■中国仕様はエアコンでPM2.5を除去できる!?
広州モーターショーは、首都・北京や巨大都市・上海で開催されるショーと比べると、若干、格式が落ちますが、実際、現地へ行ってみると、「これが地方ショーなの!?」とビックリしてしまうほどの規模。広州は北京、上海に次ぐ中国3番目の都市で、人口は約1500万人。東京の人口が約1400万人なので、街の規模はほぼ同じくらいなのですが、じっくり見ようと思ったら1日では決して回れないほど、とても大規模なモーターショーでした。
そんな広州モーターショーを世界初公開の舞台に選んだ12代目の次期カローラセダンですが、実は現地では、2種類のモデルが披露されました。フロントマスクなどが直線基調のラインで構成され、メッキ類を多用してエレガントなルックスに仕上げたカローラセダンと、日本のカローラスポーツと同様、ハニカム形状のフロントグリルをあしらうことでスポーティに仕上げた「レビン」の2モデルです。
カローラとレビンの違いは、フロントとリアのデザイン。いずれも、トヨタ最新のハイブリッドシステムが搭載され、全グレードに中国市場向けのモデルとしては初めて、最新フェーズの安全支援システム“トヨタ・セーフティ・センス”が導入されています。
ちなみに、今回公開されたカローラは、中国、ヨーロッパ、アジア市場向けに展開されるモデル。対するレビンは、ネーミングこそ中国市場のみの展開となるそうですが、そのデザインは、北米、日本市場向けのモデルに採用されるといいます。
日本仕様のネーミングですが、現行モデルが「カローラアクシオ」と呼ばれているのと同様、カローラという冠は残しつつ、その後ろにサブネームを追加したものになると思われます。そして、先行したハッチバックのカローラスポーツと同様、12代目カローラセダンもスポーティな方向へと路線変更を図ることになるでしょう。そうなると気になるのが、このサブネームのこと。個人的には、広州モーターショーで同時発表されたレビンの名前の復活に期待したいのですが…。
カローラシリーズのチーフエンジニアを務められる小西良樹さんによると、中国では漫画『イニシャルD』などの影響から、(カローラ)レビン、「(スプリンター)トレノ」というネーミングは、とても知られた存在なのだとか。しかも、レビンは英語で稲妻を意味し、トレノはスペイン語で雷鳴を表しますが、そもそも中国の人々は、稲妻や雷鳴という言葉が大好きなのだそうです。
そこでトヨタは、中国市場向けカローラのスポーティ仕様として、レビンの名前を復活させているとのこと。でも、われわれ日本人も、レビンやトレノというネーミングは好きですし、スポーティな方向へと路線変更を目指す12代目には、とてもマッチした名前だと思うのですが…。もしかしてこの先、もっとスポーティなモデルが登場する際に、レビンやトレノの名称が使われる可能性があるのでしょうか?
さて、次期カローラセダンは、2019年春の北米や欧州マーケットでの発売を皮切りに、順次、世界150以上の国々で販売されるとのこと。ここ日本でも、2019年中の登場が予定されています。小西さんによると、12代目のカローラは「カッコ良く、乗って楽しく、つながるクルマ(=コネクティッドカー)にしたかった」とのこと。その上で「日本仕様は海外市場向けのモデルをそのまま導入するのではなく、日本のユーザーの使用シーンなどを想定し、取り回しの良さなどにこだわった専用モデルを開発中です」と話して下さいました。
ちなみに今回のショーモデルは、残念ながら各ウインドウが黒く塗られていて、車内が見えないようになっていましたが、基本的なインテリアデザインは、すでに発売されているカローラスポーツと同じなのだとか。ただし中央のディスプレイは、「プリウス」シリーズにも採用されている、縦型12.1インチの採用が検討されているようです。
同じくショーモデルには、大気汚染が深刻な中国市場向けとして、PM2.5 を除去できるエアコンシステムが採用されていました。専用のフィルターが付いていて、1分間ほどで車内の空気をクリーンにできる優れものなのだとか。日本仕様では、中国大陸から飛んでくるPM2.5の影響を考慮し、九州で販売されるモデルに搭載予定だといいます。でも、全国的に花粉症やアレルギー性疾患に悩む人が増えている現代だけに、九州向けだけでなく、日本全国で販売されるカローラすべてに、ぜひ採用して欲しいと思います。
(文/吉田由美 写真/吉田由美、トヨタ自動車)
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