■BAドライバー×3の高音質性能に“カスタマイズ”の個性
Finalの「MAKE1」の基本は、有線イヤホンでBA(バランスド・アーマチュア)ドライバーを3基搭載するハイエンド仕様です。ステンレス製筐体鏡面磨き仕上げのボディも高級機の雰囲気を漂わせています。
この「MAKE1」、イヤホン単体で6万円近い価格というのも納得の高級仕様ですが、パッケージには、カスタム用のフィルターと工具が同梱されています。まずはデフォルトで聞いてから、音の好みに合わせてフィルターを付け替えて調整という仕組みです。
カスタマイズを始める前に、まずはデフォルトの音を聞いてみましょう。
いつもリファレンスにしている宇多田ヒカルの『あなた』を聴き込んでみると、密度感のある音で情報量を引き出しつつ音空間に個々に音を散りばめるイメージ。声を強く出す特性はなく、音に集中すると微細音まで聞き分けられます。低音もゴリっとした質感ですが、余計なボリューム感は一切ナシ。ノリ良く鳴らすタイプではなく、ひたすら真面目です。
デフォルトの音を聞くだけでも価格相応の良い音ですが、ここからが本番。さっそくひと手間加えいきましょう。
■ピンセットによるフィルター交換で77通りの音を作り出す
「MAKE1」の音質カスタマイズを始めていきます。
使うパーツは、“フィルターA”(無しを含めて11種類)、“フィルターB”(無しを含めて7種類)の合計77通り。“フィルターA”は主に高域を調整、“フィルターB”は主に低域をコントロールしますが、聴感上の音は相対的な聞こえ方で決まります。
交換に使う道具は付属のピンセットとアコースティック治具、そしてドライバーの3種類のみです。音質フィルターがどんな音の特性を持っているかはホームページに載っているので、フィルターの持つ音の特性を予習をして、方針を決めてカスタマイズしていきます。
(>> final「MAKE1 ーチューニングについてー」)
まずは、デフォルトの音と比べてボーカルの歌声をもっとキリと立った音にするために、高域を強める方向で“フィルターA”を“A-4”に付け替えてみます。
カスタムというと難しそうですが、ピンセットでフィルターを交換するだけなので、作業は数分で済むレベルです。
交換後に、先ほどと同じ宇多田ヒカルの『あなた』でサウンドを確認すると、ボーカルの声がハッキリと立ち上がる、キラキラ系。外出先で音楽を聴くとボーカルはクリアで聞き取りやすいんですが、静かな部屋では少し強すぎました。
続いて、声をもう一段だけナチュラルにするために“A-6”にし、今度は低音も増してみようと“フィルターB”を“B-3”へと交換。
今度のセッティングでは、声はデフォルトに近い形。そこにクリアを加えて、少し立ち上がりに硬さを増しています。一方の低音は、流行りのイヤホン程度に量感を出しつつ、低音の中での響きの質感も出てくるバランス。これはこれで、結構アリです。
少し方向性を変えてみたらどうかな? と高域をデフォルト以下に抑えた“A-8”にしつつ、低域MAXの“B-6”も組み合わせてみます。すると、声の尖りは相当落ち、情報量勝負に。ただしヌケの良さは無くなります。一方、“B-6”フィルターの効果で低音は常に乗るようになり、重低音イヤホン風に。
ここまで来たら最後までカスタムしてみようと、高域はデフォルトより1段上の“A-6”に戻しつつ、“B-1”で低音を増す組み合わせ。声に若干立体感を出しつつ、低音はひと味出る程度の強さのバランスで、スパイスも効かせる。ここで概ね納得できるバランスに落ち着きました。
「MAKE1」には標準パーツ以外のカスタムとして、付属ドライバーで筐体を開けて、中にマスキングテープを貼るカスタマイズもできます。ここまで始めるともうカスタム幅は無限大!
ワイヤレスイヤホンに人気が集まる中、有線イヤホンは高音質を極める方向性を強めつつあります。Finalの「MAKE1」は、まさにそんな趣味を突き詰めたイヤホン。これで本当に自分好みの音にたどり着けるなら、約6万円のお値段にも納得できますね!
>> final「MAKE1」
>> [連載]イヤホンレビュー
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(取材・文/折原一也)
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