【マツダ CX-5刷新】今年2度目の改良!ガソリンターボと新たな武器で走りがシャープに

■2.5リッターのガソリンターボを日本初導入

今回の商品改良における最大のトピックは、2.5リッターのガソリンターボエンジンが追加搭載されたこと。

これは、日本未発売ながらマツダSUVの頂点に位置する「CX-9」や、北米仕様の「アテンザ」(現地名:マツダ「6」)にはすでに搭載されているエンジンで、日本市場には初の導入となる。最高出力は230馬力、最大トルクは42.8kgf-mを誇る、CX-5では最もスポーティでパワフルなユニットだ。

マツダはエンジンの“ライトサイジングコンセプト”を掲げていて、各モデルに対して“ちょうどいい排気量”のエンジン導入を進めている。その中で新しいガソリンターボは“大排気量・自然吸気エンジンのようなレスポンス”と“実用域の分厚いトルクと伸び”、そして“低燃費領域の拡大”の実現を目指して採用された。

新しいガソリンターボは、CX-5に最適な排気量と技術の採用で、大排気量の自然吸気ガソリンエンジンのような特性を実現しながら、上々の燃費データもマークしている。カタログ記載の燃費データ(WLTCモード)を見ると、2.5リッターの自然吸気ガソリンエンジンを積む「25S Lパッケージ」(FF)が13.8km/Lなのに対し、ガソリンターボを積む「25T L パッケージ」(FF)は12.6km/Lと、さほど悪化していない。おまけに、ガソリンターボでありながら指定燃料は高価なハイオクではなく、レギュラーガソリン仕様なので、ランニングコストの上昇は最小限。それでいて、ガソリンターボならではの、シャープな加速性能を手に入れているのである。

少々マニアックな話になるが、エンジンは一般的に、高負荷の状態が続いて燃焼室内の温度が高くなり過ぎるのを防ぐために、意図的に燃焼室へガソリンを多く送り込み、その気化熱を利用して燃焼室内の温度を下げている。これは“燃料冷却”と呼ばれているが、その際、燃料を濃く噴くことが、燃費悪化の一因につながるのだ。しかし、マツダのガソリンターボは、排出ガスの一部を冷やして再び燃焼室へ送る“コールドEGR”機構を導入。それにより、燃料冷却の頻度を抑えていることも、燃費向上のひとつの要因になったようだ。

それにしても、42.8kgf-mという最大トルクは4リッターの自然吸気ガソリンエンジンに匹敵する太さであり、それをわずか2000回転で発生するのだから、力強さは相当なものだ。実際、テストコースで加速性能を試してみたら、低回転域での力強さに定評のあるディーゼルターボと同等。おまけに、その先で頭打ち感が出るディーゼルターボとは異なり、高回転域までスムーズにパワー感が高まりつつ、回転が伸びていく爽快感もある。この点は、ディーゼルターボに対する明確なアドバンテージだ。

そんな2.5リッターのガソリンターボの価格は、FF仕様で332万6400円。ディーゼルエンジン搭載の同等グレードに対し、5400円のアップとなっている。爽快感で優るガソリンターボか? それとも、ランニングコストで有利なディーゼルか? 非常に悩ましいところだが、クルマ好きにとって魅力的な元気みなぎるターボユニットが追加されたことは、CX-5の購入を検討中の人にとって、大歓迎のニュースだろう。

クルマ好きにとってうれしいニュースといえば、新たにMT車が設定されたことも見逃せない。CX-5のライバルと目されるスバル「フォレスター」は、新型になってMT仕様を選択できなくなったが、それと入れ替わるように、CX-5ではMTを選べるようになったのだ。

ただしMTが用意されるのは、スポーティなガソリンターボ車ではなく、2.2リッターのディーゼルターボ仕様で、ディーゼルならではの力強いトルクを、MTで操る楽しさを味わえる。

確かに、今どきMTを選ぶ人は少数派だろうが、そんなマイノリティのために選択肢を増やしてくれたマツダは、称賛に値する。

■GVCからGVCプラスへの進化は大きかった!

