コーヒーが直面する危機的未来を救う鍵と4つの証言[コスタリカコーヒーツアー後編]

■証言3「生産者のためにある制度です」

コスタリカコーヒーツアーの最終日となる3日目は、スターバックスの自社農園、ハシエンダ アルサシアです。ここで、コーヒーのエクスポーター(輸出業者)であるエリックさんから、気になっていた“C.A.F.E. プラクティス”についての説明がありました。

▲コスタリカでコリ・カフェというコーヒー輸出業を営むエリックさん(写真右)。コーヒー生産者組合と購買者(スターバックスなど)を結ぶ役割を担っている。もちろんコーヒー豆の品質を見極める目はたしかだ

「購買者側の目となり、コスタリカの最高のコーヒーを調達したり“C.A.F.E. プラクティス”に従って農園を支援したりしています。やはり最も重要なのは品質です。またコスタリカは政府認証である“Café de Costa Rica”があるおかげで、価格の85%が生産者に渡るようになっています。50%未満という国もある中でこれは素晴らしいことです」

「ちなみに“C.A.F.E. プラクティス”は、とても評判がいいんですよ。これはスターバックスのためにあるのではなく、やはり生産者のためにある制度だといえますね。レインフォレスト・アライアンスの認証と同じくらい厳しい。多くの生産者に認証を受けてほしいですね」

レインフォレスト・アライアンスとは、カエルのマークで有名なコーヒーの認証機関です。コーヒーショップで見たことがある人もいるのではないでしょうか。地球環境保護や農家の持続可能な生活を確保するために作られた認証で、森林や生態系の保護、土壌や水資源の保存、労働環境の向上など、厳しい基準を満たした農園にのみ与えられ、そこで生産された作物をもとに作られたものだけ認証マークが付けられます。

そして“C.A.F.E. プラクティス”はこの認証と同じくらい厳しく、そして質がいい。そう、これも認証のひとつなんです。

▲熟したコーヒーの実=コーヒーチェリーは、赤く粒が大きいほど高品質とされている

レインフォレスト・アライアンスと同じくらい厳しい基準が設けられていて、スターバックスは99%のコーヒー豆を、この認証を得た農園から調達しているといいます。

実はこの認証、1998年にスターバックスが国際環境NGOの協力のもと、コーヒー豆の購買に関するガイドラインとして作ったものだといいます。これを満たすことにより、コーヒー農家は品質の高いコーヒーの生産が可能になり、そして高品質の豆だから高い価格で売れる。結果、収入も上がり農園を続けていけるということになります。

その支援をリードしているのが、スターバックスの自社農園、ハシエンダ アルサシアにある“ファーマーサポートセンター”です。

 

■証言4「10年後や20年後に高品質なコーヒーがあってほしい。そのために研究開発している」

世界に9カ所あるという、スターバックスのファーマーサポートセンター。各地の小規模コーヒー農家を支援しているというこのセンターですが、中米は自社農園であるハシエンダ アルサシアとメキシコ、グアテマラにあります。

そして、このセンターを率いるのが世界的なアグロノミスト(農学者)であるカルロスさんです。

▲Carlos Mario Rodoriguezさん。世界中のファーマーサポートセンターで働くアグロノミストを率いる。病気に強く収穫量の多いコーヒーの研究や開発のリーダーでもある

「スターバックスのファーマーサポートセンターは、世界中の生産者のコーヒーの木が、より高い生産高になるよう支援をしています。サステナビリティ(持続可能)という意味でも、10年後や20年後に高品質なコーヒーがあってほしい。そして生産者家族の生活の質も上がってほしいと思って活動しています」

カルロスさんによると、いま中南米では、サビ病が広がっているとのこと。これはまさに2050年問題につながります。そのために、病気に強い品種の開発を続けている場所、それがハシエンダ アルサシアなんです。

「コーヒーの品質を保つためには、品種や土壌、天候、運営、加工法などさまざまなことに注意を払わなければなりません。これはワインの生産にも似ています。そのために生産者がどう農園を運営するかは重要です。それをサポートしていきたいと考えています」

“C.A.F.E. プラクティス”というガイドラインは、スターバックスのサイトによると、「労働環境の改善」や「児童労働の規制」、そして土壌侵食や汚染防止といった「生物多様性の保全」に対する取り組みを含めた基準となっています。スターバックスは、これを満たした生産者からのみ購買するとのことです。

なんだか難しい言葉ばかりですが、簡単に言ってしまえば“C.A.F.E. プラクティス”を満たした農園のコーヒー豆は高品質だということ。そして、その農園自体もちゃんと収入を得られているということ。だからこそ、この基準を満たすコーヒー農家が増えてくれることで、コーヒーが直面している2050年問題を解決するひとつの鍵になるのです。

まさかスターバックスの自社農園を見学させてもらうだけのつもりが、日々愛飲しているコーヒーの厳しい現実と、それに抗うべく日々奮闘している人たちの話を聞けるとは思ってもいませんでした。

▲2018年に完成した、ハシエンダ アルサシアの加工場(ミル)。これができたことによって、すべての工程を自らの手で行えるようになった

いま飲もうとしているそのコーヒーが30年後には飲めなくなるとしたら、困りますよね。世界中のコーヒー産地がいま直面している問題を知っておくだけでも、コーヒー1杯の楽しみ方は変わってくるのではないでしょうか。

これからもおいしいコーヒーを飲み続けられるためにも、ちょっと世界のコーヒー生産地に思いを馳せてみませんか。

 

>> スターバックス コーヒー

>> ハシエンダ アルサシア(英語)


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(取材・文/&GP編集部 円道秀和 写真/田口陽介)

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