【ジャガー E-PACE試乗】待望の180馬力ディーゼルが上陸!加速は力強く高速巡航は快適

■攻めの姿勢から生まれた最も身近なジャガー

今やすっかり人気カテゴリーとなったSUV。国内の自動車メーカーはもちろんのこと、ポルシェやアルファロメオといった海外のスポーツカーブランドも積極的に新型モデルを投入しており、まさに群雄割拠の様相を呈しています。ジャガーも、ミドルクラスのF-PACEに次いで、コンパクトクラスのE-PACEを投入。さらには、電気自動車「I-PACE(アイ・ペイス)」もリリースするなど“攻め”の姿勢を続けています。

今回の主役であるE-PACEは、全長4410mm、全幅1900mm、全高1650mmと、レクサス「RX」やマツダ「CX-5」より短く、ややワイドなボディをまとっています。日本において“コンパクト”と呼ぶにはやや抵抗を感じるボディサイズですが、都市部でも取り回しに苦労しないサイズといえるでしょう。また、ベースグレードは451万円〜という価格を実現しており、ジャガーのラインナップにおいて、身近な存在であるのも間違いありません。

搭載されるエンジンは、ジャガーとランドローバーが開発・製造を手掛ける新世代ユニット“インジニウム”で、横向きにレイアウト。日本向けには、最高出力249馬力と300馬力を発生する2種類のガソリンエンジンと、180馬力のディーゼルエンジンが選ばれています。また、日本仕様のトランスミッションは9速ATで、駆動方式は全グレードともAWD。“スタビリティコントロール”や“トルクベクタリングバイブレーキ”といった電子デバイスも、全グレードに標準装備されています。

また、装備面も充実しており、歩行者検知機能付きの自動緊急ブレーキや“レーンキーピングアシスト”といった安全装備は全グレードに標準。さらに上位グレードでは“アダプティブクルーズコントロール”やスマートキーも備わります。インフォテインメント系は、センターコンソールにナビやオーディオに対応した10.2インチのスクリーンが備わるほか、上位グレードにはフルTFT液晶メーターも標準装備となります。

■スポーティさと実用性を兼備したエクステリア&インテリア

E-PACEのエクステリアは、2ドアスポーツカーの「Fタイプ」をモチーフとする意匠が散りばめられていて、兄貴分であるF-PACEよりもスポーティで若々しい印象にまとめられています。

ボディ形状そのものはプレーンですが、奇をてらったプレスラインや過剰な装飾に頼らない点に対し、好印象を抱かれる人は多いことでしょう。また、フェンダーへと伸びる切れ長のヘッドライトはその象徴ですが、たくましく盛り上がったリアフェンダーと、大きく傾斜したリアウインドウ、美しい弧を描くサイドウインドウなど、Fタイプを想起させるディテールも、しっかりアクセントとして効いています。

インテリアに目を移すと、こちらもFタイプに通じる、スポーティなイメージを生かした空間となっています。助手席側にアシストグリップを設けることで、ドライバーのためのスペースは「ここまで!」と明示されたダッシュボードデザインはその一例ですが、スイッチ類を始めとした操作系やその意匠も、同様のテイストでまとめられているのが特徴です。

そして、ドライバースシートに収まり、まず感心させられるのが、ジャガーの空間設計の巧みさ。SUVですから、ヒップポイントは高めに設定されていますが、体から前に伸びる手足の角度はスポーツカーやサルーンのそれに近く、自然なドライビングポジションをとることができます。一方、キャビンの天地が足りないとか、タイトに感じるといったことはなく、フロントシートのスペースに関しては、程良い包まれ感という塩梅です。

シートそのものはサイズたっぷりで、座り心地も硬すぎず柔らかすぎずと、基本設計は良好。最上位グレードの「HSE」(620万円)には、標準で18ウェイの電動調整機能が備わりますが、今回の試乗車にはさらに、総額240万円ものオプション装備が追加されており、その中のひとつである前席のヒーター&クーラー機能の恩恵で、ちょっと背中が汗ばむような気候の中でも快適に過ごすことができました。

