■機械式の立体駐車場にも収まるボディサイズ
UXのコンセプトは「クリエイティブ・アーバン・クロスオーバー」であり、UXという車名自体がU=アーバン、X=クロスオーバーを指す。どの辺りがアーバン=都会的なのかといえば、とにもかくにもそのボディサイズだ。
全長4495mm、全幅1840mm、全高1540mmというボディサイズは、レクサスが展開するSUVの中で最も小さく、2011年誕生と設計が古いハッチバックの「CT」を除く新世代レクサスの中でも、一番コンパクトなボディサイズとなる。
東京を始めとする都市部には、狭い道や小さな駐車場が多い。しかも、家族構成がミニマム化していることもあって“軽自動車ではない小さなクルマ”を求める声が高まっている。また、マンションなどの集合住宅では、最大全幅1850mm、最大全高1550mmという機械式の立体駐車場が多いが、UXはその中に難なく収まるのも強みだ。
UXはボディがコンパクトな分、車内スペースはさほど広くない。リアシートには大人2名が難なく座れるものの、小さなお子さんの世話をするにはちょっと狭く、ファミリーユースには物足りない。
また、一部で“ゴルフバッグを横向きに積載できない“ことが話題となっているUXのラゲッジスペースは、床下の収納部を除けば容量220Lと限られていて、そこへアクセスするリアゲートの開口部も、最近の使い勝手を重視したクルマと比べると驚くほど狭い。
しかしそうした点も、アーバン・クロスオーバーならではの割り切りといえる。カップルのためのSUV、すなわち、1990年代のクーペのような存在だと思えば、UXのキャラクターを理解しやすいのではないだろうか。最近の個性派コンパクトSUVに共通する話だが、このUXもまた、決して“ドアが4枚ついているから実用性に優れたクルマ”ではなく、リアシートやラゲッジスペースを割り切った、あくまで雰囲気重視のモデルなのである。
■エンジン、トランスミッションともに日本市場に初投入
UXで注目すべき、ふたつめのポイントは、日本初登場となったパワートレーンだ。用意される心臓部は2種類で、2リッターの自然吸気ガソリンエンジンと、そこにモーターをプラスしたハイブリッド。いずれも、これまでレクサスやトヨタが日本市場向けに展開していなかったメカニズムである。いずれにも共通するのは、走りのダイレクト感を重視していること。走りへのこだわりは、最新のレクサス車すべてに共通する特徴ともいえる。
自然吸気ガソリン車の「UX200」は、約40%という高水準の熱効率を実現した新開発エンジンに、“ダイレクトシフトCVT”と名づけられた新発想のCVTを組み合わせている。ダイレクトシフトCVTは、1速がカバーする領域を発進用の固定ギヤが担当し、2速以上の領域は、CVTによってカバーする仕組みで、そのメリットは、発進加速が鋭くなることと、CVTのギヤ比をハイギヤード化できることでワイドレンジ化が可能となり、燃費を向上させられる点にある。
ダイレクトシフトCVTは、トランスミッションとしてはCVT=無段変速機に位置づけられるものの、メカニズム的にみるとトルクコンバーター式ATに似た部分があり、また、1速ギヤとCVTとの切り替えをスムーズにするために、“シンクロメッシュ”と呼ばれるMT用の技術が採用されるなど、トピックの多いメカニズムだ。
実際に走ってみると、確かに“ダイレクトシフト”と銘打たれているだけのことはある。CVTは一般的に、アクセルペダルを踏んだ際のエンジン回転の高まりと、速度の上昇にズレがあり、それが走りの爽快感を失わせるイメージがある。しかしUX200は、アクセルペダルを踏んだ時のクルマの反応が良く、「これならCVTでもいいな」とさえ思えるリニアな走りを実現している。また、アクセルを踏み込んだ際の変速時には、“ステップ制御”と呼ばれる、あえて変速感をつけたシフトアップをすることで、加速のリズム感を高めているのも小気味よい走りにつながっている。
