【日産 ノートe-POWER AUTECH試乗】人気車の“裏メニュー”!洗練された走りは欧州車も顔負け

■AUTECHはスポーティ指向のプレミアムモデル

「ここのレストランは普通の料理も美味しいけれど、実はこんなに魅力的な“裏メニュー”もあったのか!?」。そういうと、開発チームの皆さんに怒られそうですが、日産自動車のノートe-POWER AUTECH スポーツスペックは、ひと言で表現するならそんな“裏メニュー”的なクルマといえます。

現行モデルのノートがデビューしたのは、2012年。以来、メカニズムの改良やグレードの見直し、カスタムモデルの追加などを重ねつつ、バリエーションの拡充を図ってきました。2018年7月の仕様変更を経た現在では、パワーユニットはガソリンエンジンとe-POWER、駆動方式は各々にFFと4WDを用意。グレード展開も、標準系モデルと上質な装備の「メダリスト」系モデルが用意されるほか、SUV風の装備が与えられた「C-GEAR」、スポーツ性能を追求した「NISMO(ニスモ)」系モデルなど、多彩なラインナップを展開しています。

そこへ新たに加わったのが、AUTECHシリーズ。そのネーミングを聞いて「ピン」と来たクルマ好きも多いことでしょう。AUTECHは、カスタマイズカーや特装車を手掛ける日産自動車のグループ企業であり、NISMOと並ぶサブブランドとして知られています。つまり、ノートAUTECHは、メーカー直系のカスタマイズカーであり、スポーティ指向のプレミアムなモデルという位置づけなのです。

■AUTECHに施されるカスタマイズメニューとは?

数々のカスタマイズモデルを手掛けてきたAUTECHですが、社名をグレード名として掲げるモデルは、2018年1月に発売された「セレナAUTECH」に続き、ノートが2車種目。その仕立て方はセレナに通じる手法で、ブランドのアイコニックカラーであるブルーを随所にあしらっているほか、エレガントさとスポーティさを追求したディテールを採用しているのが特徴です。

エクステリアでは、メタル調フィニッシュが施されたドット柄の専用グリルのほか、バンパーやリアバンパーフィニッシャー、エンブレムなども専用品が装着されます。また、15インチサイズのアルミホイールには、切削光輝仕上げが施された専用デザインを採用するなど、凛々しさを増しています。

インテリアは、ブラック&ブルーのコンビカラーをあしらった専用の本革ステアリングや、ブルーのフィニッシャーを装着したエアコン吹き出し口を採用。さらにシート地は、AUTECHのロゴが刺繍されたスエード調トリコットとするなど、随所に専用のディテールを採用しています。

全体的に見ると、スポーティな雰囲気を主張しつつも、レッドをアイコニックカラーとするNISMO系と比べると、控えめで大人向きのコーディネート、といったところでしょうか。標準モデルでは満足できないけれど、NISMOはちょっと派手過ぎる、という方に、AUTECHはピッタリだと思います。

しかし“プレミアスポーティ”を謳うAUTECHモデルの魅力といえば、やはり走りの完成度。内外装に続く特別装備のリストを見ると、その真価はe-POWER AUTECH スポーツスペックでこそ体験できるものといえそうです。

スポーツスペックでは、専用チューニングが施された電動パワーステアリングやサスペンションのほか“VCM(ヴィークル・コントロール・モジュール)”と呼ばれる専用チューニングの制御用コンピュータを装着。フロントクロスバーや前後サスペンションメンバーステー、トンネルステー、リヤクロスバーなど、ボディ補強も施され、さらに、タイヤ&ホイールも16インチへサイズアップされるなど、なかなか手の込んだ内容となっています。

こうしたメカニズム面のチューニングはハードルが高く、クルマを手に入れた後では簡単に手を出せるものではありませし、メーカー直系ブランドのカスタマイズですから、車検やメンテナンスで手間が掛かりにくいのもメリットといえるでしょう。

■ガッチリしているのに洗練されたスポーツスペックの走り

スポーティやチューニングといった文字を見ると、ノートe-POWER AUTECH スポーツスペックはハードで荒々しい走りの持ち主、と想像してしまいそうですが、そんなことはありません。

確かに、専用VCMによってパワフルさや伸びやかさが増していて、「ノーマル」、「S」、「ECO」と3つの走行モードが選べる“e-POWER Drive”でノーマルやSモードを選択すれば、「これぞモーターの力強さだよ!」と思わずヒザを打つほどの加速を体験できます。また、回生ブレーキが強く効き、パワー感もアップするSモードでは、アクセルペダルの反応がひと際リニアになり、右足のアクションだけでスポーティかつ、意のままの加減速を味わうことができます。

しかし、スポーツスペックにおいて最も注目すべきは、パワフルなパワーユニットを支えるシャーシ。フロア回りやサスペンションメンバーなど、ボディの要所を補強したことで、クルマそのものの剛性感が向上しています。さらに、チューニングが施されたサスペンションの効果をしっかり引き出せており、乗り心地は程良く引き締まっているのに、硬いと感じることがありません。例えば、大きめの目地段差を通過しても、とがった衝撃は感じませんし、不快な振動が残ることもありません。また、ステアリング操作に対するクルマの反応もスムーズで、フィーリングもよりダイレクトになっています。

全体的な印象としては、ガッチリしているのに角のない乗り心地で、ヨーロッパブランドのプレミアムコンパクトカーに通じる洗練された乗り味、感触といえるでしょう。

とはいえ、人間とは勝手なもので、一度スポーツスペックの走りを味わってしまうと、ちょっとしたリクエストが頭を過ぎるのです…。ひとつは、ボディや足回りがしっかりしているからこそ、シートが相対的に役不足に感じてしまいます。NISMOには、シェイプの深いレカロ社製のスポーツシートがオプションで用意されていますが、そこまでのスポーツシートでなくとも、もうひと声ランクアップしたシートを選べればいいのに、と思ってしまいます。

もうひとつは、ボディや足回りをここまで洗練できるなら、標準モデルにもぜひ、と思ってしまうことでしょうか。とはいえ、ベースとなるe-POWERの「X」グレードが202万1760円であるのに対し、e-POWER AUTECHは226万4760円、同スポーツスペックは245万3760円と、内容を考えれば買い得感のある価格設定ではありますが、コンパクトカーにとって20万円アップは問題外の話なのかも。もちろん、だからこそAUTECHの存在意義や価値があるのでしょうし、コンパクトだけど上質でスポーティという通好みな仕立てを好む方にとっては、最高の“裏メニュー”といえそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆e-POWER AUTECH スポーツスペック
ボディサイズ:L4130×W1695×H1520mm
車重:1250kg
駆動方式:FF
エンジン:1198cc 直列3気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:79馬力/5400回転
エンジン最大トルク:10.5kgf-m/3600~5200回転
モーター最大出力:109馬力/3008~1万回転
モーター最大トルク:25.9kgf-m/0~3008回転
価格:245万3760円

(文&写真/村田尚之)


[関連記事]
【日産 ノート e-POWER ニスモ試乗】EVなのにクルマ好き納得の楽しい走り!

【日産ワークス“NISMO”試乗】エコなノートe-POWERの走りがアグレッシブに!

【日産 セレナAUTECH試乗】ミニバンだけど走りは爽快!クルマ好きにとっての“最後の砦”!?


トップページヘ

この記事のタイトルとURLをコピーする

関連するキーワード