【ホンダ CRF250ラリー試乗】オフから高速までカバー!ローダウン仕様で街乗りもラク

■あの“アフリカツイン”のクォーターバージョン!?

身長165cm(短足)の自分の場合、諸元表の“シート高”項目が800mmを超えると、頭の中で警告灯が点灯し、850mm超では赤信号がともります。「日常使いは無理」と、心の中で白旗を上げるのです(泣)。

そんな個人的な基準で話を進めるのはナンですが、ホンダ「CRF250ラリー Type LD ABS」のシート高は、830mm。「なんとか乗れるかも!?」と期待させる数値です。いうまでもなく、Type LDの“LD”とは、ローダウン仕様の意味。ノーマルのCRF250ラリーのそれは895mmですから、なんと65mmもローダウンされています(感涙)!!

スイマセン、説明が前後しますが、CRF250ラリーは、ホンダのパリ・ダカ(現ダカールラリー)挑戦マシン、つまり競技車両である「CRF450ラリー」のイメージをくんだ市販デュアルパーパス。モデルの成り立ちとしては、250ccのオフロード車「CRF250L」を軸に、そのオンロード版の「CRF250M」があり、双方の派生車種として、さらに「CRF250ラリー」がファミリーに加わったカタチです。スーパー万能バイクたる“アフリカツイン”こと「CRF100Lアフリカツイン(アドベンチャースポーツ)」のクォーターバージョンというとらえ方もできますね。

CRF250ラリーは、不整地を延々とブッ飛ばすラリーレイドをイメージしているだけあって、CRF250LやCRF250Mとは一線を画す、全体にゴツめなスタイルを採ります。大型ウインドスクリーンとシュラウド(サイドカウル)がライダーへの風当たりを軽減し、腹の下にはアンダーカウルを抱いて不整地での走りに備えます。なんといっても、ゴーグルのように見える左右非対称のLEDランプが、独特のすごみを演出。

フロントには、43mmのブッ太い倒立サスがゴールドに輝いています! うーん、いかにも頼りになる感じ。ちなみにリアのサスペンションアームは、アルミ製となります。

実際、CRF250ラリーにまたがってみると、サスペンションが柔らかくてよく沈むので、830mmのスペック値ほどは“アウェイ感”(?)がありません。両足ともにつま先立ちにはなりますが、ちょっとバイクを傾ければ、指の付け根あたりまで地面に着けられます。車重が156kgに抑えられているのも、ありがたいところです。

スリムで着座位置の自由度が高いシート、手の前に設けられたナックルガード、幅広のフットペグ(ペダル)、そして、必要とあらば未舗装路で後輪ABSを殺せるカットボタンが、CRF250ラリーのキャラクターを強く乗り手に訴えます。足回りがなんだかスカスカなのは、ごついオフロード用ブーツを履いて走ることを想定しているからですね。

エンジンは、249ccの水冷4ストローク単気筒。ホンダの現行モデルでお馴染みの、76.0×55.0mmのボア×ストロークを持ち、最高出力24馬力/8500回転、最大トルク2.3kgf-m/6750回転を発生。

基本的に同じエンジンを積むロードスポーツたる「CB250R」のアウトプットが、27馬力/9000回転、2.3kgf-m/8000回転ですから、CRF250ラリーでは、グッと中低回転域に特性を振っています。停車時には右後ろのマフラーから、単気筒エンジンならではの、どこかのんきな排気音が響きます。

■土と砂の匂いを強く残しつつロングツーリングに対応

CRF250ラリーでいざ走り始めると、コレが予想以上にワイルド! 「バババババッ」とシングルシリンダーの鼓動を強く刻んで、いかにもトラクションを後輪にかけながら前へ進んで行きます。街乗りでは、4000~5000回転辺りに回転数を置いておくと、回転が比較的スムーズかつ余力十分で、走りやすいですね。

高めの着座位置ゆえ、視線はちょっとしたコマンドポジション。混雑した都会の道で有効で「ここら辺は4輪のSUVに通じる魅力があるなぁ」と漠然と思いました。個人的には、オフロードとは無縁の2輪ライフを送っていますが、オンロードでも、カーブでソフトな足回りを活かし、ボディを大きく傾けて曲がっていくと、CRF250ラリーの性能の一端に触れられた気がして、なんだかうれしくなります。ブロックタイヤゆえ、あまりハードに追い込むとちょっと危険な香りがしてきますが、前21インチ、後18インチのホイールが、大らかなスポーツ性を提供してくれます。

オン/オフ、どちらの道にも対応するCRF250ラリー。ホンダはデュアルパーパスと呼んでいますが、長い距離を走ることに重点を置く、いわゆる“アドベンチャー”にもカテゴライズできるバイクでしょう。同カテゴリーには、ツーリングスポーツの車高を上げ、多少のオフロードにも対応できるようにしたモデルが多い中、土と砂の匂いを強く残しながら、ロングツーリングに対応したCRF250ラリーは、ちょっと異色な存在です。

大型のスクリーンは高速道路でも効果を発揮し、ライダーの胸辺りの風を大幅にカットしてくれます。加えて、しなやかでストローク豊かなサスペンションゆえ、ハイスピードでの巡航は心地良いもの。いっそのこと、タイヤをオンロード用に替えたら「さらに快適になるのに…」などといったら“本当の”CRFユーザーに怒られるでしょうか。まあ、4輪の世界でも、SUVに乗って不整地に乗り入れるオーナーは少数派でしょうから、CRF250ラリーをオンロード仕様にするのも、もしかしたらアリかと…。

都会の砂漠を駆け抜けるラリーバイク。CRF250ラリーの価格は、ABSなしが64万8000円。ABS付きが70万2000円。Type LDことローダウン仕様も、価格は同じです。短い期間ながら、CRF250ラリー Type LDと過ごしてみて、高めのシート高にも「けっこう慣れるかも!?」と、根拠のない自信を抱いた今回。「次はノーマルのシート高にも挑戦してみようか!?」…って、挑戦する対象を間違えています!?

<SPECIFICATION>
☆CRF250ラリー Type LD ABS
ボディサイズ:L2175×W900×H1360mm
車重:156kg
エンジン:249cc 単気筒 DOHC
トランスミッション:6速MT
最高出力:24馬力/8500回転
最大トルク:2.3kgf-m/6750回転
価格:70万2000円

(文&写真/ダン・アオキ)


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