冒頭のジェスチャーコントロールや、リモートキーを使って、実車をあたかもラジコンカーのように動かして駐車させる“リモートコントロールパーキング”(2016年中旬に導入予定)など、目新しい機能が注目される6代目7シリーズ。ですが、クルマそのものは、むしろ堅実に開発されたな、という印象です。
先代モデルと同じ3070mm(Liは3210mm)のホイールベースに、わずかに長い(+19mm)ボディが載ります。といっても、全長5110mm(Liは5250mm)、全幅1900mm、全高1480mm(1485mm)と、絶対的には堂々としたサイズ。フラッグシップの威厳と実用性を両立させると、このくらいの大きさになるのでしょう。
ただし7シリーズのような高級車は、求められる装備の水準がドンドン高くなりますから、そのままモデルチェンジしては重くなる一方。そこでニューモデルでは、アルミ合金とスチール、そしてカーボンファイバー強化樹脂を組み合わせた“カーボンコア”ボディを採用。欧州仕様を例にとると、先代モデル比で130kgの軽量化を果たしたのだとか。日本に輸入される740iも、カタログ重量1880kgと、大幅に軽くなっています。
今回試乗できたのは、BWM740i M Sport。前後バンパーがよりスポーティな形状になり、サイドスカートを装着したモデルです。ドアを開けると、サイドシルに「M」の字。インテリアには、豪華で柔らかいエクスクルーシブ・ナッパ・レザーが奢られます。
いざ走り始めると、ストレート6が粛々と回り、8速ATが滑らかにギヤを上げていく。古くからのBMW好きなら、「コレだよ、コレコレ!」とうれしくなるフィーリングです。
ニュー7シリーズは、全グレードとも4輪にエアスプリングを備えた足まわりを採用。フラットな乗り心地でありながら、しっかりと路面からの情報は伝えます。ステレオカメラが、前方の道路の凸凹を確認。情報を得た電子制御可変ダンパーが素早く硬軟を調整するので、むやみにソフトな設定にしなくても快適性を確保できるのです。
大柄なエクスクルーシブモデルの試乗コースとしては「いかがなものか?」と感じた峠道を、740iは軽快に走っていきます。狭い道幅ゆえ、対向車とすれ違う際には1900mmの車幅を意識しますが、それ以外は、軽やかなスポーツセダンそのもの。全長5m超、車重2トン弱のクルマとは思えない走りに、ステアリングホイールを左右に回しながら、“駆け抜ける歓び”を堪能してしまいました。
21世紀のフラッグシップカーらしく、電子デバイスを満載したニュー7シリーズ。各種設定、コントロールのために、リアシートにはタブレット端末を備えるほどです。快適性から安全面まで、長く細かい装備リストを誇るモデルではありますが、クルマとして本質的な部分でも手抜きはなし。バイエルンの矜恃を感じさせるトップセダンでした。
<SPECIFICATIONS>
☆740i M Sport
ボディサイズ:L5110×W1900×H1480mm
車重:1900kg(リアコンフォートシート装着車:1930kg)
駆動方式:FR
エンジン:2997cc 直列6気筒DOHC ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:326馬力/5500回転
最大トルク:45.9kg-m/1380〜5500回転
価格:1288万円
(文&写真/ダン・アオキ)
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