■旗艦車種「Sクラス」と同じ快適&安全装備を投入
変わり映えしないエクステリアとは裏腹に、新型Cクラスのインテリアは、乗り込んだ瞬間に従来型とは異なることが一目瞭然だ。中でも「C200アバンギャルド」、「C200 4マチック アバンギャルド」、「C220dアバンギャルド」にパッケージオプションで用意されるフル液晶メーターパネル装着車は、その印象を一段と強くする。
液晶メーターパネルのメリットは、なんといっても表示の自由度が高いことだが、新型Cクラスの場合、アナログ針のない12.3インチのフル液晶パネルに、速度計やエンジン回転計のほか、各種車両情報や地図情報などを表示させられる。その隣にある、ナビゲーション機能などを表示するセンターディスプレイも、従来型より大画面かつ横長(10.25インチ)に。フル液晶メーターパネルとの相乗効果で、インテリアの先進性は大幅にアップした。
同時に、ステアリングスイッチのインターフェイスが、タッチセンサー付きの“タッチコントロールボタン”に進化したことも見逃せない。スマホ感覚で操作し、メーターは右手の親指、センターディスプレイは左手の親指(右ハンドル車の場合)で操る感覚は独特だが、慣れれば直感的に操作でき、とても分かりやすい。いずれのインターフェイスも、上級の「Eクラス」や「Sクラス」から展開されたものだけに、「ついにCクラスにもきた!」というワクワクした気持ちにさせてくれる。
併せて、クルーズコントロールのスイッチ位置が変更されたことも、大きなトピック。従来は、ステアリングコラムから生えたレバーで操作していたが、新型はステアリングのタッチコントロールボタンに集約されたことで、操作性が高まっている。特に走行中、ボタンを1回押すだけで追従機能がスタートするのは、とても便利だと感じた。
もうひとつ、新型の改良ポイントで外せない話題が、全モデルの先進安全システムや運転支援デバイスが進化したこと。安全システムに関しては、自動ブレーキに歩行者の飛び出し検知機能がプラスされたほか、ドライバーが運転操作を行わないと自動で路肩に停止し、緊急コールセンターに接続してくれる機能まで組み込まれるなど、より広範囲で人間のミスをフォローする仕様となった。
一方の運転支援デバイスは、渋滞中の停止時における自動発進が、停止後30秒まで対応するように。そのほか、高速道路におけるウインカー操作で、自動でレーンチェンジする機能も加わっている。これらは、最上級セダンであるSクラスと同等の内容だ。
そして、ヘッドライトも大きく進化した。上級グレードに搭載される“マルチビームヘッドライト”は、片側84個のLEDを瞬時に、かつ個別に制御し、周囲のクルマのドライバーがまぶしく感じないよう配慮しつつ、広い範囲にハイビームのような光を照射。視界と安全性を確保してくれる。おまけに、最長650m先まで光を照射する“ウルトラハイビーム”機能も用意されているから、夜のハイスピードクルーズにおける安心感は絶大だ。
■時代の変化を感じさせる1.5Lターボ+モーター
まずドライブしたのは「C200 セダン アバンギャルド」。このモデルのハイライトは、なんといってもエンジンだ。
新開発の4気筒ターボエンジン“M264型”は、排気量わずか1.5リッター。そこに“BSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)”と呼ばれるスターター一体型のモーターを、ベルトを介して取り付けることで、いわゆるマイルドハイブリッド仕様に仕立てている。
モーターは14馬力と小さいため、存在を主張することなく、ターボによる過給圧が高まるまでのアシスト役に徹する。エンジンが苦手とする低回転域をモーターがサポートすることで燃費を高めつつ「エンジン自体は、得意領域である中高回転型の特性にセッティングすることができた」と、メルセデス・ベンツは主張する。
それにしても、Cクラスに1.5リッターエンジンとは、時代の変化を感じさせる。C200 セダン アバンギャルドに搭載されるM264型のパワーは、184馬力と少々控えめだが、最大トルクは28.6kgf-mもあるので、思いのほか速い。また、モーターが適度にアシストしてくれることで、発進加速の際にストレスがない点も好印象。1.5リッターとは思えない走りっぷりだった。
ちなみに今回の改良で、日本仕様は一部モデルを除き、パンクしても特定の条件下で一定の距離を走れるランフラットタイヤを廃止したが、その効果なのか、すべてのモデルの乗り味が、しっかり、かつしっとりしたものになったのが、とても印象的だった。
