■パワフルさと爽快さを兼備したガソリンターボ
2年ほど前、CX-5がフルモデルチェンジを受けた際の試乗会では、クルマとしての完成度の高さはもちろん、エンジンの違いやグレードごとのキャラクター分けの巧みさに感心させられ、思わずヒザを打ったものでした。マツダ車が開発コンセプトとして掲げる“走る歓び”において、新しいCX-5はどのグレードを選んでも、残念な思いをすることはなさそうだと感じたのです。
そんなCX-5に新設定されたSKYACTIV-G 2.5Tのスペックは、最高出力230馬力、最大トルク42.8kgf-mで、2.5リッター自然吸気ガソリンエンジンに比べ、約40馬力のパワーアップを実現。最大トルクも、定評ある2.2リッターのディーゼルターボと同等の力強さを確保しています。
気になるのはその走りですが、結論からいえば、ガソリンターボ車らしい爽快さや伸びやかさを感じられるのはもちろん、「ここぞ!」というシーンにおいては、パンチの効いた加速を楽しめるようになりました。
実は、試乗に先立ってスペックシートをチェックした時「ディーゼル車と共食いになるのでは?」という心配もありました。でもそれは、走り出して数百メートルで杞憂であったことに気づきました。アイドリング状態プラスαの領域からトルクがグッと立ち上がるディーゼルに対し、ガソリンターボ車はアクセルペダルを踏む右足の動きにリニアに呼応する印象。具体的には、2000回転弱から5000回転辺りにかけて、極めてスムーズに吹け上がり、伸びやかな加速感を味わえます。
ディーゼルターボも“燃焼の粒が細かい”といいますか、ディーゼルエンジンとしては滑らかな感触ですが、SKYACTIV-G 2.5Tはガソリンエンジンらしく、より精緻なフィーリングでありながら、淀みなくあふれ出るパワーが印象的です。また、スポーツカーのようではないものの、3000回転以上の領域では、ガソリンターボらしい胸のすく加速を堪能できますし、いわゆる、ターボラグのようなパワーの落ち込みや段差を感じることもないので、扱いやすさも高く評価できます。
クルマとしての扱いやすさという点において、昨今のマツダ車は、ハンドル操作に応じて駆動トルクを制御することで接地荷重を最適化し、スムーズで効率的な車両挙動を実現する独自の電子デバイス“GVC(G-ベクタリング コントロール)”が大きな効果を見せています。実は今回の改良では、このGVCも進化。ハンドルを戻す際の操作に応じて外輪のブレーキをわずかに作動させ、直進状態へ戻すための復元モーメントを与えることで、さらに安定性を向上させる“GVCプラス”が全グレードに採用されました。
GVCプラスの制御は実に緻密かつ自然で、その動作を運転中に感じることはできません。しかし、1.6トンという重量級かつ背の高いSUVであるにも関わらず、コーナーでの切り返しや交差点での右左折時などに、重さを感じるクルマの動き、すなわち、ワンテンポ遅れてやってくるゆらり、ぐらりといった不快な動きや、ハンドル操作とクルマの動きのちょっとしたズレといった違和感が全くありません。特に、ガソリンターボ車でワインディングをややハイペースで駆け抜けるシーンでは、クルマがひと回り軽く、小さく感じられるほど、ドライバーの意図に沿った走りを披露してくれます。ターボ過給による十分過ぎるパワーと相まって、走りの爽快さ、スポーティさにおいては、CX-5シリーズの頂点に立ったといっても過言ではないでしょう。
■装備類をグレードアップしたCX-5の特別仕様車
今回の商品改良では、ガソリンターボエンジンの追加と同時に、コネクティビティシステムである“マツダコネクト”がApple CarPlayやAndroid Autoに対応したほか、エアコン操作パネルなどのデザインが変更されています。
また、特別仕様車「エクスクルーシブ・モード」が設定されたのも、注目すべき点といえるでしょう。今回、テストドライブに連れ出したのはこの特別仕様車ですが、シート生地には滑らかな感触のナッパレザーが用いられるほか、フロントシートには不快な熱気を吸い出すシートベンチレーション機能を搭載。加飾パネルには本杢(ほんもく)を採用しているほか、室内照明を白色LEDとするなど、インテリアのグレードアップが図られています。さらにメーターも、中央(スピードメーター部)に7インチTFTメーターを採用するなど、CX-8の最上級グレードと同等の装備が与えられています。
ちなみに、ガソリンターボエンジンが用意されるのは、上位グレードである「Lパッケージ」とエクスクルーシブ・モードですが、いずれも装備は充実し、設えも上質。CX-5といえば、スポーティで品のいいSUVというイメージをお持ちの方も多いことでしょうが、SKYACTIV-G 2.5Tの搭載と特別仕様車の設定により、今回、そのキャラクターがより色濃くなったのは間違いありません。