで撮影した写真と比べると、違いがわかりやすいと思います。
ここまで色味の情報量に差があると、編集を加えた際にも、完成具合に大きな差が出ます。暗所で撮影するシーンでは、iPhone XSの表現力に圧倒的な軍配が上がりました。
深度コントロール機能も、しばらく扱っているうちに、その特徴がわかってきました。「被写界深度」のスライダを小さい値にするほど、背景のボケが強くなるのですが、背景だけでなく被写体の顔でない部分も緩やかにボカしが反映されるようです。
例えば全身写真の場合、背景とともに腹部より下は次第にボカしが加わっているのがわかりました。バストアップの構図でも、肩周りが同様にボカしの対象となるようです。きっぱり境界が分かれるのではなく、グラデーションのように適用されることで、違和感が減ります。また、人物の顔に目線を集中させる、という意味で、作品としても自然な仕上がりに整える工夫なのでしょう。
なお、上記で紹介した機能は、インカメラ(TrueDepthカメラ)でも同様に使えます。セルフィーでも、より多彩な表現が可能となったわけですね。
木漏れ日や、街灯のある夜景などを背景に撮影すれば、玉ボケも狙えます。iPhone XS/XS Maxを購入される方は、ぜひ挑戦してみてくださいね。
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ネーミングが「XS」となっているように、今年はやはり「S」の年でした。iPhone Xが登場した昨年のインパクトと比べると、スペック関連の改良が多いので、地味に感じる人がいるかもしれません。しかし、XS Maxの実物を手にすると、かなりの存在感に驚きます。また、XSもXの値段そのままに性能が良くなっており、ベストバイモデルといっても過言ありません。
特にカメラのアップデートは、使うシーンが限られていた「ポートレート」モードに息を吹き込み、より親しみやすいものへと変えてくれました。電話よりもチャットやカメラを使ったコミュニケーションの方が重要なんて言われる昨今。新iPhoneを試す価値は大いにありますよ。
なお、今回は十分に検証できませんでしたが、動画撮影についてのアップデートも気になるところ。こちらについては、またの機会に結果をレポートしたいと思います。
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(取材・文/井上 晃)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。