続いてハンドルを握ったのは、1.6リッターの4気筒ターボエンジンを搭載する「C180 ステーションワゴン アバンギャルド AMGライン」。こちらも最高出力は156馬力と控えめだが、最大トルクは25.5kgf-mと、2.5リッターの自然吸気ガソリンエンジン級。動力性能は必要にして十分だ。
ヨーロッパ車の4気筒エンジンでしばしば感じられる、低回転域でのややザラついたフィーリングはあるものの、走り始めれば気にならない。むしろ、しっかりと力があるという印象だ。
驚いたのは、峠道におけるドライビングフィール。といっても、決してシャープな挙動ではないし、スポーツカーのように積極的な走りでドライバーを高揚させてくれる反応でもない。しかし、ハンドリングフィールはとても落ち着いていて、安定感が抜群。コーナーへの進入、旋回、そしてコーナーからの立ち上がりと、クルマの挙動がスムーズにつながるから、不快な感覚や不安定な動きは皆無。落ち着きのない揺れなどが一切ないから、リアシートに座っての移動も、とても快適だった。
これは、強靭に作られた車体はもちろん、そこに、路面や車体姿勢の変化をしっかりと受け止めるサスペンションを組み合わせたことの賜物だ。C180 アバンギャルド AMGラインには、このグレードだけの特別装備として、電子制御ダンパーを備えたアダプティブダンピングシステム付きのコイルサスペンション“ダイナミックボディコントロール”が装備されているが、そのフラットな車体の挙動には、正直、とても驚かされた。まさに、セダン/ステーションワゴンのお手本というべき乗り味に、新型Cクラスの真髄を見た気がする。
■“マイベストCクラス”はディーゼル仕様のワゴン!?
個人的に「ベストCクラスかも」と思ったのは「C220d ステーションワゴン アバンギャルド AMGライン」。搭載される2リッターの4気筒ディーゼルエンジンは、Eクラスや「CLS」のそれと同じもので、従来型Cクラスのディーゼルエンジンと比べて高出力化しつつ、振動や騒音が軽減されている。また、従来よりも排出ガスのクリーン性能が大幅に高まっているのも美点だ。
以前ドライブした「CLS 220dスポーツ」に比べると、アイドリング時や低速域において少々うるさく感じたが、これは遮音材の違いなどによるものだろう。いずれにせよ、いったん走り始めれば、ディーゼル特有の音は全く気にならない。
新しいディーゼルエンジンは、最大トルクが40.8kgf-mと厚いため、グイグイと力強く加速していくのがなんとも頼もしい。優れた燃費性能と、ガソリンのそれに比して安価な軽油価格によるランニングコストの低さによるコストパフォーマンス面のメリットはもちろんだが、新型のディーゼルエンジンはその力強い加速においても、積極的に選びたくなるパワートレインだと思った。
輸入車はしばしば、改良を経ることでどんどん進化していくとされるが、それにしても新型Cクラスのアップグレードは、その伸び代の大きさにとても驚かされるものだった。今回の大改良はやはり、玄人好みの内容だったのだ。まさに「Cクラスを買うなら今でしょ!」と、声を大にしてお伝えしておこう。
<SPECIFICATIONS>
☆C200 セダン アバンギャルド(赤)
ボディサイズ:L4690×W1810×H1425mm
車重:1550kg
駆動方式:FR
エンジン:1496cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:184馬力/5800〜6100回転
最大トルク:28.6kgf-m/3000〜4000回転
価格:552万円
<SPECIFICATIONS>
☆C180 ステーションワゴン アバンギャルド AMGライン(青)
ボディサイズ:L4720×W1810×H1440mm
車重:1600kg
駆動方式:FR
エンジン:1595cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:156馬力/5300回転
最大トルク:25.5kgf-m/1200〜4000回転
価格:613万円
<SPECIFICATIONS>
☆C220d ステーションワゴン アバンギャルド AMGライン(銀)
ボディサイズ:L4720×W1810×H1440mm
車重:1740kg
駆動方式:FR
エンジン:1949cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:194馬力/3800回転
最大トルク:40.8kgf-m/1600〜2800回転
価格:639万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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