一方、「UX250h」に搭載される新開発のハイブリッド機構も、また興味深いものだ。2リッターエンジンと組み合わせた新開発のメカニズムで、従来、トヨタとレクサスの同クラスに多用されてきた、トヨタ「プリウス」の流れを組む1.8リッターエンジンを積むハイブリッド機構とは全くの別物。その狙いは、従来型ハイブリッドのウイークポイントとされてきた、動力性能とリニアな走行フィールを重視したもので、プリウス型のそれに比べると燃費性能こそわずかに劣るものの、走りへの評価が厳しい欧州マーケットでも通用するドライブフィーリングを目指して開発されている。
そんな開発背景を持つだけに新ユニットの実力はさすがで、アクセルペダルを踏んだ時の反応は、プリウス型のそれと比べて大きな違いを感じられた。特に、1000〜2000回転付近という、いわゆる追い越し加速の際などに多用する領域において加速のダイレクト感を味わえるのは、ドライバーにとって走る喜びにつながることだろう。
ちなみに、エンジンとモーターを組み合わせた際の最大パワーを示す“システム出力”がプリウス型の約1.5倍に及んでいるなど、絶対的な動力性能も格段に向上していることはいうまでもない。
■UXはまさに“身の丈に合ったレクサス”
こうして1日、さまざまな仕様のUXをドライブしてみて、イマドキの“プレミアムコンパクトカー”に備わる高い価値を、改めて実感できたように思う。従来の日本的な価値観からすれば、クルマのヒエラルキーは“高級車はボディサイズの大きいクルマ”という不文律があった。そのため、より上質な快適装備が欲しければ、必然的に、ボディサイズの大きなクルマを買う必要があったのだ。
しかし、レクサスの新星=UXは、そんな古い価値観や考えを完全に過去のものとし、“ボディは小さいけれど装備は充実。おまけに走りもいい”という、これまでの日本車にはない新しい立ち位置を、見事に確立している。
最近の都市生活では、“身の丈に合った暮らし”が一種のトレンドとなっている。例えば住宅は、広ければ広いほどいい、といわけではなく、立地の利便性が高く、必要十分な広さの物件を選ぶ人が増えている。同様にクルマも、車内スペースが広ければ広いほどいい、ラゲッジスペースが広ければ広いほどいい、という時代ではなくなりつつある。そんなイマドキのアーバン・ライフを送るためのパートナーとして、実用的なボディサイズに、充実した装備と爽快感ある走りを内包したUXのキャラクターは、実にマッチングがいいと思う。
<SPECIFICATIONS>
☆UX200“バージョンL”
ボディサイズ:L4495×W1840×H1540mm
車重:1500kg
駆動方式:FF
エンジン:1986cc 直列4気筒 DOHC
トランスミッション:CVT(ダイレクトシフトCVT)
最高出力:174馬力/6600回転
最大トルク:21.3kgf-m/4000~5200回転
価格:474万円
<SPECIFICATIONS>
☆UX250h“Fスポーツ”(FF)
ボディサイズ:L4495×W1840×H1540mm
車重:1570kg
駆動方式:FF
エンジン:1986cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(電気式無段変速機)
エンジン最高出力:146馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kgf-m/4400回転
モーター最高出力:109馬力
モーター最大トルク:20.6kgf-m
価格:478万円
<SPECIFICATIONS>
☆UX250h“Fスポーツ”(4WD)
ボディサイズ:L4495×W1840×H1540mm
車重:1630kg
駆動方式:4WD
エンジン:1986cc 直列4気筒 DOHC+モーター
トランスミッション:CVT(電気式無段変速機)
エンジン最高出力:146馬力/6000回転
エンジン最大トルク:19.2kgf-m/4400回転
フロントモーター最高出力:109馬力
フロントモーター最大トルク:20.6kgf-m
リアモーター最高出力:7馬力
リアモーター最大トルク:5.6kgf-m
価格:504万円
(文/工藤貴宏 写真/&GP編集部)
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