■伝統と国際進出
ザクロはアルメニアのシンボルのひとつ。ザクロを使ったワインもポピュラーで、ザクロワインを生産しているワイナリーは、今回の訪問先にもいくつかありました。
結婚式の際に父親からもらったザクロを1日一粒食べると子宝に恵まれる、という縁起物だそうです。
実は、アルメニアはブランデー市場の方がワインよりも大きいそうです。というのも、旧ソ連体制の下、ジョージアはワインを、アルメニアはブランデーを造ることを指示されたからです。
ブランデー製造に最適な、アルコールが低く酸が高いブドウ(カングン)がアルメニア北部の標高の高い森林地帯で栽培されていたことも、ブランデー生産に向いていた理由のひとつです。バニラやドライフルーツのフレーバーが強く出るアルメニア産の樽も、ブランデーの熟成に向いていました。
ブランデー市場は世界的にはダウンしていますが、アルメニアでは年配層を中心に根強い人気があります。
アルメニアの一人当たりの年間ワイン消費量は3.6リットルで、日本とほぼ同程度。年配者にはブランデーやウオツカが人気ですが、若者はワインを好む傾向にあり、人と会う時といったシチュエーションなどで、アルメニアでもだんだんとワインは飲まれるようになってきたようです。
エレバンの街中を歩いていたら、賑わっているワインバーを発見しました。地元の人だけでなく、観光客もいたようです。
アルメニアのワイン生産、消費推進においては、農水省のプロジェクトがあります。アルメニア産のワインが国際市場に進出するようになり、2018年の段階では、輸出は55%だそうです。
2016年にVine and Wine Foundation of Armenia(VWFA)が設立され、アルメニアの新ワインプロジェクトは、ようやく始まりました。
「ツーリストも増えてきた。ワイン文化はまだ大都市のみなので、地方にも増やしたい」と、VWFAのスタッフの談。
日本にもすでにいくつかの生産者のワインは輸入されていますが、今後はもっと多くのアルメニアワインが日本でも買えるようになるかもしれません。
アルメニア滞在中は、アルメニアの伝統食もいろいろと食べてきました。その話は、またいずれ。
(取材協力: Vine and Wine Foundation of Armenia)
Special thanks to Mr. Shinta Nishino
[関連記事]
イタリアの世界遺産 ドロミテ渓谷で天空のワインイベント
日本のワイン用ブドウの銘醸地・長野県塩尻市で新たなブドウ畑が誕生
(取材・文/綿引まゆみ)
ワイン専門誌や料理系雑誌での記事執筆をはじめ、日本ソムリエ協会webサイトのコラムなどを執筆。ワインセミナー、トークショー、海外のワインコンクール審査員など、幅広い活動を行なっている。チーズプロフェッショナル、ビアソムリエ、コーヒー&ティーアドバイザーの資格も所有。スイーツ好き。