■はっきりとモーターのアシストを実感
XVアドバンスが搭載する2リッターの水平対向4気筒直噴エンジンは、最高出力145馬力/最大トルク19.2kgf-mを発生。これを、スバル独自の“リニアトロニックCVT”を介し、同じくスバル独創の“シンメトリカルAWD”によって路面へと伝える。
e-BOXERのモーターはCVTとAWDメカとの間に置かれるが、最高出力は13.6馬力、最大トルクは6.6kgf-mと、パワー、トルクともに控えめ。このモーターは、118Vの電圧で駆動および回生をし、ボディ後方に置かれたリチウムイオンバッテリーに電力を出し入れする。また、それとは別に、12Vで駆動するISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)が用意され、アイドリングストップからの復帰に利用。さらに通常のエンジン始動用として、別途、セルも搭載している。
このようにe-BOXERは、いわゆるマイルドハイブリッド車に比べると仕組みが複雑だ。その上、燃費の伸び代は小さいので、決して高効率とはいいにくい。だが、その走りは、同じe-BOXERを搭載するフォレスターのアドバンスよりも、はっきりとモーターのアシストを感じられるものとなっていて、これがこのモデルの大きな魅力になっている。
XVアドバンスの走りにおいて、モーターのアシストをフォレスター以上に感じられる最大の理由は、XVアドバンスの車重が、フォレスターのアドバンスより約90kgも軽いこと。わずか6.6kgf-mというさほど最大トルクの大きくないモーターでも、停止している状態からの発進時や、アイドリングストップ状態からの再始動、そして、加速時のアシストなど、あらゆる面でフォレスターのアドバンスよりも“電化”された乗り物の感覚を伝えてくる。
実際、XVアドバンスで街中や高速道路、ワインディングロードなど、さまざまなシーンを走ってみたが、そうした際のエネルギーフローを車載モニターで見ていると、e-BOXERは頻繁に、リチウムイオンバッテリーに電気を出し入れしているのが分かる。バッテリーの容量は1kWと小さいため、長い登り坂でアクセルペダルを踏み込んでいると、すぐに電力がなくなってしまうが、逆に、下り坂などでは効率良く回生し、すぐにフル充電状態になる。
また、街中を走るような状況では、ほんのわずかな間だけだが、発進時にモーターの力強さと滑らかさを感じられるので、普通のエンジン車とは異なる乗り物であると強く感じられる。そして、アイドリングストップ状態からも、滑らかに再始動していく印象だ。
■アイサイトのタイムラグをモーターが解消
XVアドバンスでドライブ中、なるほど納得だったのが、e-BOXERとスバル独自の運転支援システム“アイサイトVer.3”との親和性の高さだ。XVアドバンスの場合、「インプレッサ」や「レヴォーグ」などに搭載される最新バージョン“アイサイト・ツーリングアシスト”にアップデートしていない点が残念だが、電動駆動のe-BOXERにより、アイサイトの作動レスポンスが明確に向上している。
例えば、前走車に追従して走行する際、前走車は当然、一定のスピードで走っているわけではなく、交通の状況に応じて加減速を繰り返す。アイサイトVer.3はそんな前走車の動きをカメラでチェックし、前走車の動きに合わせて自車の加減速を行う仕組みだ。
その際、従来のエンジン車では、前走車の減速に合わせて自車も減速し、再び前走車が再加速するような状況において、確実に1テンポ、いや2テンポくらいのタイムラグを経た後に、自車の再加速が始まっていた。これは、前走車の再加速をカメラが認識し、前走車が加速したと判断。アクセルを開けるよう信号を送り、これを受け取ったエンジン側が回転を上げ、実際に加速していく…という一連の動きから生じるタイムラグがあったため。
しかしe-BOXERの場合、このようなシーンにおいて、エンジンの回転数が高まる前に、モーターが即座に反応して加速が始まる。そこに、回転数の高まったエンジンの力が加わるため、エンジン車で感じられたようなタイムラグが解消されているのだ。この理屈は、フォレスターのアドバンスも同じだが、やはりXVアドバンスは車重が軽い分、こうしたシーンでよりキビキビ反応する様子が確認できた。
またXVアドバンスには、ハンドルに“エコクルーズ”ボタンが設定されていることも見逃せない。
これを押せば、EVだけで走行するモードの領域が、通常の40km/h以下から80km/h以下へと拡大。また、エアコンの温度設定をやや緩慢にしてコンプレッサーの作動負担を軽減するほか、アイサイトVer.3での追従時における加減速を穏やかにするなどし、燃費向上に貢献してくれるのだ。
■北米で発表されたPHEVの日本導入に期待
XVに関しては、今回紹介したアドバンスのほかに、さらに新たな電動化モデルが加わったことにも触れておきたい。それが、現状、日本市場での販売予定はないとされているPHEV(プラグインハイブリッド車)だ。現地で「クロストレック」と呼ばれる北米仕様の「XV」に設定された「クロストレック ハイブリッド」は、XVアドバンスとは全く別のドライブトレーンを採用している。
クロストレック ハイブリッドは、2リッター水平対向4気筒エンジンに組み合わせるトランスミッションが、資本関係にあるトヨタの“THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)”をベースに開発された、ふたつのモーター&ジェネレーターを搭載するハイブリッドシステムに置き換えられているのが特徴。ちなみに、モーター&ジェネレーターは118馬力/20.6kgf-mを発生するので、力強いモーターアシストを得られるだろうし、燃費向上の効果も期待できる。
今回試乗したXVアドバンスは、現状、XVのラインナップ中、最上位に位置づけられていて、確かにその走りには、ガソリン仕様のXVや、フォレスターのアドバンス以上に未来感を感じられた。しかし、アメリカで発表されたPHEVの存在を知ってしまった今となっては、日本市場にもそちらをいち早く導入して欲しいと思う。
<SPECIFICATIONS>
☆アドバンス
ボディサイズ:L4465×W1800×H1550mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:1995cc 水平対向4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(リニアトロニック)
エンジン最高出力:145馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kgf-m/4000回転
モーター最高出力:13.6馬力
モーター最大トルク:6.6kgf-m
価格:282万9600円
(文/河口まなぶ 写真/&GP編集部)
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