さらに今回の改良では、マツダ車だけに採用されるユニークな技術“GVC(G-ベクタリング コントロール)”も新世代のものにバージョンアップされた。

ちなみにGVCは、ドライバーのハンドル操作に応じてエンジンのトルクを(ドライバーや同乗者には分からないほど)わずかに抑制。タイヤの接地性を高めて操舵の反応を良くすることでクルマを曲がりやすくするとともに、修正舵を減らすなどの効果があるテクノロジー。ドライバーには操縦性の向上、同乗者には身体の揺れを抑えて不快な動きや車酔いを軽減するといったメリットがある。

そんなGVCが、今回“GVCプラス”へと進化した。新たにブレーキの制御プログラムが追加され、コーナーの収束時に外輪側のブレーキを軽くかけることで「よりスムーズに直進状態へと戻れるようになった」とエンジニアは語る。半信半疑どころか、ほとんど疑いの気持ちを抱きながら、スイッチ操作で従来型と新型とを切り替えられる特別な試乗車に乗って、GVCプラスの効果を試してみた。

何より驚きだったのは、GVCプラスの効果を予想以上に体感できたこと。曲がりくねったコースでは、S字コーナーでの切り返しがスムーズになり、危険回避の際などに「ズバッ!」と素早くハンドルを切ることを想定した高速でのレーンチェンジでは、直進状態へ戻す2度目のハンドル操作において、大げさに切らなくて済むようになった。

従来のGVCとの違いは、想像以上に大きい。それでいて、ドライバーには違和感が全くない(だからこそ、GVCが本当に働いているのか否かを疑う人の気持ちも分かる)というのも、GVCプラスの優れた部分といえるだろう。

■CX-5の魅力を高めるプレミアムな特別仕様

そのほか今回の商品改良では、インテリアの空調操作パネルが変更されたほか、標準仕様のオーディオでもフロントピラーの根元にツイーターが加わると同時に、ピラーを覆うトリムが樹脂製からファブリック製に変わるなど、質感もレベルアップした。そして、標準装備となるインフォテインメントシステム“マツダコネクト”は、新たにApple CarPlayとAndroid Autoに対応するなど、機能性も向上。その上で、自動ブレーキに夜間の歩行者検知機能が追加されるなど、安全性も進化している。

今回の商品改良では、上質な特別仕様車「エクスクルーシブモード」も追加された。ベースグレードとなったのは、ディーゼル車とガソリンターボの最上級仕様「Lパッケージ」。

ソフトな風合いの“ナッパレザー”を表皮とし、前席にベンチレーション(送風機能)機能を組み込んだ前後シート、“本杢”を用いたダッシュボードとドアの加飾パネル、上部をブラック、下部をディープレッドとした専用のインテリアカラーなどで室内を上質にコーディネート。さらに、フレームレスインナーミラー、すべてをLEDとした室内照明、そして、7インチのマルチスピードメーターといった、他グレードにはない装備を組み込んでいる。

端的にいえば、マツダのフラッグシップサルーンであるアテンザの最上級グレードに採用される装備を盛り込んだ、CX-5のプレミアム仕様であり、価格はベースモデルのL パッケージに対し、30万円強のアップとなっている。

ガソリンターボにディーゼル車のMT仕様、そして、プレミアムな特別仕様車の新設定などで、バリエーションを拡大。さらに、インテリアの質感やマツダコネクトの機能性、そして、安全性までも高めてきた今回のCX-5の商品改良は、クルマの進化として文句の付けどころがない内容だ。他メーカーでときどき見られる、外観をちょっと手直しした程度で「新型です!」と声高に主張するような改良とは、意味合いや中身が全く異なり、エンジニアが注ぎ込む情熱がクルマの完成度を高めていることが、ひしひしと伝わってきた。できる限りクルマをベストの状態に近づけたいというマツダの真摯な姿勢は、称賛に値する。

ところで筆者は、今春、今回の商品改良を受ける前のモデルを購入した、CX-5のオーナーでもある。従来モデルのオーナーの視点から今回の改良を見ていると「進化は確かに理に適っていて賛同はできるけれど、改良前のクルマだって十分にいいクルマだよね」と自らにいい聞かせつつ、涙で枕を濡らす夜が続くことになりそうだ。

従来モデルのオーナーにとってせめてもの救いは、表面の仕上げが変わったホイールを除き、外観が全く変わらなかったこと、だろうか。もしできることなら、マツダコネクトのApple CarPlayとAndroid Autoへの対応については、プログラム更新によるアップデートなどで対応できるようにしてもらえると、従来型オーナーとしてはうれしいのだが…。

<SPECIFICATIONS>
☆25T Lパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車両重量:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2488cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT
最高出力:230馬力/4250回転
最大トルク:42.8kgf-m/2000回転
価格:355万3200円

<SPECIFICATIONS>
☆XD エクスクルーシブモード(4WD)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車両重量:1680kg
駆動方式:4WD
エンジン:2188cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:190馬力/4500回転
最大トルク:45.9kgf-m/2000回転
価格:388万2600円

(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部、マツダ)


[関連記事]
【マツダ アテンザ試乗】ここまでやるか?6年目の大改良にマツダの本気を垣間見た

【マツダ ロードスター試乗】走りは格段に楽しく、ルックスは一段と華やかに:河口まなぶの眼

【マツダ CX-3試乗】最良を目指してドアの鉄板も変更!新型は見た目より中身の激変に驚く


トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする