■デリカにマツダ3と、今季はデビュー前の注目車にも試乗!
今シーズン、私はトータル7ブランドの雪上試乗会に参加しました。トップバッターは、長野・斑尾で開催されたVW(フォルクスワーゲン)の試乗会。
そのメインイベントは、“4モーション”と呼ばれるVW独自の4WDシステムが氷雪上でどのような走りを見せるのかをチェックすること。まずは一般道で「パサート オールトラック」を試乗した後、今回の試乗会のために用意された特設コースを「ティグアン」でドライブしました。
特設コースでは、斜面の上り下りにおいて、ティグアンに搭載される“ヒルディセントアシスト”機能をチェック。滑りやすい上り坂、下り坂も、クルマ任せの状態で安心して進んでいきます。
また、パイロンを立てたコースをジグザグとスラロームするセクションでは、4モーションが滑りやすい雪道でも高い走行安定性を示すことを体験できました。
4モーションはVWのキャラクターと同様、あまり出しゃばってこず、滑りやすい路面でもまろやかな乗り味で、日本の冬でも過不足ない性能を発揮してくれます。
続いては、アルファロメオ、フィアット、アバルト、ジープの4ブランドを日本で展開するFCAジャパンの試乗会へ。
メインテーマは、2018年に上陸したアルファロメオ「ステルヴィオ」の4WDシステム“Q4”の実力チェックと、同じく2018年に上陸したジープ「ラングラー」の雪上性能チェックです。
特設コースと、一般道でのロングドライブでチェックしたステルヴィオは、滑りやすく荒れた路面でも乗り心地が良く、体に負担がかからないのでとても快適。また、ロングドライブの途中で走行した、全く雪のない高速道路などでは、ステルヴィオならではの軽快なフットワークも味わうことができました。
一方のラングラーは、「やはりジープはモノが違うな」といった印象。特設コースに設けられた急斜面も難なく登っていきますし、フラットな圧雪路では、従来のラングラーでは味わえなかった、快適な乗り心地を体験できました。
ラングラーは普通のSUVと比べると、小回りがあまり利かず、トラックに乗っているかのような印象を受けることもありますが、先代モデルに比べると、ものすごく洗練されていることに驚きました。
■雪上における電動車の可能性を実感!
続いては、日産自動車の雪上試乗会へ。「日産インテリジェントモビリティ雪上試乗会」というタイトルからも分かる通り、主役は電気自動車の「リーフ」や、エンジンで発電しモーターで駆動する「ノートe-POWER」&「セレナe-POWER」です。
リーフやe-POWER搭載モデルは、エンジン車と違ってアクセルを踏んだ直後のレスポンスが良く、また、緻密な制御によってモーターの駆動トルクが伝達される駆動輪のホイールスピンが少ないため、滑りやすい路面でもスムーズなスタートが可能です。
さらに、リーフやe-POWER搭載モデルには、アクセルを戻すだけでモーターの回生ブレーキにより減速できる“e-ペダル”が採用されていますが、コーナーの途中でアクセルペダルを戻すだけでクルマがスッと減速し、コーナーをスムーズに曲がり込んでくれるので、滑りやすい雪上でも安心してドライブできました。
次は、三菱自動車の試乗会へ。試乗コースはすべて、クローズドの特設コースでした。
ちなみに試乗コースの監修をなさったのは、三菱自動車でパリ・ダカール・ラリーやパイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライムなどに参戦し、現在、三菱自動車の商品戦略本部 上級エキスパートとして活躍する増岡 浩さん。さすがはプロ監修のコースだけあって、アップダウンが激しく、十分な距離がとられた走り応えのあるルートでした。
イベントの目玉は、2018年に登場した「エクリプス クロス」と、同じく2018年にマイナーチェンジした「アウトランダーPHEV」、そして、2019年2月にビッグマイナーチェンジを受けた新型「デリカD:5」の性能確認でした。
エクリプス クロスとアウトランダーPHEVは、フラットでスピードの乗る圧雪されたコースでドライブ。走行モードを切り換えながら、それぞれの特性を試してみたのですが、特に「スノー」モードでは驚くほどイージーに、滑りやすい路面をクリアしていくのが印象的でした。
また、エクリプス クロスの「グラベル」モード、アウトランダーPHEVの「スポーツ」モードでは、しっかり減速してからハンドルを切ると、フロントがコーナーの出口へ向かってスムーズに向きを変えてくれます。こうした挙動はドライバーにとって安心感がありますし、クルマもしっかり向きを変えてくれるので、ドライブが楽しく感じられました。
一方、デリカD:5は、雪深いクロスカントリーコースで従来モデルと比較しながらのチェック。新型はディーゼルエンジンが格段に静かになり、1速をローギヤード化した8ATの効果もあって、急斜面でもディーゼルエンジン特有の厚いトルクを活かし、力強く登っていきます。
また、アップダウンの激しいコースであるにも関わらず、走行中の車内は快適そのもの。ビッグマイナーチェンジとはいえ、フルモデルチェンジ級の進化を遂げていることに驚きました。
■スバルはリアルワールドでの性能をアピール!
雪深い2月中旬に開催されたのは、スバルの試乗会。山形の庄内地方から山形駅まで、すべて一般道がルートという、全長約200kmのロングドライブを楽しみました。
試乗ルートの中継地点に設定された肘折温泉は、青森の酸ヶ湯に次いで、日本で第2位の積雪量を記録する豪雪地帯。冬の一般道は特設コースとは異なり、刻々と状況が変わるため、ドライバーは注意深くドライブする必要があるのですが、“SGP(スバル・グローバル・プラットフォーム)”と“シンメトリカルAWD”を搭載した「フォレスター」は、あらゆるシーンで優れた走破性を披露してくれました。
スバルが雪上ドライブを考慮して開発しているという、優れた視界や効きのいい空調も相まって、約200kmのロングドライブでも、安心して楽しい時間を満喫できたのが印象的でした。
そして最後は、マツダの雪上試乗会へ。北海道の旭川からクルマで約1時間の、剣淵町にあるマツダのテストコースが舞台です。
試乗車は、海外市場でマツダ「3(スリー)」と呼ばれてきた「アクセラ」の次期モデル。間もなく日本でも、この新型がデビューするといわれています。
試乗会では、新型マツダ3に搭載される新世代の車両構造技術“スカイアクティブ・ビークルアーキテクチャ―”や、車両の運動性能技術“GVC(Gベクタリングコントロール)プラス”、そして、新世代の4WDシステム“i-ACTIV(アイ・アクティブ)AWD”の相乗効果で実現する、クルマの一体感を体験するプログラムにチャレンジしました。
中でも興味深かったのは、マツダのシート作りに対するこだわり。新型マツダ3のシートは、“骨盤を立てて座る”ことを意識した構造になっているのですが、ヨガなどの経験があるからか、個人的にその思想には共感を覚えました。
今シーズンの雪上試乗会は、最近登場したモデルだけでなく、デリカD:5や新型マツダ3といった市販前のクルマも試乗でき、それぞれの限界域での特性に触れることができました。来季もまた、素敵な体験ができるのを楽しみにしています!
(文/吉田由美 写真/&GP編集部、フォルクスワーゲン グループ ジャパン、FCAジャパン、日産自動車、三菱自動車工業、SUBARU、マツダ)
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