また、空間作りの上手さという点においては、リアシートとラゲッジスペースも印象的。2680mmというホイールベースは、ボディサイズからすると標準的な数値ですが、リアシートの足下スペースは、身長180cmの筆者にも十分で、リラックスした姿勢をとることができました。さらにラゲッジスペースは、通常時で577L、リアシートを畳むと最大1234Lという容量を確保しており、大きめのスーツケースやレジャー用品も積み込めます。

一見、デザイン優先のクルマに思えるE-PACEですが、その中に十分な実用性を備えているのも近年のジャガー車の特徴であり、長所でもあるのです。

■気になるディーゼルエンジン、その感触と走りは?

E-PACEは、ランドローバーの「レンジローバー イヴォーク」とプラットフォームやドライブトレーンを共有するモデルで、新たに上陸したディーゼル仕様に搭載される排気量1999ccの直列4気筒ディーゼルターボエンジンも、先行採用されたイヴォークに搭載されたものと同じです。ジャガーとランドローバーが開発した新世代のディーゼルエンジン“インジニウム”シリーズのひとつであり、本国には150馬力、180馬力、240馬力の3仕様が設定されていますが、E-PACE、イヴォークともに、日本市場向けには180馬力仕様が選ばれています。

エンジンを始動させると「ルルル…」とディーゼルエンジンらしい軽いハミングが聞こえてきます。アイドリングや低速域に限れば、ガソリン車よりも明確にエンジンの存在を感じますが、音量としてはいずれも、気になるほどではありません。

とはいえ、キャビン内で感じる音の特性は若干異なっていて、ガソリン車では右足の動きに比例してサウンドが高まりますが、ディーゼルは発進時こそ音量が増すものの、それ以降の領域では速度が上昇しても、音量・音質とも大きな変化はありません。音だけでクルマのキャラクターや使い方を判断することはできませんが、E-PACEでスポーツドライビングの高揚感を味わいたいならガソリンモデル、快適なロングクルーズを楽しみたいならディーゼルモデル、という選択がベターかもしれません。

そんなディーゼル仕様ですが、1920kgという車重に対し「180馬力ではちょっと力不足なのでは?」と感じられるかもしせん。でも実際は、動力性能としては十分以上。ただし、昨今の燃費・環境対策もあってか“ジャガー ドライブ コントール”と呼ばれるドライブモードのポジションが「エコ」や「コンフォート」の場合、ギヤのシフトアップが早く、低速での反応も穏やかなため「発進時にもうひと声、加速が俊敏なら…」と感じられるシーンがあったのも事実です。一方で、エンジンの回転計が1800回転を指す辺りからのトルク感と加速はなかなか痛快で、周囲のクルマをたちまち後方に追いやることも可能です。

ちなみに、ドライブモードで「ダイナミック」をセレクトすると、発進時から力強い加速を披露してくれますし、ステアリングもよりダイレクトな反応を見せてくれます。本来は、ワインディングなどを楽しむためのモードなのでしょうが、キビキビ軽快でスポーティな走りは、ストップ&ゴーを繰り返す市街地のドライブにも適していると感じました。

このように、普段は穏やかだけど打てば響く…、いや、踏めば応えてくれるという性格は、ジャガーの伝統であり、美点のひとつ。エクステリアやインテリアは大胆な変貌を遂げ、SUVという新ジャンルのモデルではありますが、モデルの別なくドライビングの楽しさをしっかりと追求するジャガーの姿勢は、しっかりと受け継がれているようです。確かに、全域でキビキビとした走りを見せるガソリンモデルに対し、ディーゼルはやや穏やかなキャラクターではありますが、ファミリーでも使いたいし、レジャーなどでのロングクルーズも少なくない、という人にとっては、良き相棒となってくれそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆HSE 2.0 D180
ボディサイズ:L4410×W1900×H1650mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:1999cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:9速AT
最高出力:180馬力/4000回転
最大トルク:43.8kgf-m/1750~2500回転
価格:620万円

(文&写真/村田尚之)


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