そんなアウトラインを持つ新型スマートですが、まずは今回、フォーツーをドライブすることができました。
3世代となる新型スマートは、おでこが少し張り出して、ちょっぴりいかつい表情に。2755mmの全長と1545mmの全高はこれまでとあまり変わりませんが、全幅は100mmほど広がって1665mmに。ホイールアーチ周りの張り出しと併せ、グッと踏ん張ったルックスになりました。
インテリアも全体にオトナっぽい雰囲気に仕上がっています。1994年にスマートの前身「MCC(Micro Car Corporation)」社が創立されて20年余。フォーツーもティーンエイジャーを卒業したわけです。
ステアリングホイールを握り走り始めても“オトナになった”印象は裏切られません。1リッターの3気筒ユニットは、最高出力71馬力、最大トルク9.3kg-mと、必要十分なアウトプットを発生。2mに満たないホイールベースの絶対的な短さゆえ、時にヒョコヒョコとピッチングする動きを見せますが、一方で路面からの突き上げはしっかり抑え、スムーズな乗り心地を提供してくれます。
デュアルクラッチ式になったギヤボックスの恩恵で、シフトの度に乗員の上体が前後することもなくなりました。高速巡航も余裕がありますし、反対に細かい路地が続く街中では、市販車として世界最小となる、3.3m(!)という最小回転半径が威力を発揮するでしょう。何しろ、小さなコーナーが連続するレーシングカートのサーキットで遊ぶことさえできるんですから!
ニューモデルは、クルーズコントロール、オートエアコン、レインセンサーやオートライトはもちろん、レーダーセンサーを用いて、先行車と衝突の可能性がある場合に警告する“衝突警告音機能”も装備します。
ちなみに、フォーツーのウリのひとつ、万が一の際にキャビンを守る“トリディオンセーフティセル”は、高強度の高張力鋼板/超高張力鋼板の使用率を51%から72%に引き上げることで、さらに強化されました。
初代以来、日本での累計販売台数が3万台を超えたスマートのフォーツー。欧州では、フォーツーのようなシティカーには駐車面で優遇されることがありますが、残念ながら日本では、あくまで1台のクルマとして扱われます。
そのことが、セールス面では「ちょっとツラい」というのが本音でしょう。それが限定モデルの逐次投入という、新しいフォーツーの販売方法につながったのだと思われます。
今後は「メルセデス生まれの、シティ・コンパクト」をキャッチフレーズに、ベンツの威光を最大限に活かす方向へ舵が切られます。もしかしたら、リアエンジンとなったフォーフォーが、スマートシリーズの販売の中心になるかもしれません。
それでもフォーツーは、スマートの大事なイメージリーダー。街で見かけるとなんだか楽しくなる、そんなところもコンパクトなシティカーとしての大きな魅力なのです。
<SPECIFICATIONS>
☆フォーツー エディション1
ボディサイズ:L2755×W1665×H1545mm
車重:940kg
駆動方式:RR
エンジン:998cc 直列3気筒 DOHC
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
エンジン最高出力:71馬力/6000回転
エンジン最大トルク:9.3kg-m/2850回転
価格:199万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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