クルマはMT車に限るって人に!マツダ「CX-5」のディーゼル×MTは操る楽しさ満点です

■基本的な装備とメカニズムはAT車と共通

ヨーロッパではMT車が主流、というのは過去の話。EU(欧州連合)加盟国においては、ここ10年ほどの間にAT(オートマチック)車が急速に増えており、新車販売台数で見ると、大型サルーンはほぼ100%がAT車に。ミディアムクラスのサルーンも、2014年、15年辺りを境に、MT車とAT車の比率が逆転しています。

とはいえ、販売量の多いコンパクトカーは依然として大半がMT車ですから、全体を見ればAT車のシェアは30%少々、というところなのですが、それでも、AT車の比率は急速に伸びている、というのが現状のようです(ICCT:International Council on Clean Transportations/2017年のデータ)。

では、CX-5のようなクロスオーバーSUVはどうか? というと、AT車の比率は40%少々、といったところ。もちろんこれは、日本の自動車メーカーにとっても無視できない数値といえるでしょう。

2017年に登場した2代目CX-5の日本仕様にMT車が設定されたのは、2018年10月の商品改良時のこと。とはいえ当然のごとく、ヨーロッパ向けのCX-5には、デビュー当初からMT車が設定されていました。つまり、1年半ほど遅れて日本にも導入、というカタチなのですが、AT車が圧倒的な日本市場に向けて、よくぞ導入を決断したものだと思います。

さて、CX-5に追加設定された2.2リッターディーゼルターボ“スカイアクティブ-D 2.2”の6速MTモデルですが、一部のグレードだけでなく、FF車と4WD車の両仕様、さらに、ベースグレードである「XD」、中間グレードである「XDプロアクティブ」、上位グレードである「XD Lパッケージ」や「XDエクスクルーシブモード」の全グレードで選択可能となっています。

装備面におけるAT車との違いは、AT車誤発進抑制機能が備わらないことと、SBS(スマート・ブレーキ・サポート)&MRCC(マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール)に全車速追従機能が備わらないこと。それらを除けば、基本的に共通です。搭載されるエンジンは、排気量2188ccの直列4気筒直噴ディーゼルターボで、190馬力の最高出力、45.9kgf-mの最大トルクもAT車と変わりません。もちろん、商品改良によって進化をとげた独自機構“GVC(G-ベクタリングコントロール)プラス”も搭載されています。

■上質なフィーリングで操る楽しさを味わえる

今回、テストドライブへと連れ出したのは、中間グレードであるXDプロアクティブのFF車で、価格は311万5800円。いきなり価格の話というのも下世話に感じられるかもしれませんが、きっと「MT車はAT車より安いの? 高いの?」と気になられる方も多いはず。

筆者としても、「ATより機構的な難しさはないのだから安めに…」、「いやいや、日本向けはきっと少量だから、その分のコストが加算されて高いのでは…」と裏読みしてしまいましたが、実は価格は、MT車もAT車も同じ。これは、XDプロアクティブだけの話ではなく、全グレード、両駆動方式とも同じ価格設定となっています。つまり、MT車とAT車でお悩みの方はお好きな方をどうぞ、ということ。安かったから、高かったから、といういい訳はできませんから、悩んでいる方にとっては真剣勝負かもしれませんね。

さて、走り出してみるとどうでしょう。45.9kgf-mという最大トルクを2000回転で発生するスカイアクティブ-D 2.2のアイドリング回転数は、800回転ほど。1速にギヤを入れて軽く右足に力を込めつつ、クラッチを離せば、スッと滑らかにスタートします。また、強大なトルクを発生するとはいえ、そこはMT車。ラフにクラッチを離せばエンストもしますが、決してアクセルやクラッチのコントロールがシビアということではないのでご安心を。

また、クラッチの断続感とでもいうのでしょうか、「今、半クラだな…」という感触はもちろん、クラッチのストロークも短からず長からず、踏力も軽からず重からずと、すべてにおいて適切で好印象。中には、こういったフィーリングがおざなりで、ただのスイッチ的なクルマもありますが、操作性や感触についてはさすがマツダ、スキがありません。

加えて、シフトレバーの感触が良好なのも、MT車好きにはうれしいところ。ミドルクラスのSUVにふさわしい、程良い重厚感と剛性感、ストロークが与えられています。

軽量コンパクトなスポーツカーであれば、短いストロークでカチッと決まる方が心地良く感じますが、やはりクルマのキャラクターに合致したフィーリングが重要です。その点、CX-5のシフトレバーは、しっとり重厚な感触で車格にも合っていて、心地良いギヤチェンジを楽しめます。

■力強く走り、経済性も上々

力強いディーゼルターボとMTとの組み合わせということで、街中では2速から4速、1500回転から3000回転ほどですべてが事足りてしまいます。動き出してしまえば、低速トルクは十分ですから、3速から4速でも十分な加速を味わえます。つまり、積極的にシフトチェンジを楽しんでもいいですし、ちょっとサボった運転だって許容してくれます。

とはいえ、スカイアクティブ-D 2.2のアイドリングから1500回転辺りまでのトルクは、右足の動きに正確に追従するタイプなので、例えば、3速1000回転辺りから強烈な加速を期待すると、やや肩透かし…という印象かもしれません。ただし、これは決して線が細いとか遅いというワケではなく、MT車は適切なギヤで美味しい回転域を生かして楽しんでこそ、ということ。その分、1500回転より上ではパンチある加速を楽しめますし、AT車をしのぐリニアな感触も味わえます。

続いては高速道路へ。こちらも文句をつけるような点は見当たりません。100km/h時の回転数は、6速で1700回転ほど。5速、6速はクルージングギヤという設定ですが、ちょっとした追い越し加速なら、そのままアクセルペダルを踏み込めば十分なスピードを得られますし、5速にシフトダウンすれば、ちょっとしたスポーティモデルをもしのぐ加速感を体験できます。こうした加速/減速のリニアな感触は、やはりMT車ならではの楽しさ、醍醐味であるのは間違いありません。

こうしたスカイアクティブ-D 2.2+6速MT車において、何よりありがたいのはその燃費。市街地と高速道路をほぼ半分ずつ、燃費を意識せず500kmほど走ったトータルの燃費データは、17km/L少々といったところ。WLTCの市街地モードでは、AT車が13.9km/L、MT車は16.9km/L、高速道路モードでは、AT車が19.6km/L、MT車は20.9km/Lですから、ほぼ額面どおりといったところ。このクラスのSUVとしては、かなり良好な部類だと思います。

近年、AT車やデュアルクラッチ式トランスミッション車の進化は侮りがたく、状況によっては、MT車より燃費で勝るケースも見られます。しかし、CX-5のスカイアクティブ-D 2.2+6速MT車は、十分な経済性と操る楽しさを見事に両立。CX-5を検討中で、MTの操作に抵抗がない人にとっては、なんとも悩ましい存在となりそうです。

<SPECIFICATIONS>
☆XDプロアクティブ(FF/MT)
ボディサイズ:L4545×W1840×H1690mm
車両重量:1600kg
駆動方式:FF
エンジン:2188cc 直列4気筒DOHC ディーゼル ターボ
トランスミッション:6速MT
最高出力:190馬力/4500回転
最大トルク:45.9kgf-m/2000回転
価格:311万5800円

(文&写真/村田尚之)


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