■ドリフト走行も楽しめるエクリプス クロス
まずドライブしたのは、2018年にデビューした「エクリプス クロス」。このコンパクトなSUVは、“電子制御カップリング”を介して前後輪へのトルク配分を行う、最新の三菱車としては比較的シンプルな4WDメカを搭載する。とはいえ、状況に応じて左右独立してブレーキを操作し、旋回性能をコントロールする“ブレーキAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)”機構を導入。4WDメカを駆動力アップや走行安定性の確保だけでなく、曲がる性能の向上にも活用しているのだ。
エクリプス クロスは、ドライバーが任意で「オート」、「グラベル」、「スノー」という3種類の中から走行モードを切り替えることができ、その選択次第で4WDの作動状況も変化する。スノーは、雪道での走りやすさを目的としたモードで、誰もが安心してドライブできるよう安定性を重視。実際、このモードで走るとクルマの挙動が穏やかなので、滑りやすい冬の道を走る時は、このモードを選ぶといいだろう。
一方、エクリプス クロスの真骨頂は、グラベルモードでの走り。このモードでは駆動力を稼ぐため、後輪側へと多くのトルクを配分する。その結果、雪上でどんなことが起きるのかといえば、ドライバーがアクセルペダルを積極的に踏み込むことで後輪が外側へ滑り出し、テールスライドを開始。相応のスキルを持つドライバーであれば、積極的にドリフト走行を楽しむことができるのだ。
しかも驚くべきことに、エクリプス クロスはドリフト中の車体姿勢をコントロールしやすい。まるで、クルマがドライバーの意思を感じ、それをサポートしてくれるかのように、思い通りに振り回せるのだ。その楽しさは、自分の手足のようにクルマを操れて、“人馬一体”の感覚を味わえる、かつての「ランサー エボリューションX」に通じるもの。“ランエボ”は惜しまれつつ役目を終えてしまったが、その開発で培われた技術とノウハウ、そしてその魂は、しっかりと最新の三菱車の中に生き続けていることを実感した。
■モーター4WDの賢さを実感できるアウトランダーPHEV
次に試乗したのは「アウトランダーPHEV」。2018年夏に大規模なマイナーチェンジを受け、エンジンの排気量アップや走行用バッテリーの容量拡大、そして、モーター出力の向上など、パワートレーンをごっそり入れ替えてきた。それと同時にドライブモードも変更。最新モデルには、「ノーマル」、「スポーツ」、「スノー」、「ロック」という4種類のモードが用意されている。
いずれのモードでも印象的だったのは、滑りやすい雪上コースでも、高度な制御によってクルマが“面倒を見てくれる”こと。ドライバーは、急ハンドルや急ブレーキ、オーバースピードなどに気をつけ、それこそハンドルを適切に切ってやりさえすれば、その方向へとクルマが進んでいく。
エクリプス クロスと同様、スノーモードはアクセルやハンドル操作に対するクルマの挙動をマイルドにし、雪道での走りやすさを追求。クルマがなんでもやってくれる、といった感覚で、最も安心して走れる(オートモードも同じ印象)。それに対し、クルマの応答性が良くなるスポーツや、後輪へ積極的に駆動トルクを配分するロックの両モードでは、ドライバーの運転操作に対してクルマが機敏に曲がり、危うさを感じない範囲で運転する楽しさを実感できる。
こうした“クルマに守られている感覚”の根底にあるのは、アウトランダーPHEVに搭載される4WDシステムの“巧みな制御”。アウトランダーPHEVは、前後輪それぞれに駆動用モーターを備えた“ツインモーター”機構を採用し、高速走行時を除けば、基本的にモーターのチカラで走行する。また、各タイヤへの駆動トルク配分は、前後の加速度や横加速度なども加味するなど、緻密に行っており、伝達効率の高さや、前後駆動トルク配分制御の自由度の高さ、トルク応答性制御の自由度の高さなどにおいて、一般的なガソリン車の4WDメカよりもアドバンテージを得られている。
そんなアウトランダーPHEVで滑りやすい道を走ると、モーター4WDによる駆動力配分の賢さを、如実に感じられる。モーター駆動車は、エンジン駆動車よりも制御の自由度が高く、走りの味つけをチューニングしやすいといわれるが、アウトランダーPHEVではそこに、長年の4WD開発で得た技術と経験、そして、モーター駆動4WDの先駆者としてのノウハウが息づいているように感じられる。
■ミニバンとは思えない走破力を実現したデリカD:5
今回の雪上試乗会では、デビュー間もない「デリカD:5」もドライブすることができた。試乗コースは、エクリプス クロスやアウトランダーPHEのそれとは異なり、モトクロス用のオフロードコースを活用したアップダウンの激しい過酷なコース。もし、デリカD:5ではない一般的なミニバンで同コースに入ったら、きっと4WD仕様であっても走り抜けることはできないはず。コースを見た瞬間、それを予感したし、実際に走ってみて、それは確信に変わった。おそらく、本格的なクロスカントリー4WD車でも確実に走り切れる保証はない、まさに難コースだ。
しかし新しいデリカD:5は、ドライバーに特別なテクニックを求めてくることもなく、その過酷なコースを涼しい顔をして走り抜けた。ミニバンでありながら、これほどまでに悪路走破性が高いとは!
