C220dは、2014年7月に上陸した新型「Cクラス」に、2015年9月に追加された新グレード。2.2リッターのディーゼルターボエンジンを搭載したCクラスの大本命で、導入のタイミングにより日本では追加グレード扱いとなりましたが、ヨーロッパ諸国ではCクラスの主役を担っています。
このC220dには“ダイナミックセレクト”なる機能が備わっています。これは、エンジンのレスポンス、電子制御ショックアブソーバーの硬さ、ハンドリングなどを「コンフォート」「エコ」「スポーツ」「スポーツ+(プラス)」という4つのモードに変えられる機能。その狙いは、快適な乗り心地とアジリティ=敏捷さの両立で、ドライバーはまさに、4パターンの走りを“味変え”しながら楽しめるのです。
まずは、メルセデス・ベンツにとって“標準”の「コンフォート」に設定して走り出します。快適ですが、凡庸です。
メルセデス・ベンツ各車の走りの実力を計る際、原器とするのは3世代目W140型「Sクラス」。しかも「S600」です。まるで陸に上がってしまったクジラのような巨体をもち、見るからに重厚なイメージにも関わらず超絶機敏。今風にいえば、ワールドカップに出場した超一流ラガーマンのような俊敏性を宿すのです。
そこからメルセデスの“標準”に期待するのは「重厚ながらも敏捷」。がしかし、最新Cクラスのハンドリングは、どちらかといえば「軽快ながらも、まったり」。なのでここは潔く「エコ」モードに切り替えました。ディーゼルターボの美味しい回転域を使って、ストレスなく走れます。ストレスなくて燃費もいいんだから「エコ」で十分ですね。
そんな平和な凡庸が非凡へと変わったのが、「スポーツ」モードへ切り替えた時。
「ウソでしょ!」。ハンドリング激変です。率直にいえば少し人工的なテイスト。ステアリングホイールを操舵すると、どこかで誰かが「0」と「1」の信号に置き換えているのでは? と思えるデジタルライクなフィーリングです。いい換えるなら、ノイズの乗らないピュアでシャープなハンドリング。そんな鬼気迫るエッジ感が、スポーツクーペに乗っているかのように気分を上げてくれるのです。
なんでしょう、この高揚感。嫌いじゃありません、いやむしろ大好きです。
もはや「スポーツ」モードが標準でもいいのでは?(ちなみに「スポーツ+」はよりエッジが効いてますが、走行安定装置もキャンセルされちゃいます)。そうすると、Cクラスのキャラクターの本質はなんなのか? という難題に頭を悩ませざるを得なくなりますが、そんなことなどどうでも良くなってしまうほどの、エッジ・オブ・ザ・ナイフな感覚。
これは、ディーゼルターボエンジンのレスポンスが良いことも、無関係ではありません。最高出力こそ170馬力(125kW)と控え目ですが、40.8kg-m(400N・m)というぶっとい最大トルクを、わずか1400回転で発生。しかも、ただ力強いだけでなく、9速(!)のオートマチックトランスミッションが間断なくトルクを引き出すので、アクセルペダルの踏み加減によって、積極的に走行ラインをアレンジできる醍醐味もあります。
でも、でもですね、C220dの本当の“味変え”は、自動運転の入り口にある“インテリジェント・ドライブ”を起動させた時でした。
これは、6つのレーダーセンサーとステレオマルチパーパスカメラで周囲を監視。一定速度で走りつつ、前車との感覚が詰まったら速度を落とし、広がったら加速してくれる最先端機能。そのコントロールが実にスムーズなんです! うっかり車線を逸れそうになると、グググとステアリングを勝手に操作し、正しいレーンに戻そうとしてくれるんです。例えは下手ですが、まるで、ざる蕎麦を頼んだのに盛り蕎麦が来た時のような、ちょっとしたお得感。
コンフォートなドライブは“インテリジェント・ドライブ”に任せておきながら、自らステアリングを握る時は迷わず「スポーツ」モードを選んで走りを愉しむ…。そんなメリハリあるカーライフを簡単に実践できるC220d。いわば、経済性でも、環境性能でも、そして、ドライビングの気持ちよさでも、C220dはCクラスの大本命なのです。
来るべき自動運転時代に、いかにして運転の楽しさをドライバーに訴えるか? ひょっとしたらメルセデス・ベンツは、その答えのひとつとしてC220dを世に送り出した…というのは考えすぎでしょうか? ドライビングプレジャー万歳!
<SPECIFICATIONS>
☆C220d アバンギャルド
ボディサイズ:L4690×W1810×H1435mm
車重:1650kg
駆動方式:FR
エンジン:2142cc 直列4気筒DOHCディーゼル ターボ
最高出力:170馬力(125kW)/3000〜4200回転
最大トルク:40.8kg-m(400N・m)/1400〜2800回転
トランスミッション:9速AT
価格:559万円
(文&写真/ブンタ)
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