■最新旅客機に息づくスバルの高い技術力と豊富なノウハウ
「レガシィ」や「インプレッサ」、「フォレスター」などを手掛ける日本車ブランドのスバルが、なぜフライト・オブ・ドリームズのスポンサーに名を連ね、また今回、どうして見学会を開催したのでしょうか? その理由は、スバルの成り立ちと深い関係がありました。
フライト・オブ・ドリームズに展示されるボーイング787は、日本の空港でもすっかりお馴染みとなった機体ですが、その部品の約35%は日本製。三菱重工業や川崎重工業など多くの日本企業が共同開発・生産に関わっていて、実はその中の1社に、スバルも名を連ねているのです。
今や自動車メーカーというイメージが強いスバルですが、そのルーツは、かつて数々の傑作航空機を手掛けた中島飛行機。今でもスバルには航空宇宙部門があり、我が国を代表する航空機メーカーのひとつ、という一面も持っています。
具体的には、スバルはJAXA(宇宙航空研究開発機構)による研究開発への参加や、防衛省や海上保安庁といった官庁向け航空機の開発・製造・整備を手掛けているほか、パーツサプライヤーとしてボーイングと長きにわたる協力関係にあります。そして、ボーイング787の開発においては、機体構造の要となる“中央翼”の共同開発・生産を担当。昨2017年には、成田空港と旭川空港の間にチャーター便を飛ばし、メディア向けに「中央翼体感フライト」も実施しています。
ちなみに中央翼とは、機体左右の主翼と胴体とを結合する重要な部分。外部からその構造をうかがうことはできませんが、中央翼は燃料タンクも兼ねていることから、組み立てには高い精度が求められるほか、高度な与圧技術やシール技術も必要となります。なお中央翼の製造は、愛知県にあるスバル航空宇宙カンパニー半田工場で行われています。
■航空ファンはもちろん、親子で楽しめるコンテンツも充実
このように、スバルを始めとする日本企業とボーイングとの深い縁もあり、787の飛行試験1号機、機体番号ZA001が、2015年に中部国際空港へ寄贈されました。当初は、空港内に屋外展示されていましたが、2016年、屋内展示施設の整備に着工。そして今回、それを展示するフライト・オブ・ドリームズのオープンに至ったのです。
フライト・オブ・ドリームズの館内は「シアトルテラス」と「フライトパーク」の2エリアで構成されています。
シアトルテラス<入場無料>は、ボーイングが創業した都市、米・シアトルにちなんだエリアとなっていて、食事やショッピングを楽しめるゾーン。ピザやアメリカン料理など、日本初出店となる飲食店も多く、787を間近に眺めつつ、本場の味を堪能できます。
対するフライトパーク<入場料/大人(中学生以上):1200円、子ども(3歳~小学6年生):800円、3歳未満:無料>には、787初号機を中心に、9つの体験型コンテンツを用意。楽しみながら航空について学べるエリアとなっています。フライトパークの展示コンテンツはというと…
1)フライ ウィズ787ドリームライナー
プロジェクションマッピングを活用した映像と音のショーを、1時間に2回実施。さまざまなデジタルアートを手掛けるチームラボが制作したコンテンツで、色鮮やかな光による演出により、787とともに宙に浮かんでいるかのような感覚を楽しめます。
2)ボーイングファクトリー
世界最大規模の航空機組み立て工場である、ボーイング・エバレット工場の787組み立てラインを再現したゾーン。世界各地から輸送された部品が組み立てられる様子を、巨大画面により見学できます。CGに加え、フライト・オブ・ドリームズのために新規撮影された画像も駆使されており、航空ファンも思わずヒザを打つコンテンツとなっています。
3)奏でる! 紙ヒコーキ場
紙ヒコーキを折って飛ばす体験型コンテンツ。飛ばした紙ヒコーキがエリア内の光に触れると空間の色が変わり、サウンドによる演出も。どうすれば紙ヒコーキが遠くまで飛ぶのか、親子で楽しみながら学べます。
4)お絵かきヒコーキ
絵に描いた飛行機をスキャンすると、その飛行機がドーム内の空中を飛び回るユニークなコンテンツ。空中には星や花のほか、愛らしいブタなどの隠れキャラも。
5)エアラインスタジオ
塗り絵により自分が描いたお客さんとともに、航空会社の仕事を学べるエアラインスタジオ。用意された客室乗務員やパイロットの制服を着用してスタジオに立つと、周囲に空港内や機内を再現した映像が映し出されます。機内用カートを使ってのドリンクサーブ、機内アナウンスなど、多彩な仕事を体験できます。
6)ZA001コックピット
最近は保安上の問題もあり、なかなか見ることができない旅客機の操縦室。フライト・オブ・ドリームズではガラス越しではあるものの、ZA001のコックピットを間近に見ることができます。大型ディスプレイがズラリと並び、ペイロットの眼前にはヘッドアップディスプレイも備わる最新鋭機の操縦室は、まさに圧巻のひと言。コックピットウインドウの下には、2009年12月15日のZA001の初飛行、そして、セントレアへのフェリーフライトを担当したテストパイロット、マイク・キャリカー機長とランディ・ネヴィル機長の名前が記されています。
7)歩いて集める飛行機図鑑
自分のスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、ZA001の周囲を歩きながら飛行機のパーツを探し、その役割を学ぶコンテンツ。スバルが開発・製造を担当する中央翼を始め、収録されるパーツ点数は60以上と、なかなかのボリューム。すべての部品が集まると、787図鑑が完成する仕組みになっています。
8)シアトル航空博物館ワークショップ
航空宇宙を題材とする博物館としては世界最大規模を誇る「シアトル航空博物館」のSTEM教育プログラム(サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マセマティクス)を体験できるワークショップ。工作や実験を通じ、飛行機が飛ぶ仕組みなどを学べます(※数百円程度の材料費が別途必要となる場合もあります)。
9)787シミュレーター
ボーイング787のコックピットを忠実に再現したシミュレーター。インストラクターの指導もあり、離陸から着陸までの操縦を体験することができます。
なお、787シミュレーターは別料金、事前予約制となっていますので、詳細はホームページでご確認をお忘れなく。ちなみに、写真撮影のみは5分間1080円、フライト体験は15分間3240円、その他のプランも設定されるほか、一部時間帯では入場料のみで体験可能な抽選枠も設定されるとのことです(運営:ラグジュアリーフライト)。
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このほか、フライト・オブ・ドリームズには、アメリカ以外では初となるボーイングストアも出店。直輸入されたボーインググッズのほか、ここでしか手に入れられないオリジナルグッズ、航空機の部品を用いたオブジェや家具など、航空ファン必見のアイテム類が販売されています。
楽しめる空港として知られるセントレアに新たに加わった体験型施設、フライト・オブ・ドリームズ。ファミリーで楽しめるコンテンツも充実していますから、ぜひ一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
(文/村田尚之 写真/村田尚之、SUBARU、&GP編集部)
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