デリカD:5が驚異的な悪路走破性を実現した秘密はいくつかあるが、まずは185mmという、ミニバンとしては異例の、そしてSUVにも匹敵する最低地上高が挙げられる。おかげで段差を乗り越える際や、積もった雪の上を走る際に、車体の下回りを擦りにくい。ちなみに今回の改良で、最低地上高の数値が従来モデルのそれから下がっているが、その理由は、アンダーガードの素材が樹脂から金属へと変更されたことに伴い、計測箇所が変わったため。そのため、実質的なグランドストロークはほぼ変わっていないことを、声を大にしてお伝えしておきたい。
もちろん、デリカD:5に搭載される4WDシステムの威力も大きい。電子制御カップリングを用いたシステムを採用するが、状況に応じて「2WD」、「4WDオート」、そして「4WDロック」と走行モードを選べるのは、ミニバンとしては異例。その上、4WDロックモードでは、後輪へ積極的に駆動トルクを送り、トラクションを最大限に高めることから、もはやSUVに匹敵するだけの悪路走破性を実現している。
その結果、デリカD:5は、ドライバーに対して絶大な安心感を与えてくれる。今回のような難コースを走る機会は稀だろうが、スキー場の手前にある新雪が降り積もった路面や、キャンプ場周辺のダートなど、レジャーシーンで遭遇する悪路においても難なく走破でき、気軽に目的地へとたどり着ける。そんな頼もしいミニバンは、今のところデリカD:5以外に見当たらない。
滑りやすくタフな雪道を走ってみて実感したのは、システムの種類を問わず、三菱自動車の4WDは絶対にドライバーを裏切らない、ということ。クルマの挙動も走破性も、「こうあって欲しい」というドライバーの願いにしっかり応えてくれるのだ。
<SPECIFICATIONS>
☆エクリプス クロス Gプラスパッケージ(4WD)
ボディサイズ:L4405×W1805×H1685mm
車重:1550kg
駆動方式:4WD
エンジン:1498cc 直列4気筒 DOHC ターボ
トランスミッション:CVT
最高出力:150馬力/5500回転
最大トルク:24.5kgf-m/2000~3500回転
価格:310万7160円
<SPECIFICATIONS>
☆アウトランダーPHEV G プレミアムパッケージ
ボディサイズ:L4695×W1800×H1710mm
車重:1900kg
駆動方式:4WD
エンジン:2359cc 直列4気筒 DOHC+モーター
エンジン最高出力:128馬力/4500回転
エンジン最大トルク:20.3kgf-m/4500回転
フロントモーター最高出力:82馬力
フロントモーター最大トルク:14.0kgf-m
リアモーター最高出力:95馬力
リアモーター最大トルク:19.9kgf-m
価格:479万3040円
<SPECIFICATIONS>
☆デリカD:5 P(7人乗り)
ボディサイズ:L4800×W1795×H1875mm
車重:1950kg
駆動方式:4WD
エンジン:2267cc 直列4気筒 DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:8速AT
最高出力:145馬力/3500回転
最大トルク:38.7kgf-m/2000回転
価格:421万6320円
(文/工藤貴宏 写真/三菱自動車工業)
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