豊かなパワー&トルクは、6速のデュアルクラッチ式トランスミッション“Sトロニック”を介して、4輪へと伝えられます。FF(前輪駆動)をベースに、必要に応じて電子制御される多板クラッチを圧着して後輪にトルクを伝達するお馴染みの“クワトロ”システムにより、雨の日のドライブは、心強い限りです。
車体構造は、従来の“ASF”こと“アウディスペースフレーム”が捨てられ、フォルクスワーゲングループで共用されるスチール製の“MQBプラットフォーム”に、アルミのモノコックボディを合わせる構造になりました。クーペと比較して剛性面で不利になりがちなオープンモデルですが、ことTTロードスターの場合、通常のドライブに限っては、ドライバーが“ボディ剛性が足りない”なんて言葉を発することはないでしょう。実にしっかりしています。
試乗車は、標準の18インチタイヤを装着。オプションの19インチを装着した「TTクーペ 2.0 TFSI」は、路面によって「足元がバタつく」という印象を受けましたが、今回のTTロードスターのアシはしなやか。乗り心地はスムーズです。
助手席に人を乗せる機会が多い、またはそれを目標(!?)にしている方は、インチアップする必要はないでしょう。ちなみに、TTロードスターの乗車定員は2名(クーペは4名)。邪魔者が入らなくて(!?)いいですね。
TTクーペと遜色ない走りを見せるTTロードスターですが、全く同じかというと、そんなことはありません。ロードスターの屋根は、優雅なソフトトップ。いかにもドイツ車らしいつくりのいい幌ですが、メタルトップと比較すると、クローズド時でも、やはり車内への音の侵入は大きめ。
でも、別に悪いことではありません。屋根を開けなくとも外界との接点が広い。運転している感が強い。そこがまた、オープンモデルの魅力なのです。
新型TTは、これまで以上にエッジが利いたデザインとなり、ヘッドランプはLED化されました。ロードスターのボディサイズは、全長×全幅×全高=4180(−10)×1830(−10)×1360(−5)mm(カッコ内は先代比)ですから、わずかながら小さくなりました。
ホイールベースはクーペと同じ2505mm。こちらは旧型より40mm延びています。結果的には、3世代目TTは、前後のオーバーハングを切り詰めた、より締まったスタイルになったといえます。
さて、TTロードスターのステアリングホイールを握って走り始めれば、シンプルで質感の高い内装に、少々スノッブな気分なります。TTクーペと同じく、メーターナセル内がナビ画面となる“アウディバーチャルコックピット”には、改めて感心させられます。
頭上のソフトトップは、50km/h以下なら走行中でも開閉可能。10秒に満たない時間で、カタログのフレーズをお借りするなら「The sky is the limit」になります。
TTロードスターには、オプションで“ウィンドブロッカー”が用意されます。ヘッドレスト後方に風を遮るために装着するネットで、電動で高さを調整可能。試乗車には付いていませんでしたが、コレを付けて左右のサイドウインドウを上げれば、かなりの速度まで風を防ぐことができるはずです。
でも、せっかくのオープンモデルですから、窓を下ろして、髪を風になぶらせながらゆったりと走りたいものです。幸いにも同乗者がいる時は、うんちくを語るのは後回しにし、ふたりで楽しい時間をお過ごしください。
<SPECIFICATIONS>
☆2.0 TFSI クワトロ
ボディサイズ:L4180×W1830×H1360mm
車重:1470kg
駆動方式:4WD
エンジン:1984cc 直列4気筒DOHC ターボ
トランスミッション:6速AT(デュアルクラッチ式)
エンジン最高出力:230馬力/4500〜6200回転
エンジン最大トルク:37.7kg-m/1600〜4300回転
価格:605万円
(文/ダン・アオキ、写真/&GP編集部)
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