■シングルレンズだけどポートレートが使える
背面カメラの構成は、Xシリーズでは唯一となるシングルレンズ。XS/XS Maxの広角側と同じ、1200万画素・f/1.8のカメラを備えます。また、動きのある被写体でもHDR撮影が行える「スマートHDR」にもしっかり対応。
違いがあるのは、望遠カメラ側を利用する「ズーム」や「ポートレート」の使い勝手です。例えば、ズームをする際に、デュアルカメラが備わっている機種だと片手でUIをスライドしてズームの倍率を変更できます。しかし、XRではピンチアウトするまでズームのスライダが表示されません。
また、最大までズームすると下の写真くらいの違いがでます。ただ、ズーム機能が活躍するのって、「料理の写真を撮るときに手の影を含めないで済む」といったシーンが多いので、こだわりが強くなければXRでもさほど困らないでしょう。
一方のポートレート撮影では、XRが望遠カメラを使わないために、撮影モードを切り替えたときにレンズが切り替わらず、画角が変わりません。
これ、何を言ってるかよくわからない人もいると思うので、ざっくり図解してみました。
そもそもiPhone XSやXS Maxのように、デュアルカメラを搭載しているモデルでは、撮影画面を「ポートレート」に切り替えると望遠カメラに切り替わります。すると、撮影できる距離が変わるんです。「写真」モードで人物を撮影をしていて、追加で「そうだポートレートモードでも撮っておこう」なんて思うと、ちょっと離れてもう一度構図を作り直さなければいけない、なんて事態がよく起こります。
これがiPhone XRの場合だと、「ポートレート」に切り替えても広角カメラのままなので、画面の画角が変わらず、そのまま撮影できてラッキーなんてことも…。もちろん、ポートレートが使える距離は決まっているので、「写真」モードで撮影していた距離がポートレートにぴったりでないと、こう都合よくはいかないんですけれどね。むしろ「もっと近づいて」と表示されることもあるでしょうが、それでも「もっと離れて」よりは撮りやすい。
それに、経験則的に「ポートレートも撮っておこうか」なんて思考になるときには、大抵適切な距離で構図を作っていることが多いので、筆者の場合は意外と上の図のような例が当てはまります。人によってはXSよりもXRのポートレートの方が使いやすいと感じるかもしれませんよ。
また、広角レンズを用いて撮影するため、望遠レンズでのポートレートよりも僅かに背景を広く含めた構図になります。XSとの写り方を比較すると下のようになりました。撮影位置が違うため、少しの角度のズレがあることはご了承いただきたいですが、それでも結構見え方が違います。
ちなみにXRで撮影した写真のぼけ味に注目すると、「26mm相当の広角レンズで撮った時にはこんな感じでボケる」というのが上手く再現されています。XSのものと比べると、違いがわかりますね。
最後にふたつだけ注意点があります。ひとつ目は、XRだと人物以外をポートレートモードで撮影できないということ。モノをポートレートで撮影しようとすると「誰も検知されませんでした」とアラートが出てしまいます。このまま撮っても普通の写真にしかなりません。
ふたつ目は「ポートレートライティング」で「ステージ照明/ステージ照明(モノ)」を選択できないこと。ポートレートで撮影した写真の背景を黒くできる機能です。
もし、こうした撮影を期待している人は、XS/XS Maxの方を選ぶと良いかもしれません。ただ、筆者としては、人以外をiPhoneのポートレートモードで撮る機会がほぼないですし、あんまり困らないかなぁ…。ちなみに、ステージ照明はインカメラならXRでも使えますので、こちらも支障ないはず。
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そのほかTrueDepthカメラシステムに関するFace IDやインカメラの撮影機能はXS/XS Maxと共通しています。また、Apple Payの店頭支払いも同様に可能です。この記事でまだ触れていない差を挙げるとすれば、防水防塵性能がIP67(XS/XS MaxはIP68)であることくらい。機能不足で困ることはまずありません。
iPhone XRは、Xシリーズの中では割安なことが魅力です。しかし、それでも9万円するので、決して廉価モデルという品質ではありません。今回取り上げたような諸々の注意点が気にならない人にとっては、よい狙いどころと言えるでしょう。
最後になりましたが、カラーは「ブルー」「ホワイト」「ブラック」「イエロー」「コーラル」「(Product)Red」の6種類から選択できます。筆者は「コーラル」の鮮やかさに惹かれているのですが、皆さんは何色が気になりますか?
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(取材・文/井上 晃 端末撮影/高原マサキ<TK.c>)
スマートフォン関連の記事を中心に、スマートウォッチ、ウエアラブルデバイス、ロボットなど、多岐にわたる記事を雑誌やWebメディアへ寄稿。雑誌・ムックの編集にも携わる。モットーは「実際に触った・見た人だけが分かる情報を伝える」こと。編集プロダクション「ゴーズ」所属。